ハナミズキにつく害虫 カイガラムシ!白い粉の正体と駆除の方法

春には可憐な花を咲かせ、秋には美しい紅葉で目を楽しませてくれるハナミズキですが、ふと枝先を見たときに白い粉のようなものや、奇妙な塊が付着しているのを見つけて不安になってはいませんか。それはハナミズキにつく害虫であるカイガラムシの仕業かもしれません。

放置しておくと樹勢が衰えるだけでなく、葉が真っ黒に汚れるすす病を併発し、最悪の場合は大切な庭木が枯れてしまうこともあります。この記事では、庭木の管理に携わってきた私の経験に基づき、カイガラムシの種類ごとの見分け方から、効果的な薬剤の選び方、そして冬や夏の時期に合わせた具体的な駆除方法まで、初心者の方でも迷わず実践できる対策を詳しくお伝えします。

正しい知識を持って対処すれば、ハナミズキの健康と美しさを取り戻すことは十分に可能ですので、ぜひ最後まで読み進めてみてください。

この記事を読むことで理解できる内容は以下のとおりです。

  • ハナミズキに寄生する主なカイガラムシの種類と見分け方
  • 吸汁被害によって引き起こされるすす病や樹勢衰退のメカニズム
  • 幼虫の発生時期や冬の休眠期に合わせた最適な防除スケジュール
  • 家庭で手軽に実践できる物理的な除去方法と効果的な薬剤の活用術
目次

ハナミズキにつく害虫のカイガラムシの生態と種類

ハナミズキを健全に育てるためには、まず敵を知ることが不可欠です。カイガラムシは非常に種類が多く、その姿形も千差万別ですが、ハナミズキで特によく見られる種類には明確な特徴があります。ここでは、被害を早期発見するためのポイントと、代表的な種類の生態について詳しく解説します。

枝や幹にある白い粉の正体と症状の見分け方

ハナミズキの枝や幹がまるで白い粉をまぶしたように見えることがありますが、これはカイガラムシが分泌したロウ物質や、密集して寄生している虫体そのものです。一見するとカビやうどんこ病のように見えることもありますが、カイガラムシの場合は物理的な実体があるため、爪やヘラで軽くこすってみることで容易に判別が可能です。

もしポロポロと剥がれ落ちたり、中からじわっとした液体が出てきたりする場合は、十中八九カイガラムシだと判断して間違いありません。彼らは半翅目というグループに属し、カメムシやアブラムシの近縁にあたりますが、成虫になると脚が退化し、一生を同じ場所で過ごすという極めて特殊な生活様式を持っています。

カイガラムシ特有の吸汁メカニズム

これらの害虫は、ハナミズキの組織に非常に細く鋭い口吻(こうふん)を深く突き刺し、植物体内を流れる糖分の豊富な師管液を直接奪い取ります。この吸汁活動は植物にとって「栄養のバイパス」を作られたようなものであり、本来なら新芽や花、果実に行くはずのエネルギーが虫に横取りされてしまうのです。寄生密度が低い初期段階では、目に見える症状は限定的ですが、寄生が進行するにつれて、新梢の伸長抑制、節間が詰まった異常な成長、葉の黄化といった生理的反応が顕著になります。

早期発見のための観察ポイント

さらに、カイガラムシが排泄する「甘露」によって、枝葉が不自然にベタベタしてくるのも重要なサインです。これは虫が師管液から過剰な糖分を摂取し、余った分を排出しているためです。このベタつきは、後述するすす病の温床となるため、見逃してはいけません。

こうした異変にいち早く気づくことが、被害を最小限に抑えるための第一歩となります。特に都市部では、冬場の乾燥やヒートアイランド現象によってハナミズキがストレスを受けやすく、カイガラムシが発生しやすい傾向にあるため、日頃からの注意深い観察が求められます。

被害を拡大させるすす病とアリの共生関係

カイガラムシの被害が深刻なのは、単に養分を吸い取るからだけではありません。彼らが排出する糖分を豊富に含んだ排泄物(甘露)は、空中を漂うすす病菌(糸状菌の一種)にとって絶好の栄養源となります。ここに菌が付着して繁殖すると、葉や枝が炭を塗ったように真っ黒になる「すす病」が発生します。

すす病自体が植物の組織内に侵入して病気を引き起こすわけではありませんが、漆黒の菌糸の膜が日光を完全に遮断するため、葉の光合成効率が劇的に低下します。これは樹勢のさらなる悪化を招く負のスパイラルとなり、放置すれば枝枯れの原因となります。

アリの往来が示す危険信号

また、ハナミズキの幹をアリが頻繁に行き来しているのを見かけたら、それは非常に強い警告信号です。アリはカイガラムシの甘い排泄物をもらう代わりに、テントウムシや寄生バチといった天敵からカイガラムシを守るという「相利共生関係」を築いています。

アリがいることで、本来なら害虫を食べてくれるはずの益虫が排除されてしまい、カイガラムシのコロニーは安全に拡大し続けることができるのです。つまり、アリの存在は上部にカイガラムシの巨大な巣窟があることを知らせるバイオインジケーターと言えるでしょう。

生態系のバランスと防除の考え方

この共生関係を断ち切ることも、総合的な害虫管理(IPM)においては非常に重要です。カイガラムシを完全に駆除すれば、餌がなくなるためアリも自然といなくなります。逆に言えば、アリの侵入を物理的に阻止するだけで、天敵による自然な防除が期待できるケースもあります。

カイガラムシの生態についてより公的な情報を確認したい場合は、専門機関の資料が参考になります(出典:静岡県公式ホームページ「クワシロカイガラムシに対する効果的な薬剤散布方法」)。このように、一つの害虫を単体で捉えるのではなく、病気や他の昆虫との関わりを網羅的に理解することが、健全なハナミズキを維持する秘訣です。

赤い殻が特徴のルビーロウカイガラムシの生態

ハナミズキの枝に、ルビーのような赤褐色をした半球形の塊が付いていたら、それはルビーロウカイガラムシ(学名:Ceroplastes rubens)です。直径3〜4mm程度の大きさで、成虫になると非常に厚く硬いロウ物質の殻に覆われます。この姿がヘルメットのように見えることからその名がつきましたが、この「殻」が防除において最大の障壁となります。

通常の殺虫剤をかけても殻に弾かれてしまい、中にある虫体まで成分が到達しないため、成虫になってからの化学的防除は極めて困難です。この硬い防具は、乾燥や外敵、そして人間の攻撃から身を守るために進化した究極の防御機構と言えるでしょう。

生活史と被害の特徴

ルビーロウカイガラムシは、主に成虫の形態で越冬し、5月下旬から6月にかけて殻の下に数百個の卵を産下します。卵から孵化したばかりの幼虫は、まだロウ物質の殻を形成しておらず、数日間は新しい定着場所を求めて枝を活発に移動します。

この「歩行幼虫(クローラー)」の時期だけが、薬剤が直接効く唯一のチャンスとなります。一度場所を決めると二度と移動せず、瞬く間にロウ物質を分泌して無敵の要塞を築き上げます。排泄物の量が非常に多いため、ハナミズキの葉が見る影もなく黒ずんでしまう原因の多くはこの種類によるものです。

景観への影響と対策の重要性

本種が大量発生すると、ハナミズキの最大の特徴である秋の紅葉も台無しになります。吸汁によって葉が早期に落葉するだけでなく、すす病によって黒く汚れた葉は、本来の鮮やかな赤色を出すことができません。美観を損なうだけでなく、翌年の花芽形成にも悪影響を及ぼすため、見つけ次第、物理的に削り落とすか、後述する冬季のマシン油乳剤散布による根絶を目指す必要があります。特にルビーロウカイガラムシは、一度定着すると同じ場所で何年も増殖を続ける傾向があるため、徹底的な対処が求められます。

ルビーロウカイガラムシを潰すと、中から真っ赤な粘り気のある体液が出ることがあります。これが衣類や玄関のタイルなどに付着すると、色素が強く残ってしまうため、作業時には使い捨ての手袋を着用し、周囲を養生することをおすすめします。

繁殖力が極めて強いクワシロカイガラムシの脅威

ハナミズキの幹の表面が真っ白に覆われ、まるでペンキを塗りたくったような、あるいは樹皮がボロボロに剥がれたように見える場合は、クワシロカイガラムシの寄生を疑ってください。このカイガラムシはハナミズキにとって最も恐ろしい宿敵の一つです。その最大の特徴は、他の種を圧倒する異常なまでの繁殖力にあります。雌成虫は円形の白い殻を持ち、その下で大量の卵を産みます。雄は細長く、さらに真っ白な分泌物を出すため、密集すると枝や幹全体が真っ白な粉を吹いたような異様な光景になります。

ハナミズキを死に至らしめるプロセス

クワシロカイガラムシが「脅威」と呼ばれる理由は、その密度にあります。数万匹という単位で幹の全周を隙間なく埋め尽くすため、樹皮直下の生きた組織である形成層が壊滅的なダメージを受けます。これにより、根から吸い上げた水や葉で作られた栄養が遮断され、木は「絞め殺される」ような状態で衰弱していきます。

特に植え付けから数年の若木に寄生された場合、回復が間に合わず、たった1〜2年で主幹が枯死するケースも珍しくありません。庭のシンボルツリーとして大切に育てているハナミズキが、ある日突然、上部から枯れ始める原因の多くは、この足元のクワシロカイガラムシにあります。

発生サイクルの多回数化

通常、1年に2回から3回発生しますが、近年の温暖化の影響により、都市部ではさらに回数が増えている可能性が指摘されています。第1回は5月中下旬、第2回は7月中下旬、第3回は9月頃に幼虫が孵化し、そのたびに被害が爆発的に拡大します。

発生のタイミングが予測しづらいため、防除の難易度が非常に高い害虫です。幹の根元付近は草花やマルチングで隠れがちですが、ここが最大の発生源になることが多いため、定期的に株元をかき分けて白い塊がないか点検することが、ハナミズキの命を守ることに直結します。

白い綿状の分泌物で覆われたコナカイガラムシ

枝の分かれ目や葉の付け根、あるいは樹皮の深い裂け目に、白い綿クズやカビの塊のようなものが溜まっていませんか。それはコナカイガラムシ類の仕業かもしれません。このグループは、ルビーロウカイガラムシなどの「硬い殻を持つタイプ」とは一線を画す生態を持っています。

最大の違いは、成虫になっても脚を持ち続け、必要に応じて場所を移動しながら吸汁を続けるというアクティブな性質です。その名の通り、体表が非常に細かい白い粉状や綿状のロウ分泌物で覆われており、見た目は小さなダンゴムシに白い粉をまぶしたような姿をしています。

執拗な寄生と防除の難しさ

コナカイガラムシが厄介なのは、その「隠れる能力」にあります。移動ができるため、薬剤が散布されると、樹皮の隙間や折り重なった葉の裏、さらには根元の土壌付近まで逃げ込みます。一般的な薬剤散布では、表面にいる個体は殺せても、こうした「死角」に隠れた個体が生き残り、すぐにまた増殖を始めてしまいます。また、その綿状の分泌物は水を弾く性質が非常に強く、薬液を直接かけても弾かれてしまうことが多々あります。これが「一度発生すると完全な駆除には根気強い対応が求められる」と言われる所以です。

ハナミズキの美観への悪影響

ハナミズキにおいてコナカイガラムシは、特に花芽や新芽の付近に好んで集まります。これにより、楽しみにしていた花が歪んで咲いたり、開花前に枯れ落ちたりといった実害が生じます。また、分泌物自体がベタベタとして汚らしく、庭木としての観賞価値を著しく下げてしまいます。

冬場の休眠期がない種類も多いため、1年を通して注意が必要です。対策としては、強力な水流で綿状の塊を吹き飛ばす物理的洗浄や、植物の体内から効く浸透移行性の薬剤を併用し、逃げ場をなくす戦略が有効です。日当たりが悪く、湿気がこもりやすい場所で特に発生しやすいため、後述する環境改善も併せて検討しましょう。

ハナミズキにつく害虫のカイガラムシを駆除する対策

カイガラムシの生態がわかったところで、次は具体的な防除方法について解説します。成虫は強固な防具で守られているため、闇雲に薬剤を撒いても時間と費用の無駄になりかねません。庭木のプロとして、私が現場で実践している「最も効率的な防除ステップ」を時期別に詳しくお伝えします。

5月から8月の幼虫期を狙う殺虫剤散布の時期

化学的防除において、これ以上に重要な鉄則はありません。それは、「殻を持たない幼虫(歩行幼虫)の時期」を絶対に逃さないことです。ルビーロウカイガラムシやクワシロカイガラムシの成虫にはどんなに強い毒も効きにくいですが、生まれたばかりの幼虫は文字通り丸裸です。この時期であれば、家庭用の一般的な園芸殺虫剤であっても、劇的な殺虫効果を発揮します。このチャンスは1年の中で数回、わずか数週間の窓口しか開いていません。

最適な散布タイミングの見極め方

目安として、第1波は5月下旬から6月、第2波は7月から8月にかけて訪れます。正確な時期を知るには、枝を軽く叩いて白い紙の上に落としてみるか、ルーペで枝を観察し、ミクロサイズの虫(多くはオレンジや黄色、白)がチョロチョロと動いているのを確認してください。

地域によって発生時期は異なりますが、ハナミズキの花が終わり、新緑が深まる頃が最初の警戒時期です。この「黄金の数週間」を捉えられるかどうかが、駆除の成功率を8割以上左右すると言っても過言ではありません。この時期を逃すと、虫はすぐにロウ物質の鎧を形成し、再び無敵状態に戻ってしまいます。

効果を最大化する散布テクニック

薬剤を散布する際は、「かければ良い」というものではありません。幼虫は葉の裏や枝の分かれ目など、目立たない場所に密集する習性があります。そのため、散布器のノズルを上向きにし、葉の裏から突き上げるように噴霧してください。滴り落ちるくらいたっぷりと、全身を洗ってあげるようなイメージで薬液を浴びせることが重要です。また、全ての卵が同時に孵化するわけではないため、1回目の散布から約10日後にもう一度散布を行う「2段構え」の対策をとることで、後から生まれてきた個体も根こそぎ退治することが可能になります。

冬のマシン油乳剤による効果的な窒息防除

もし夏場の忙しさで防除のタイミングを逃してしまったり、気づいた時にはすでに枝が貝殻のような虫でびっしり埋め尽くされていたりしても、諦める必要はありません。ハナミズキが葉を落とし、冬の眠りについている12月から2月の期間こそが、強固な成虫を撃破する最大のチャンスです。この時期に使用するのが、物理的防除の決定版「マシン油乳剤」です。これは化学的な毒性で神経を麻痺させるのではなく、高純度の油の膜でカイガラムシを物理的に包み込み、側面にある気門(呼吸口)を塞いで窒息死させる画期的な薬剤です。

冬にしかできない「攻め」の防除

マシン油乳剤の最大のメリットは、物理的な作用であるため、害虫が薬剤抵抗性を獲得する心配がほとんどない点です。さらに、落葉した後のハナミズキは活動を停止しており、樹皮が非常に強固な状態になっているため、夏場なら薬害が出てしまうような濃い濃度(一般的に15倍〜50倍程度、製品による)での散布が可能です。葉がないため枝の隅々まで薬液が届きやすく、厚いロウ物質に守られた成虫に対しても、油がじわじわと浸透して死に至らしめます。まさに冬にしかできない、プロ推奨の「一網打尽」テクニックです。

マシン油散布の注意点とコツ

散布に最適なのは、風が穏やかで乾燥した晴天の日です。雨が降ると油の膜が流れてしまうため、散布後24時間は天気が持つ日を選びましょう。散布の際は、噴霧器を使用して、主幹から細い枝先に至るまで全体がしっとりと油で光るくらい念入りに吹きかけます。

塗りムラがあると、生き残った数匹が春に再び数千匹へと増殖するため、徹底的な「全塗装」を意識してください。ただし、ハナミズキの品種や樹齢によっては、高濃度散布で稀に芽を傷める可能性があるため、初めての場合は目立たない枝で試すか、メーカー指定の希釈倍率を厳守してください。最終的な判断や作業の実施に不安がある場合は、専門家にご相談ください。

ブラシでのこそげ落としや剪定による物理的駆除

薬剤に頼りたくない場合や、大切な一本の庭木を丁寧にケアしたい場合に、私が最も確実な方法としておすすめしているのが物理的な除去です。特にルビーロウカイガラムシのように大きく目立つ成虫が数個付いている程度なら、薬剤を買ってくるよりも自分の手で取り除いた方がはるかに早く、かつ確実です。

道具は特別なものである必要はありません。古くなった歯ブラシ、竹べら、あるいは専用のスクレイパー(金属ヘラ)があれば十分です。これらを使って、枝を傷つけないように注意しながら、付着しているカイガラムシを丁寧にこすり落としてください。

物理的除去を成功させる詳細な手順

作業を行う際のコツは、落とした虫をそのまま地面に放置しないことです。成虫は動けませんが、中にある卵が生き残っている場合、春に孵化した幼虫が再び木を這い上がってくるリスクがあります。木の下にビニールシートを敷いてから作業を行い、こそげ落とした虫はシートごと回収して可燃ゴミとして処分しましょう。

また、クワシロカイガラムシのように幹に薄く広く張り付いているタイプは、硬めの亀の子たわしや、ホースの強力なジェット水流で洗い流すのも非常に有効な手段です。幹を傷めない程度の力加減で「洗う」ことで、劇的に寄生密度を下げることができます。

環境改善を兼ねた「剪定」の重要性

物理的防除のもう一つの柱が「剪定」です。カイガラムシは「暗く、風通しが悪く、湿度が高い」場所を好んで繁殖の拠点にします。ハナミズキの枝が混み合い、中心部に光が当たらない状態は、彼らにとっての高級ホテルを提供しているようなものです。冬の休眠期に、交差している枝や内側に向かって伸びる細い枝を間引き、樹冠内部の風通しを改善しましょう。

もし特定の枝に回復不能なほどびっしりと虫が付いている場合は、その枝を根元から切り落とし、丸ごと処分するのが最も効率的です。これにより、物理的に害虫を排除すると同時に、翌年の発生を予防する「強い木」を作ることができます。

手法実行のポイント期待できる効果難易度と注意点
ブラシ清掃成虫を物理的に削り取る。落とした虫は必ず回収・処分する。即効性が非常に高く、薬剤抵抗性を無視できる。手間がかかり、高い場所や細い枝には不向き。
高圧洗浄ホースのジェット水流や高圧洗浄機で吹き飛ばす。広範囲を短時間で処理でき、薬剤を使わない。水圧が強すぎると樹皮を傷める恐れがある。
薬剤散布(夏)5月〜8月の幼虫孵化期に2回以上、葉の裏まで丁寧に散布。適切な時期に行えば、ほぼ根絶が可能。タイミングを1週間でも逃すと効果が激減する。
マシン油(冬)落葉後の12月〜2月に、全体を油膜でコーティングする。成虫を窒息死させ、翌年の発生源を絶つ。他の農薬との混用や、散布時期の間隔に注意が必要。

オルトランやスミチオンなど適切な薬剤の選び方

「カイガラムシに効く薬」と一口に言っても、実はその作用メカニズムによって大きく二つのタイプに分かれます。これを知らずに使うと、「せっかく薬を撒いたのに全然効かない」という事態に陥ります。まず、初心者の方に最も知っておいていただきたいのが、「オルトラン」に代表される「浸透移行性剤」です。

これは、成分が葉や根から吸収されて植物の全身を巡り、その汁を吸った虫を内側から退治する画期的な薬です。虫に直接かけなくても効果があるため、葉の裏や隙間に隠れているコナカイガラムシ対策には欠かせません。

状況に合わせた薬剤の使い分け

一方、すでに大量発生していて、すぐにでも数を減らしたい場合に即効性を発揮するのが「スミチオン(成分名:MEP)」などの「接触剤」です。これは薬剤が虫の体に直接触れることで殺虫効果を発揮します。ただし、殻ができてからでは効果が半減するため、前述の幼虫期に使うのが鉄則です。

さらに、最近注目されているのが「脱皮阻害剤(アプロードなど)」です。これは昆虫特有の脱皮を邪魔して成虫になれなくする薬で、天敵であるテントウムシなどには影響が少ないため、環境に配慮した選択肢としてプロの間で重宝されています。

家庭での使いやすさを重視した選択

広い庭で何本もハナミズキを管理している場合は、自分で希釈して使う「乳剤」や「水和剤」が経済的ですが、1〜2本のハナミズキをケアするなら、手軽な「カイガラムシ専用エアゾール」が便利です。これらは噴射力が強く、高い枝まで薬剤を届かせることができ、さらにオイル成分が配合されているため、成虫の殻にも浸透しやすい工夫がなされています。

どの薬剤を選ぶにしても、必ず「カイガラムシ」および「ハナミズキ(または花木)」という記載があることを確認してください。また、薬剤の使用については、最新の登録状況を農林水産省のデータベース等で確認するか、購入店の専門員に相談して、安全に配慮して使用してください。

こうやく病などの二次被害を防ぐ栽培環境の改善

庭木の管理をしていると、「なぜか特定の木にばかり害虫がつく」という現象に遭遇します。これは偶然ではなく、その木がストレスを受けて弱っていることが原因である場合がほとんどです。ハナミズキにおいて、カイガラムシと切っても切れない関係にあるのが「こうやく病」です。

これはカイガラムシが媒介する菌によって、枝に灰色や褐色のフェルトのような厚みのあるカビが発生する病気です。この病気が進行すると、枝が窒息状態になり枯れてしまいます。つまり、栽培環境の改善は、カイガラムシ対策そのものなのです。

ハナミズキが好む「健やかな環境」とは

まず見直すべきは「乾燥」です。ハナミズキは北米の湿潤な環境を好むため、日本の夏の酷暑と乾燥は大きなストレスになります。木が水切れを起こすと、自らを守るための防御物質を作る力が弱まり、そこをカイガラムシに付け込まれます。夏場は夕方にたっぷりと株元に水をやり、腐葉土などでマルチングをして地温の上昇と乾燥を防いでください。

また、過剰な窒素肥料は控えるのが賢明です。窒素が多すぎると枝葉が軟弱に育ち、カイガラムシにとって「美味しくて栄養満点の餌」になってしまうからです。リン酸やカリをバランスよく配合した肥料を、冬の「寒肥」として与えるのがベストです。

光と風のマネジメント

最後に、もっともシンプルで効果的なのが「風通し」です。ハナミズキを壁際に植えすぎていたり、周囲の生垣が密生していたりすると、空気のよどみが生じます。カイガラムシはこの「よどみ」を狙って定着します。剪定によって枝を整理し、樹冠のどこにでも風が吹き抜け、日光が差し込むようにするだけで、カイガラムシの繁殖率は劇的に低下します。

害虫駆除という「治療」も大切ですが、それ以上に「病気になりにくい体作り」をサポートしてあげることが、ハナミズキを長く美しく保つための本質的なアプローチとなります。日々の観察を通じて、ハナミズキが心地よく過ごせているか対話してみてください。

ハナミズキにつく害虫のカイガラムシ総合管理のまとめ

ハナミズキにつく害虫のカイガラムシ対策は、単発のイベントではなく、季節に寄り添った「年間のコミュニケーション」であると私は考えています。今回解説してきたように、5月から8月の幼虫期における精密な薬剤散布、12月から2月の冬季におけるマシン油乳剤での徹底防除、そして日々の観察に基づいた物理的な除去と環境改善。これら一つひとつを組み合わせる「総合的病害虫管理(IPM)」こそが、最も確実で、かつ環境負荷の少ない解決策です。

管理カレンダーのイメージ

1月〜2月に冬の防除を行い、5月に新緑とともに現れる幼虫をチェックする。夏場は水切れに注意し、秋には剪定をして来シーズンに備える。このサイクルを意識するだけで、あなたのハナミズキは見違えるほど健康になります。カイガラムシは確かに厄介な相手ですが、正しい知識を持って向き合えば、決して勝てない相手ではありません。むしろ、カイガラムシの発生は「少し環境を見直してほしい」というハナミズキからのメッセージかもしれません。

プロからの最後のアドバイス

この記事を通じて、読者の皆さんが自信を持ってハナミズキのケアに取り組めるようになることを願っています。しかし、木の状態は千差万別です。もし自力での対処に限界を感じたり、高い木の上で作業が危険だったりする場合は、無理をせずプロの造園業者や樹木医の手を借りるのも一つの賢い選択です。

また、薬剤を使用する際は必ずパッケージの指示を読み、周囲の環境やペット、ご近所への配慮を忘れないようにしてください。最終的な防除計画の策定や実施については、専門家にご相談ください。四季折々の表情を見せてくれるハナミズキ。その輝きを次世代へと繋いでいくために、今日からできる一歩を始めてみましょう。

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この記事を書いた人

名前(愛称): クジョー博士
本名(設定): 九条 まどか(くじょう まどか)

年齢: 永遠の39歳(※本人談)
職業: 害虫・害獣・害鳥対策の専門家/駆除研究所所長
肩書き:「退治の伝道師」

出身地:日本のどこかの山あい(虫と共に育つ)

経歴:昆虫学・動物生態学を学び、野外調査に20年以上従事
世界中の害虫・害獣の被害と対策法を研究
現在は「虫退治、はじめました。」の管理人として情報発信中

性格:知識豊富で冷静沈着
でもちょっと天然ボケな一面もあり、読者のコメントにめっちゃ喜ぶ
虫にも情がわくタイプだけど、必要な時はビシッと退治

口ぐせ:「彼らにも彼らの事情があるけど、こっちの生活も大事よね」
「退治は愛、でも徹底」

趣味:虫めがね集め

風呂上がりの虫チェック(職業病)

愛用グッズ:特注のマルチ退治ベルト(スプレー、忌避剤、ペンライト内蔵)

ペットのヤモリ「ヤモ太」

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