早朝の電線や夕暮れの公園でカラスを見かけるたび、カラスがどこで寝るのかが気になる方もいると思います。
本記事では、四季の移ろいと都市・郊外の環境差がねぐら選びに与える影響を軸に、1日の行動リズムと結び付けてわかりやすく整理します。
さらに、ねぐらが備える安全条件や、繁殖期にカラスはどこに巣を作るのか、カラスはいつ眠るのかといった基礎も丁寧に解説します。
身近な事例や注意点を押さえることで、通勤路や自宅周辺での対処がしやすくなり、無用なトラブルを避けながら上手に共存できるようになります。
この記事を読むことで理解できる内容は以下のとおりです。
- 季節による寝場所と樹種の違い
- 都市部で見られる典型的なねぐら環境
- ねぐら選びの安全条件と群れの理由
- 夜間や明け方の鳴き声が起きる背景
カラスはどこで寝るのか徹底解説
季節で異なる寝場所の違い
ねぐらの安全条件と選択基準
都市部で見られるねぐら例
1本の木に何羽とまるのか?
季節で異なる寝場所の違い

寒暖差や葉の付き方が大きく変わる日本の四季では、ねぐら選びも季節に応じて最適化されます。
冬は一年中葉を保つスギやヒバなどの針葉樹、クスやスダジイなどの常緑広葉樹の内部を好みます。
密な樹冠が風を弱め、外敵からの視線も遮るため、体温保持と安全確保の両面で合理的です。
都市部では建物による風の巻き返しが起こりやすく、風下側の樹冠内部に入り込む配置が選ばれやすくなります。(出典:環境省 自然環境局 鳥獣保護管理「カラス対策マニュアル」)
一方で夏は、落葉広葉樹を含め全体的に葉量が増えるため、特定の樹種への依存は薄れます。
熱のこもりにくい樹冠の下方で、太く安定した枝にとまって休む傾向があり、上空の猛禽からは見つかりにくく、地上から接近するネコなどの気配には気づきやすい位置取りになります。
都市の人工照明に対しては、葉が厚い樹冠内に入って直視光を避ける、線路や幹線道路から距離をとって騒音刺激を下げるなど、環境刺激を減らす配置が選択されます。
季節にかかわらず、ねぐらの足元は植栽密度が低めで見通しがよく、接近の兆候を早めに検知できる地形が好まれます。
大規模公園や神社林、河川敷のまとまった緑地では、夕刻に段階的な集合を繰り返しながら最終的なねぐらに収束する動線が形成されます。
季節ごとの違い(整理表)
季節 | 主な寝場所の樹種・部位 | ねぐら環境の特徴 | 行動の傾向 |
---|---|---|---|
冬 | スギ・ヒバなど針葉樹内部、クス・スダジイなど常緑樹内部 | 防風性と視線の遮蔽を重視。光・音刺激の弱い樹冠深部を選ぶ | 枝間移動は少なめで静穏に滞在。体温保持を優先 |
春 | 繁殖期開始でつがいはねぐら参加が減少 | 人通りや外敵の多い林縁を回避。巣の近傍で過ごす時間が増える | 警戒が強まり、集団規模は縮小傾向 |
夏 | 葉量が多く樹冠下部の太枝を選択 | 足元が開けて接近に気づきやすい。風通しを確保し暑熱を回避 | 気温や風向に応じて位置を微調整しやすい枝を好む |
秋 | 当年生の幼鳥が合流し規模拡大 | 大規模緑地・神社林に集中。集合地点が階層的に形成 | 夕刻の集合と段階的なねぐら入りが顕著に見られる |
ねぐら選好の背景
四季による葉密度と風環境の変化が、被視認性(上空から見つかりにくいこと)と察知性(地上からの接近に気づけること)のバランスに影響します。
冬は保温と遮蔽が、夏は通風と遮光が鍵となり、年間を通じて「上からは見えにくく、下の変化には敏感でいられる」位置が選ばれます。
樹冠内の微気候(風速や湿度、放射冷却の程度)を読むことで、カラスがとまる高さや枝の選択を理解しやすくなります。
ねぐらの安全条件と選択基準

ねぐら選びの条件は一貫しています。
上空の猛禽類に見つかりにくい覆い、地上のネコなどが近づけば気づける足元の見通し、そして適度な高さと太さの枝がそろうことです。
枝の強度は就寝中の安定に直結し、風が強い夜でも姿勢を保ちやすくなります。
また、外灯や交通騒音の影響が相対的に小さい一角が選ばれやすい一方、都市では完全に暗い環境が得にくいことから、葉が厚い樹冠内に深く入り、光や音を和らげる配置を取ります。
結果として、ねぐらの下は植栽が少なめで開け、見通しの良い空間になりがちです。
これらの条件がそろうほど、夜間の不要な移動が減り、体力の消耗を抑えられると考えられます。
都市部で見られるねぐら例

都市では規模の大きな公園や神社林、河川敷のまとまった樹林帯、大学キャンパスや大型施設の緑地が代表的です。
近年は小規模な緑地でも少数が集まるケースが観察され、街路樹の並木が取り囲む広場でも条件が合えば一時的なねぐらになります。
広告塔や照明塔など人工物は基本的に採餌や見張り場としての利用が中心ですが、樹木が乏しい区域では樹冠代替として周縁を使うこともあります。
いずれも、周辺に生ごみなど食物資源が多い地域では個体数が増えやすく、夕方の集合→段階的なねぐら入りという動線が明瞭になります。
1本の木に何羽とまるのか?

1本の木にとまる数は20~30羽が目安です。
太い枝が多い樹種ほど着座位置を分散でき、互いの距離を適度に保ちながらも同じ樹内でまとまることができます。
群れ全体では数十羽から数千羽規模まで幅があり、秋から冬にかけて最大化します。
繁殖期はつがいが巣で夜を過ごすため、集団ねぐらの規模は縮小します。
枝の混雑が高まると、外縁の個体ほど警戒のために立ち位置を入れ替えたり、樹間を小移動する頻度が上がります。
カラスはどこで寝るかの関連知識
カラスの1日の行動
カラスはいつ眠る?
カラスは群れになる
カラスはどこに巣を作る?
カラスが夜に鳴く原因
カラスの1日の行動

夜明け前の薄明時にねぐらを飛び立ち、朝のうちに高カロリーの餌を効率的に確保します。
満腹になると、日中は落ち着いた場所で休息や羽繕い、水浴びによる体温調節と寄生虫対策、仲間同士のコミュニケーションに時間を割きます。
午後は天候や資源の状況次第で追加の採食や見張り行動を挟み、日没前後には就塒前集合と呼ばれる段階的な集まりを経て、ねぐらの樹冠部へと移動して休みます。
都市部では人間の活動と時間帯が重なるため、朝のごみ出し時間や公園・商業施設周辺での動きが顕著になります。
若鳥はなわばりを持たないことが多く、ねぐらから数キロ規模で巡回しながら複数の採餌場を回る傾向があり、経験を積むにつれて効率的なルート選択が定着します。
日中スケジュール早見表
時間帯 | 主な行動 | 環境要因と観察のポイント |
---|---|---|
夜明け前〜朝 | ねぐら離脱、採食開始 | 低風速時は移動距離が伸びやすい。ごみ出しや公園の利用開始と重なる |
午前 | 集中的な採食 | 食物密度の高い場所を巡回。若鳥は行動圏が広くルート学習が進む |
正午前後 | 休息、羽繕い、水浴び | 高温時は日陰や水場を選ぶ。羽繕いは防水性維持に寄与 |
夕方 | 追加採食、就塒前集合 | 複数地点で集合と解散を繰り返し、最終的にねぐらへ移動 |
日没後 | 樹冠部で静穏化 | 樹内での位置調整を経て就寝。浅い睡眠を繰り返す |
季節と生活史の関係
春〜初夏の繁殖期は、つがいが巣に近い範囲で過ごすため集団行動が目立たなくなります。夏後半には巣立った幼鳥が若鳥群に合流し、秋〜冬にはねぐらの規模が拡大します。
これに伴い、就塒前集合の場所や経路が季節で変わることがあり、都市の緑地・神社林・河川敷など、まとまった樹林帯が反復利用されます。
カラスはいつ眠る?

昼行性のため、眠るのは夜間です。ただし、日没直後に直ちに眠るのではなく、外敵や人為的な刺激の少ない位置を選ぶために樹冠内で短距離の移動を繰り返し、安定した枝に落ち着いてから休みます。
睡眠は浅い状態を周期的に挟むのが特徴で、物音や光に反応して一時的に覚醒することがあります。
月明かりが明るい夜や強風時には、姿勢の安定を確保するために枝間の位置替えが増える場合があります。
季節・光環境と睡眠の関係
明け方は早起きで、東の空が白むころには活動を始める個体が現れます。都市の外灯や交通騒音は覚醒のトリガーになり得るため、葉が厚く光と音をやわらげる樹冠内部の枝が選択されやすくなります。
夏季は樹葉が密になるため、特定の樹種に偏らず、風通しがよく太さのある枝が好まれます。冬季は常緑のスギやヒバ、クスやスダジイなど葉が残る樹の内部が選ばれやすく、保温と被視認性の低さが両立しやすい配置になります。
睡眠様式のポイント
鳥類には左右の大脳半球を交互に休める片半球睡眠が確認されている種も知られており、捕食者に対する警戒を維持する適応と説明されます。
カラスでも、環境刺激に敏感に反応しつつ休息を確保する睡眠様式が観察され、完全な熟睡よりもリスク低減を優先した戦略と理解できます。
カラスは群れになる

ねぐらは集団で形成され、規模は数十羽から数千羽まで幅があります。
秋〜冬は当年生まれの幼鳥が合流して規模が拡大し、春の繁殖期にはつがいが巣に戻るため縮小します。
群れることには複合的な利点があり、猛禽類など外敵の早期発見、採餌場所に関する情報伝達、配偶相手を見つける機会の増加が挙げられます。
群れの内部に固定的な役割分担があると断定できる証拠は限定的ですが、警戒心の強い個体や空腹の個体の反応が連鎖しやすく、結果として危険検知の感度が高まります。
ねぐら環境の選好にも群れ行動が影響し、広い樹冠、複数のとまり位置、そして足元が開けて接近が察知しやすい配置が選ばれがちです。
都市では大規模公園や神社林、河川敷の樹林帯、大学キャンパスの緑地などが反復利用されやすく、夕刻の就塒前集合を経て段階的にねぐら入りする動線が形成されます。(出典:環境省 自然環境局 鳥獣保護管理「カラス対策マニュアル」)
カラスはどこに巣を作る?

本来は森の樹木の枝に営巣しますが、都市部では庭木や校庭の高木、街路樹が主な場所になります。
樹木が不足する区域では、広告塔の内部、電柱や照明塔、高圧鉄塔など人工構造物が利用される例もあります。
巣の近くにはより高い位置に見張り場が設けられ、周辺の危険や採餌状況を把握しやすい配置がとられます。
材料は細枝を主体に、都市固有の資材として針金ハンガーやプラスチック片、ビニールひもなどが混在することがあり、強度と固定性を高める役割を果たします。
繁殖期はおおむね3〜6月で、ヒナは6〜7月に巣立ちます。
この時期、親鳥はヒナを守る防衛行動として威嚇や接近飛行を示すことがあるため、巣のある木に近づかない、刺激しない、落ちた幼鳥を拾わないといった配慮が欠かせません。
繁殖期のタイムライン
時期 | 主な状況 | 人との距離の取り方 |
---|---|---|
3〜4月 | 巣材集め・造巣 | 巣木や材料になりそうな放置物の管理を徹底 |
4〜5月 | 抱卵・抱雛 | 巣の近くを通るルートは可能なら迂回 |
5〜6月 | 育雛 | 威嚇が強まりやすい時期。帽子や傘で頭部を保護 |
6〜7月 | 巣立ち・枝渡り | 落ちた幼鳥は保護しない。親鳥の給餌を妨げない |
都市環境では巣材になり得る針金やプラスチックの放置が営巣を助長する場合があります。
資材となる廃棄物を放置しない、集積所の管理を徹底するなど、生活圏側の工夫が繁殖期のトラブル抑制につながります。
なお、鳥獣の捕獲や卵・ヒナの採取は各法令で制限されているとされ、対応は原則として土地・設備の管理者や自治体窓口へ相談するのが適切です。
カラスが夜に鳴く原因

夜間の鳴き声は大きく二つの背景が考えられます。
第一に早起きであるため、日の出前から活動を始める個体が鳴く場合です。第二に外敵や異常の警戒で、フクロウやヘビ、夜行性の哺乳類の接近、あるいは人為的な物音や光への反応がきっかけになります。
群れ内のコミュニケーションも鳴き声の理由です。位置確認や自己主張、仲間の呼びかけが重なると、一時的に騒がしくなることがあります。
都市では外灯や交通音がトリガーになりやすく、ねぐらの位置と周辺環境によって発生頻度が変わります。要するに、早朝活動と警戒反応の組み合わせで夜の鳴き声が説明できます。
カラスはどこで寝る?季節や環境で変わるねぐら選びと群れの動き:まとめ
この記事のまとめです。
- 冬は常緑の針葉樹や常緑広葉樹の内部で眠る
- 夏は葉の茂った樹冠下部の太めの枝で休む
- 上は猛禽に見つかりにくく下は気配に気づける場所
- ねぐらの足元は植栽が少なく開けた配置を選ぶ
- 1本の木にはおおむね二十から三十羽が就寝
- 秋冬は幼鳥合流でねぐら規模が拡大する
- 繁殖期はつがいが巣で夜を過ごし規模縮小
- 都市では公園や神社林など大きな緑地が中心
- 小規模緑地でも条件が合えば少数が集まる
- 就塒前集合を経て段階的にねぐらへ入る
- 浅い眠りを繰り返し物音や光に敏感に反応
- 早起きのため夜明け前から鳴く個体がいる
- 外敵や人為的刺激への警戒でも夜に鳴く
- 巣は樹木の枝が基本だが都市では人工物も
- 巣材に針金やプラスチックが使われることも
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