アザミウマがバジルにつく害虫の正体!白い斑点や奇形を防ぐ駆除術

せっかく育てたバジルの葉に、身に覚えのない白いかすり状の斑点を見つけて、不安な気持ちでこの記事にたどり着いたのではないでしょうか。バジルはその豊かな香りが魅力ですが、実はアザミウマがバジルにつく害虫として非常に発生しやすく、放置するとあっという間に株全体がボロボロになってしまいます。

特に無農薬での栽培を目指している場合、スリップスとも呼ばれるこの微小な害虫の駆除や対策は一筋縄ではいきません。葉が黒くなる症状や、新芽の奇形に悩まされている方も多いはずです。この記事では、私が長年の経験から得た知見をもとに、アザミウマの生態から物理的な防除、そして効果的な薬剤の使い方までを徹底的に解説します。

読み終える頃には、あなたの大切なバジルをアザミウマから守り抜き、再び青々と茂らせるための具体的なプランが明確になっているはずです。正しい知識を武器に、厄介な害虫問題を一緒に解決していきましょう。

この記事を読むことで理解できる内容は以下のとおりです。

  • アザミウマがバジルに深刻なダメージを与える理由と生態の基礎知識
  • 薬剤抵抗性を考慮した効果的な殺虫剤の選び方とローテーション散布のコツ
  • 赤色ネットや片栗粉スプレーなど無農薬でも実践できる具体的な防除手法
  • 室内栽培や水耕栽培における発生リスクの遮断と再発防止の環境作り
目次

アザミウマがバジルにつく害虫の生態と被害の全貌

バジル栽培において、アザミウマは避けては通れない天敵と言っても過言ではありません。まずは、彼らがどのようにしてバジルを蝕み、なぜこれほどまでに被害が拡大しやすいのか、その正体を詳しく紐解いていきましょう。彼らの生態を知ることは、効果的な防除への第一歩です。

バジルを好むアザミウマの生態と驚異的な繁殖力

アザミウマ(別名:スリップス)は、アザミウマ目(総翅目)に属する極めて微小な昆虫です。成虫の体長はわずか1.0mmから2.0mm程度しかなく、肉眼では「動く細い点」のようにしか見えません。バジルを好んで加害するのは、主にミナミキイロアザミウマネギアザミウマ、そしてミカンキイロアザミウマの3種が代表的です。これらの害虫は、バジルの柔らかい葉や成長点に寄生し、鋭い口針を細胞に突き刺して内容物を吸汁します。

特筆すべきは、彼らの「驚異的な繁殖能力」と「世代交代の速さ」です。アザミウマは高温で乾燥した環境を非常に好み、夏場の平均気温が25℃から30℃程度の条件下では、卵から成虫になるまでの期間がわずか10日から14日ほどに短縮されます。

つまり、理論上は1ヶ月の間に2世代から3世代が誕生することになります。さらに、多くの種が「単為生殖」という能力を持っており、交尾を行わなくてもメスが単独で次々と卵を産むことが可能です。一度侵入を許してしまうと、わずか数匹の個体から数千匹のコロニーが形成されるまで、そう時間はかかりません。

また、成虫は非常に移動性が高く、風に乗って数キロメートル先から飛来することもあります。バジルの組織内(主に葉の表皮下)に産卵管を差し込んで卵を産み付けるため、外敵や薬剤から卵が守られている点も防除を難しくしています。この生態的特徴が、多くの栽培者が「駆除してもすぐに増える」と感じる原因となっているのです。

豆知識:なぜ「スリップス」と呼ばれるの? 英語名の「Thrips」は、ギリシャ語で木を食べる虫を意味する言葉に由来します。日本では古くからアザミの花に多く見られたため「アザミウマ」と呼ばれますが、農業現場では共通してスリップスという呼称が使われます。

(出典:農林水産省『薬剤抵抗性対策に関する情報』

葉の白い斑点や奇形など被害症状を識別する方法

アザミウマによる被害は、初期段階では他の病害や生理障害と混同されやすく、発見が遅れがちです。しかし、バジルの葉を注意深く観察すると、アザミウマ特有のサインがはっきりと現れています。最も代表的な症状は、葉の表面に見られる「銀白色のかすり状斑点」です。

これは、アザミウマが葉の細胞を破壊して吸汁した結果、細胞内に空気が入り込むことで光を乱反射し、銀色や白っぽく見える現象です。被害が進行すると、これらの斑点が繋がり、葉全体が白っぽく変色して光合成能力が著しく低下します。

さらに深刻なのが、成長点(新芽)への加害です。バジルの柔らかい未展開葉が吸汁されると、葉が正常に肥大できなくなり、展開した時に「歪み」「縮れ」「内側への巻き込み」といった奇形が生じます。バジルは葉を収穫して料理に使うハーブであるため、このような奇形や変色は致命的な商品価値の喪失に直結します。また、アザミウマは排泄物として黒い点状の「糞」を葉の裏などに付着させます。これが原因で「すす病」が発生し、葉が真っ黒く汚れてしまう二次被害も珍しくありません。

ハダニ被害との見分け方

アザミウマの被害はハダニと似ていますが、ハダニの吸汁痕はより細かい点状であり、葉の裏にクモの巣のような糸を張るのが特徴です。一方、アザミウマは糸を張らず、糞の粒が比較的大きくはっきりしているため、ルーペ(拡大鏡)を使って観察すれば確実に識別することが可能です。もしバジルの葉が不自然に波打っていたり、黒い点々が付着していたりする場合は、ほぼ間違いなくアザミウマの仕業と判断してよいでしょう。

注意!ウイルス病の媒介リスク アザミウマは単なる食害だけでなく、恐ろしい「トマト黄化えそウイルス(TSWV)」などを媒介することがあります。これに感染すると、バジルの株全体に褐色輪紋が現れ、立ち枯れてしまいます。ウイルス病には特効薬がないため、媒介者であるアザミウマを早期に排除することが唯一の防御策となります。

土中で蛹になるサイクルと駆除が難しい理由

「殺虫剤を撒いた直後は消えるのに、数日経つとまた発生する」という悩みをよく耳にします。これこそが、アザミウマの駆除を「最難関」と言わしめる理由です。アザミウマは、不完全変態でありながら、蛹(さなぎ)のようなステージを持つ特殊なライフサイクルを持っています。多くの種において、孵化した幼虫は葉の上で吸汁して育ちますが、成虫になる直前の「前蛹」および「蛹」の段階になると、自ら地面に落下して土壌の中や落ち葉の隙間に潜り込んでしまうのです。

この土中に潜る性質が、防除上の大きな障壁となります。一般的な葉面散布の殺虫剤は、葉の上にいる成虫や幼虫には効果を発揮しますが、土の中に隠れている蛹には全く届きません。その結果、薬剤散布から数日後、土中で無事に羽化した新しい成虫が再びバジルの株に登ってくるという、「再発のループ」が完成してしまいます。このため、一度の散布で全滅させることは物理的にほぼ不可能であり、土の中にいる個体が羽化して出てくるタイミングを狙って、複数回の対策を重ねる必要があります。

アザミウマのライフステージと防除の難易度

ステージ生息場所防除の難易度
葉の組織内(皮下)極めて高い(薬剤が届かない)
幼虫葉の表面・裏面普通(直接散布で駆除可能)
前蛹・蛹土壌中・地際高い(土壌対策が必要)
成虫株全体(移動する)普通(飛来防止が必要)

このように、アザミウマは複数のステージが異なる場所に存在するため、葉を洗う、あるいは薬を一度撒くだけでは不十分なのです。持続的な防除を成功させるためには、地上の個体だけでなく、土壌環境を含めたトータルなアプローチが求められます。

アザミウマがバジルにつく害虫への効果的な対策方法

生態を理解したところで、次は具体的な「守り」と「攻め」の戦略に移ります。物理的な遮断から、いざという時の薬剤、さらには家庭にあるものでできるオーガニックな手法まで、統合的な防除プランを立てていきましょう。一つの方法に頼るのではなく、複数の網を張ることで、アザミウマの密度を確実に下げていくことができます。

無農薬でバジルを守る最新の赤色ネット活用術

「農薬は使いたくない、でも虫も防ぎたい」という無農薬栽培派にとって、最も基本的かつ強力な武器となるのが物理的な遮断です。しかし、従来のアザミウマ対策では、0.4mm目以下の極細目ネットを使用しなければならず、これでは夏場のバジル栽培において致命的な「蒸れ」や「高温障害」を引き起こす原因となっていました。そこで近年、農業現場で劇的な効果を上げているのが「赤色防虫ネット」の導入です。

この赤色ネットの仕組みは、物理的に通さないという従来の考え方とは一線を画します。アザミウマは特定の光の波長、特に赤色の光(約660nm付近)を認識する能力が低く、赤い色の物体を「光を反射しない暗闇」や「黒い壁」として認識します。

そのため、ネットの網目がアザミウマの体長より大きい0.8mmや1.0mmであっても、視覚的にそこを通り抜けようという意欲を失わせることができるのです。この視覚撹乱効果により、従来の白ネット以上の防除効果を発揮しつつ、バジルが好む通気性を確保するという理想的な環境を実現しました。

赤色ネット導入のメリットと注意点

赤色ネットを使用することで、ハウス内やプランター周囲の温度上昇を抑えられるため、バジルの葉が硬くなるのを防ぎ、風味を損なうことなく栽培を継続できます。設置の際は、隙間から侵入されないよう裾を土にしっかり埋めることが鉄則です。

また、ネットの赤色は経年劣化で褪せてくるため、数年ごとに新調するのが効果を維持するコツです。プロの農家も取り入れているこの科学的な手法は、一般家庭のベランダ菜園でも非常に再現性が高く、最も推奨される防除法の一つです。

赤色ネットが優れている理由

  • アザミウマの視覚を騙して侵入を大幅にカットできる
  • 網目を細かくしすぎなくて済むため、通気性が抜群に良い
  • 無農薬・減農薬栽培との相性が極めて高い

シルバーマルチや粘着トラップによる物理的防除

アザミウマの「光に対する習性」を逆手に取った対策は、ネットだけではありません。地面に設置するシルバーマルチや、市販のアルミホイルを用いた反射資材も非常に効果的です。アザミウマは空の明るさと地面の暗さを基準にして上下を認識し、飛行のバランスをとっています。

地面に銀色の反射資材を敷くことで、下方向からも強い光が当たるようになると、彼らは上下の感覚を失い、目標であるバジルの株にうまく着地できなくなります。特に飛来が活発な5月から9月にかけて、定植初期にシルバーマルチを敷いておくことは、初期発生を抑える上で決定的な差となります。

また、侵入してしまった個体や、近くまで飛んできた個体を効率よく間引くために必須なのが「青色粘着トラップ」です。アザミウマの種類にもよりますが、多くの種が青色の波長に強く誘引される性質を持っています。黄色のトラップはアブラムシやコナジラミ全般に効きますが、アザミウマをピンポイントで狙い撃ちし、捕殺するなら青色が最適です。このトラップをバジルの株のすぐ近くや、プランターの縁と同じくらいの高さに吊るしておくことで、日中に活動する成虫を次々とキャッチしてくれます。

モニタリングとしての活用

粘着トラップの本当の価値は「捕殺」だけではありません。毎日トラップを確認することで、「今日から急に増え始めたな」「今はまだ少ないな」という発生状況のモニタリングが可能になります。急増を確認したタイミングで後述する薬剤散布や水洗いを行うなど、防除のタイミングを計る「センサー」として活用することが、被害を最小限に食い止める鍵となります。なお、トラップには土埃が付くと粘着力が落ちるため、汚れたら惜しみなく交換するようにしましょう。

おすすめの薬と薬剤抵抗性を防ぐ散布のルール

物理的な対策を講じても、周辺環境の影響などで被害が抑えきれない場合があります。そのような緊急時には、科学の力を借りた薬剤散布が必要になります。バジル(ハーブ)として登録があり、アザミウマに高い効果を発揮する薬剤の代表格は、「ファインセーブフロアブル(フロメトキン)」です。

この薬剤は、既存のネオニコチノイド系や有機リン系薬剤に対して抵抗性を持ってしまった厄介なアザミウマに対しても、優れた効果を示す新系統の薬剤です。有用な天敵であるカブリダニなどへの影響が少ないため、環境に配慮した栽培にも適しています。

薬剤を使用する上で絶対に避けて通れないのが「薬剤抵抗性」の問題です。前述の通り、アザミウマは世代交代が非常に速いため、同じ成分の薬を短期間に何度も散布すると、その薬に耐性を持つ個体だけが生き残り、最終的には「どの薬も効かないスーパーアザミウマ」を生み出すことになります。

これを防ぐ唯一の方法が「ローテーション散布」です。散布する際は、必ず農薬ラベルに記載された「IRACコード」を確認し、異なる数字のグループに属する薬剤を順番に使用してください。例えば、コード「34(ファインセーブ)」の次は「6(アファーム)」、その次は「5(スピノエース)」といった具合に、作用機序の異なる成分を組み合わせることで、抵抗性の発達を劇的に遅らせることが可能になります。

有効成分IRACコード主なメリット・使い方
フロメトキン(ファインセーブ)34新系統。抵抗性個体に極めて強い。
エマメクチン(アファーム)6放線菌由来。チョウ目害虫も同時防除。
スピネトラム(ディアナ)5速効性が高く、効果持続性も優秀。
アセフェート(オルトラン粒剤)1B土壌散布で根から吸収。予防的に使用。

※農薬の使用に関しては、必ず最新の登録情報を確認し、適用作物や収穫前日数、希釈倍率を厳守してください。最終的な判断は、各地域の防除指導指針や専門家のアドバイスに従ってください。

家庭で手軽に試せる片栗粉スプレーの効果と作り方

バジルは料理に直接使うフレッシュハーブですから、「できれば収穫直前まで農薬は使いたくない」と考えるのは当然のことです。そんな無農薬派の強い味方となるのが、台所にある「片栗粉」を使った自作スプレーです。この方法は、化学的な毒性で虫を殺すのではなく、デンプンの粘り気を利用してアザミウマの気門(呼吸をする穴)を物理的に塞ぎ、窒息死させる「物理防除」の一種です。市販されているデンプン由来の殺虫剤(粘着くん液剤など)と同じ原理を、家庭にある資材で再現する知恵と言えます。

片栗粉スプレーの作り方は非常にシンプルですが、正しく作らないと効果が半減します。まず、水1Lに対して片栗粉を大さじ1杯程度(約15g)用意します。これを鍋に入れ、かき混ぜながら火にかけます。ポイントは、液体が透明になり、とろみがつくまでしっかり加熱して「糊化(α化)」させることです。

加熱が不十分だと、冷めた時にデンプンが沈殿してしまい、スプレーのノズルが詰まる原因になります。糊状になったら火を止め、十分に冷ましてから霧吹きなどのスプレー容器に移します。この際、少量の食用油や食器用洗剤を1〜2滴混ぜると、展着性が高まり、アザミウマの体に液が密着しやすくなります。

散布のコツと注意点ですが、アザミウマは非常に小さく、葉の裏や成長点の隙間に潜んでいるため、そこを狙って「直接液を浴びせる」必要があります。葉の表だけでなく、裏面や茎の分岐点など、徹底的に散布してください。液が乾燥して膜が固まる際に殺虫効果を発揮するため、湿度の低い晴れた日の午前中に作業するのがベストです。

ただし、そのまま放置するとバジルの気孔まで塞いでしまい、株の呼吸を妨げたり、カビ(すす病など)の原因になったりすることがあります。そのため、散布して数時間から半日ほど経ち、液がしっかり乾いたことを確認したら、水で丁寧に洗い流してあげてください。このひと手間が、バジルの健康を維持しながら害虫だけを駆除するプロのテクニックです。

片栗粉スプレー成功の秘訣

  • しっかりと加熱して透明な「糊」の状態にすること
  • アザミウマに直接かかるよう、葉の裏や隙間に噴霧すること
  • 効果が出た後は、バジルの健康のために水で洗い流すこと

(出典:農林水産省『粘着くん液剤 登録情報』

重曹水やニームオイルを活用したオーガニック対策

片栗粉スプレーが「今いる虫を殺す」ための手段であるのに対し、日々のメンテナンスとして取り入れたいのが「重曹水」「ニームオイル」による忌避・予防対策です。これらはバジルの風味を守りつつ、アザミウマが寄り付きにくい環境を作るために非常に有効です。

まず重曹水ですが、水1Lに対して重曹1g程度を溶かした「0.1%溶液」を作ります。重曹には殺菌効果があるため、アザミウマの吸汁痕から発生しやすい二次被害の病気を抑える効果も期待できます。ただし、濃度が濃すぎるとバジルの葉を傷める「薬害」が出るため、必ず低濃度から試し、様子を見て調整してください。

次に、オーガニック栽培の決定版ともいえるのがニームオイルです。インド原産のニームの木から抽出されるこのオイルには「アザジラクチン」という成分が含まれています。この成分は、昆虫の摂食(食べる力)を阻害したり、脱皮や産卵を妨げたりする強力な生理活性を持っています。

面白いことに、人間やペットなどの哺乳類には無害でありながら、アザミウマを含む多くの害虫に対しては「この植物は食べられない」と学習させる忌避効果を発揮します。市販のニームオイルを規定倍率に薄め、週に1回程度、定期的に散布することで、アザミウマの密度を劇的に下げることが可能です。

これらのオーガニック資材を使う際の最大のポイントは、「虫が出る前から使い始めること」です。アザミウマが大量発生してからでは、天然成分のみで完全に制圧するのは難しくなります。「バジルの香りが強くなってきたな」と感じる生育初期から、お守り代わりに散布を習慣化させるのがコツです。

また、木酢液(もくさくえき)を数滴混ぜると、その独特の燻製のような香りがさらに忌避効果を補強してくれます。自然の力を借りた防除は、バジルの免疫力を高めることにも繋がり、結果として病害虫に強い「たくましい株」を育てることになります。

補足: ニームオイルは低温で固まりやすい性質があります。冬場や早朝に使う場合は、ぬるま湯でボトルを温めてから使うと、ダマにならずに綺麗に希釈できますよ。

室内や水耕栽培で発生を最小限に抑える管理のコツ

キッチンやベランダ、あるいは本格的な水耕栽培装置でバジルを育てる場合、屋外とは異なるアザミウマ対策が必要です。室内だからといって安心はできません。彼らは網戸の目(約1mm)をすり抜け、あるいは人の衣服に付着して容易に侵入してきます。室内環境は天敵がいない閉鎖空間であるため、一度入り込むと爆発的に増えやすいというリスクを孕んでいます。しかし、室内栽培や水耕栽培ならではの「弱点を突く」防除法も存在します。

まず、水耕栽培最大のメリットは「土を使わないこと」です。アザミウマの多くの種は、幼虫から成虫になる過程で一度土の中に潜って蛹になります。ハイドロボールやスポンジ、あるいは完全な養液栽培であれば、彼らが蛹になるための「土」という場所を物理的に奪うことができます。

これにより、世代交代のサイクルを途中で遮断し、被害の連鎖を断ち切ることが可能です。もし発生を確認した場合は、究極の物理除去である「水没処理(水攻め)」が有効です。バジルの株をまるごとバケツに溜めた水に5〜10分ほど沈めることで、隙間に潜んでいる成虫や幼虫を窒息させ、浮き上がらせることができます。これは土を使わない室内栽培だからこそ、汚れを気にせず行える強力な手法です。

また、室内の光環境を工夫するのも賢い戦略です。植物育成用の「赤色LEDライト」を導入している場合、これは前述の赤色ネットと同じ原理でアザミウマの視覚を撹乱する効果があります。日中に赤色の光を浴びせることで、アザミウマは目標を捉えにくくなり、寄生密度が下がることが期待できます。

ただし、夜間にライトをつけっぱなしにすると、逆に外から他の害虫(ガの仲間など)を呼び寄せる原因になるため、点灯時間は日中の数時間に限定しましょう。さらに、室内は空気が停滞しがちですので、小型のサーキュレーター等で常に微風を送るようにしてください。アザミウマは風に弱く、気流がある場所では着地や吸汁がしにくくなるため、これだけで発生率を大幅に下げることができます。

室内栽培での盲点 「新しい苗をいきなり室内に持ち込まない」ことが鉄則です。ホームセンターなどで購入した苗には、目に見えない卵や幼虫が既に付いていることがよくあります。まずは数日間、別の場所で隔離して様子を見たり、葉の裏を徹底的に洗浄してからメインの栽培スペースに迎えるようにしましょう。

剪定や除草などの耕種的防除で再発を予防する

「耕種的防除(こうしゅてきぼうじょ)」という言葉は少し難しく聞こえるかもしれませんが、要するに「栽培環境を整えて、虫が住みにくい状況を作ること」です。どんなに優れた薬剤やネットを使っても、バジル自体の健康状態が悪かったり、周囲が不潔だったりすれば、アザミウマは何度でも戻ってきます。

まず取り組むべきは、バジルの「適時な剪定(摘心)」です。バジルは放置すると葉が密集し、株の内部が蒸れてしまいます。これはアザミウマにとって、天敵の目が届かず、乾燥も防げる「最高の隠れ家」を提供しているようなものです。収穫を兼ねてこまめに新芽を摘み、風通しを良くすることで、物理的にアザミウマが定着しにくい構造を作りましょう。

次に、見落としがちなのが「周辺の雑草管理」です。アザミウマは非常に広食性で、バジル以外の多くの植物にも寄生します。特に圃場やプランターの周りに生えているハコベ、ホトケノザ、ヒメジョオンといった雑草は、アザミウマにとっての「待機場所」や「越冬場所」になります。

バジルだけに薬を撒いても、隣の雑草に逃げ込まれては意味がありません。栽培スペースの周囲は常に除草を徹底し、清潔な「緩衝地帯」を作ることが、外部からの飛来を最小限に抑える鍵となります。これを専門用語でサニテーション(環境衛生管理)と呼び、IPM(統合的病害虫管理)の極めて重要な柱とされています。

また、栽培が終わった後の「後片付け」も重要です。被害を受けた株をそのまま放置したり、枯れ葉を土の上に置いたままにしたりすると、そこで蛹になった個体が次シーズンの発生源となります。栽培終了後は、残渣(ざんさ)を速やかに袋に入れて密封して処分するか、日光消毒を行って土中の蛹を死滅させてください。

こうした地味な作業の積み重ねが、翌年のアザミウマ発生密度を劇的に下げる結果に繋がります。健康なバジルは害虫に襲われても回復する力が強いもの。適切な剪定と清掃で、バジルが本来持っている生命力を最大限に引き出してあげましょう。

再発を防ぐ環境作り

  • こまめな摘心で、株内部の風通しと日当たりを確保する
  • プランター周辺の雑草を排除し、アザミウマの避難所をなくす
  • 収穫後の残渣は放置せず、適切に処分して土中からの羽化を防ぐ

アザミウマなどバジルにつく害虫に負けない栽培のまとめ

ここまで詳しく解説してきた通り、バジルのアザミウマ対策は、単一の手法だけで完結するものではありません。彼らの「1mm以下の小ささ」「土中で蛹になる独特のサイクル」「驚異的な繁殖スピード」という強みに対し、私たちは複数の「網」を組み合わせて対抗する必要があります。

物理的な赤色ネットでの遮断、シルバーマルチによる視覚の攪乱、そして片栗粉スプレーやニームオイルといったオーガニックな手法。これらを状況に合わせて使い分けることが、バジル栽培を成功させる唯一の道です。

もし被害が手に負えないほど広がってしまったら、無理をせず「ローテーション散布」のルールを守った上で、適切な殺虫剤を使用することも一つの正しい選択です。農薬を使うことは決して「敗北」ではありません。むしろ、大切なバジルをウイルス病や壊滅的な食害から守るための、賢明な判断と言えます。

その際は、収穫前日数や使用方法を改めてメーカー公式サイト等で確認し、安全第一で運用してください。バジルは非常に生命力が強いハーブです。アザミウマを撃退して適切なケアを施せば、数週間後には再び美しい緑の新芽を吹き返してくれます。

最後になりますが、害虫対策において最も大切なのは、日々の観察です。朝のパトロールで葉の裏を一撫でし、異変がないかチェックする時間は、バジルとの対話でもあります。早期発見・早期対応ができれば、強い薬を使わずとも解決できるケースがほとんどです。今回ご紹介した知識を武器に、アザミウマの脅威からあなたの大切なバジルを守り抜き、キッチンいっぱいに広がる豊かな香りを楽しんでください。

皆さんのバジル栽培が、健やかで実り多いものになることを心から願っています。最終的な対策の判断は、ご自身の栽培環境に合わせて慎重に行い、迷った際はお近くの園芸店や農業相談窓口などの専門家にご相談ください。

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この記事を書いた人

名前(愛称): クジョー博士
本名(設定): 九条 まどか(くじょう まどか)

年齢: 永遠の39歳(※本人談)
職業: 害虫・害獣・害鳥対策の専門家/駆除研究所所長
肩書き:「退治の伝道師」

出身地:日本のどこかの山あい(虫と共に育つ)

経歴:昆虫学・動物生態学を学び、野外調査に20年以上従事
世界中の害虫・害獣の被害と対策法を研究
現在は「虫退治、はじめました。」の管理人として情報発信中

性格:知識豊富で冷静沈着
でもちょっと天然ボケな一面もあり、読者のコメントにめっちゃ喜ぶ
虫にも情がわくタイプだけど、必要な時はビシッと退治

口ぐせ:「彼らにも彼らの事情があるけど、こっちの生活も大事よね」
「退治は愛、でも徹底」

趣味:虫めがね集め

風呂上がりの虫チェック(職業病)

愛用グッズ:特注のマルチ退治ベルト(スプレー、忌避剤、ペンライト内蔵)

ペットのヤモリ「ヤモ太」

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