ヤスデが丸くなるという言葉を見聞きして、なぜそのような行動を取るのか、ムカデも同じように丸くなるのかと疑問に感じる人は少なくありません。
見た目が似ているだけに、実際の違いや行動の意味を正確に知りたいと考える方も多いでしょう。
この記事では、ヤスデが丸くなる仕組みとその理由を科学的な観点からわかりやすく解説し、屋外や室内で見かけた際の正しい対処法、放置によるリスクを詳しく紹介します。
この記事を読むことで理解できる内容は以下のとおりです。
- ヤスデが丸くなる理由と刺激条件の具体像
- ムカデとの見分け方と対応の違い
- 放置した場合に起こり得る臭気や侵入リスク
- 家に入れないための環境整備と対処手順
ヤスデが丸くなるのはなぜ?
ヤスデはどうすると丸くなる?
防御行動のメカニズム概要
ムカデも丸くなる?
ヤスデが嫌がるものは?
刺激時の体液と皮膚障害
ヤスデはどうすると丸くなる?

落ち葉層や鉢底のすき間に潜むヤスデは、外的刺激を危険と判断した瞬間、体節を素早く巻き込んで渦状(コイル状)に縮こまります。
これは柔らかい腹面や脚を内側に隠し、外側を硬い外骨格で覆うことで、機械的な圧力や捕食から身を守るための典型的な防御姿勢です。
刺激が収まれば、体節をほどきながら徐々に歩行を再開しますが、この解除には数十秒~数分かかることもあります。
反応を引き起こす主な刺激
- 強い可視光や突然の照明切替(影が急に動く状況を含む)
- 乾燥風や急激な送風(換気扇・ドライヤー・エアダスターの風)
- 不規則な振動や衝撃(鉢・落ち葉・石の移動、踏圧伝播)
- 直接的な接触(つつく、つまむ、持ち上げるなど)
これらは単独でも反応を誘発しますが、光変化+振動のように複合すると防御閾値を超えやすく、丸まりやすくなります。
ヤスデは夜行性で、日中は静止している時間が長いため、昼間に潜み場所を動かすと「即座に輪のように丸くなる」場面がよく観察されます。
生体力学とメリット
- 体節連鎖:各体節の筋活動が連鎖し、脚を内側へ折り畳みつつ円筒体をコイル化
- 被覆効果:攻撃点になりやすい頭部・腹面・気門を装甲化した背板で被覆
- 時間稼ぎ:動けない代わりに掴みにくく、捕食者の興味を低下させる抑止効果を発揮
一部の種類では、丸まる動作と同時に刺激臭のある体液(臭腺分泌)を各節から放出することがあります。公的資料では、この体液にベンズアルデヒドや青酸系物質を含む種類があるとされ、皮膚刺激や結膜刺激の懸念が示されています。(出典:神奈川県葉山町 行政情報「ヤスデの発生について」)
季節・環境によるばらつき
- 梅雨期や秋雨期:湿度が高く活動が増える一方、大雨後は土中が冠水し、地上に避難・移動する個体が増加
- 乾燥・高照度環境:防御姿勢や潜行行動が出やすく、長時間の静止が目立つ
- 都市庭園・プランター周り:落ち葉・腐植・鉢底の湿潤環境が反応観察の典型的な場面を生みやすい
要するに、ヤスデが丸くなるのは「多数の弱い刺激」より「少数でも急峻で多面的な刺激」に反応しやすいという特徴に集約されます。観察や作業の際は、極端な光変化・風・振動・接触を同時に与えないことが、安全面でも行動理解の面でも有効です。
すぐ試せる観察のコツ
ヤスデの防御反応を確かめる場面では、対象と周囲の安全を最優先に、刺激量を最小限に保つことが肝心です。
体液分泌を誘発しない、個体の負担を減らす、観察者の皮膚・眼への刺激を避ける、の三点を満たす工夫を組み合わせましょう。
安全・低刺激のアプローチ
- 触れ方:素手は避け、柔らかい筆や落ち葉片、長めの草葉でそっと触れる
- 風の管理:送風機やエアダスターは使わず、強い風を当てない
- 光の扱い:懐中電灯は間接照射から始め、急なオンオフや至近距離の直射を避ける
- 振動の抑制:鉢や石は持ち上げず、片側から少しずつずらすなど微小な動きに留める
観察時の衛生と保護
- 手指・眼の保護:使い捨て手袋と保護眼鏡の着用を検討(体液接触の回避)
- 近接時間:丸まり解除までの待機は距離を保って観察し、必要以上に追刺激を与えない
- 片付け:接触が疑われる工具や筆は流水で洗浄し、作業面は換気後に拭き取り
反応を比較して理解を深める
- 単刺激→複合刺激の順で試し、どの刺激で丸くなりやすいかを比較
- 日中と夜間、乾燥時と湿潤時など、環境条件を変えて反応差を記録
- 解除過程の観察(コイルの解け方、脚の再配列、歩行再開までの時間)で行動全体像を把握
過度な刺激は防御反応を長引かせ、体液分泌の誘発や個体の消耗につながります。
観察は短時間で切り上げ、環境を元に戻して撤収するのが望ましい姿勢です。
生態理解と安全配慮を両立させることで、ヤスデの丸くなる行動を無理なく、正確に捉えられます。
防御行動のメカニズム概要

丸くなる行動は、脚を内側へ折り畳み、体節を順に巻き込む連鎖運動です。
硬い背板を外側に向けることで、捕食者の攻撃点となる頭部や腹面を覆い隠します。
体節が多く柔軟に曲がる構造だからこそ成立する防御法で、動きが遅いヤスデの生存戦略と言えます。
さらに、刺激が強いときは臭腺から刺激臭を分泌し、嗅覚的な忌避も同時に働かせます。
この二段構えの反応により、短時間で危険から距離を取る時間を稼いでいます。
ムカデも丸くなる?

暮らしの中で見かける多足類のうち、ムカデは基本的に体を渦状に巻いて丸くはなりません。
扁平で素早く動く捕食者で、頭部の直後にある毒牙(顎肢・forcipule)を用いて咬みつき、脅威には逃走か攻撃で対処します。
いっぽう、同じ多足類でもヤスデは円筒形で動きが緩慢なため、体節を巻き込んで丸くなる防御姿勢と、臭腺からの分泌で危険回避を図ります。
両者は生態・形態・反応が大きく異なるため、次の観察ポイントを押さえると現場での誤認を減らせます。
- ムカデ:各体節に脚が1対、体は扁平で左右に脚が張り出す。夜行性の捕食者で、移動は速い。脅威には逃走や咬みつきで反応
- ヤスデ:各体節に脚が2対、体は丸みのある円筒。腐植食で動きは遅い。脅威には丸くなる+臭気分泌で反応
見分けに役立つ比較表
観点 | ヤスデ | ムカデ |
---|---|---|
脚の数・配置 | 各体節に2対 | 各体節に1対 |
体型 | 丸みのある円筒形 | 扁平で細長い |
動き | とても遅い | 速い |
脅威への反応 | 丸くなる・臭気分泌 | 逃走・咬む |
光沢 | 少なめでマット | 強めの光沢あり |
口器・武器 | 咬まず、防御臭で忌避 | 顎肢に毒牙、咬傷の危険 |
触覚 | 比較的短いことが多い | 長く敏感で探索的 |
補足解説:なぜムカデは丸くならないのか
ムカデは捕食と高速移動に適した扁平な体と長い脚を持ち、能動的な回避・攻撃が主戦略です。腹面を守る受動的なコイル姿勢は移動力と攻撃機会を奪うため、適応的ではありません。
休息時に軽く体を湾曲させることはありますが、ヤスデのように完全な渦状に巻き込む行動は観察されにくいとされています。
現場で迷ったときの確認ポイント
- 上から見た脚の向き:外側に張り出し長く鋭いならムカデ、下向きで細かく密生ならヤスデ
- 体の断面感:円筒に近いならヤスデ、上下に薄い扁平感が強ければムカデ
- 刺激後の初動:その場でコイル化して動きを止めればヤスデ、素早く走るか姿勢を低くして構えるならムカデ
安全対応の基本
ムカデは咬傷リスクがあるため、素手接触は避け、長柄のピンセットや厚手手袋を用いるのが無難です。屋内での遭遇時は、凍結スプレーなどの非可燃冷却噴霧を選ぶと、薬剤飛散を抑えつつ動きを止めやすくなります。片付け後は換気と清掃を行い、侵入経路(サッシすき間、通気口、排水経路)を点検しましょう。
誤認しやすいケース
幼体は体長が短く脚も細いため、ヤスデ幼体とムカデ幼体の見分けが難しくなります。この場合も「体節あたりの脚数」「反応様式(丸まる/走る)」を落ち着いて確認すると判断しやすくなります。
ヤスデが嫌がるものは?

ヤスデは乾燥、強い直射光、滑りやすい垂直面を苦手とします。
屋外の塀や段差に養生テープや金属板のような滑面を帯状に貼ると、よじ登りにくくなります。
家周りの落ち葉や腐葉土、湿った堆積物を減らし、風通しと排水性を高めると、好適環境が弱まり発生が抑えられます。
帯状にまける粒状の不快害虫用薬剤も市販されていますが、使用可否や方法は製品ラベルの記載に従うことが前提とされています。
小児やペットの動線では、散布位置や保管に一層の配慮が求められます。
刺激時の体液と皮膚障害

ヤスデは強い刺激を受けると、刺激臭のある黄褐色の体液を体節から分泌することがあります。
自治体の解説では、この成分に青酸系物質やベンズアルデヒドなどが含まれる種類があり、皮膚に付くとヒリヒリ感や水疱を生じる場合があるとされています。
目に入った場合は結膜への刺激が懸念されると案内されています。
万一付着したときは、すぐに大量の流水で洗い流し、痛みや赤みが残る場合は医療機関で相談する対応が推奨されています。
熱湯をかけたり焼却したりする方法は、臭気や刺激の拡散リスクがあるとして避けるよう周知されています。
ヤスデが丸くなる時の対処法
ヤスデを放置するとどうなる?
屋外と屋内での対処手順
ヤスデをゴミ袋に入れるとどうなる?
ヤスデは1匹いればもう1匹いるって本当?
家への侵入を防ぐ環境整備
ヤスデを放置するとどうなる?

少数なら土壌の分解者として静かに過ごしますが、環境条件がそろうと集団で塀や外壁をよじ登る現象が見られます。
放置すると、玄関やサッシの隙間から屋内に侵入して不快感を与えたり、体液による臭気が残ったりするおそれがあります。
線路での滑走事故が報じられる大型種も知られていますが、一般家庭では、雨続きのあとに一時的な集中出現が問題になりやすいです。
以上の点を踏まえると、出始めの段階で侵入路の封鎖と環境整備を行うほうが、後手の駆除より負担が小さくなります。
屋外と屋内での対処手順

屋外では、落ち葉や枯れ枝、鉢底の堆積物を片づけ、排水溝や側溝の詰まりを解消して湿気を減らします。
塀や階段のよじ登りが見られる面には、滑りやすいテープや金属板を帯状に設置します。
雨前後の帯状散布タイプの不快害虫用薬剤は、侵入予防帯をつくる目的で活用されますが、取扱説明の安全記載に従うことが前提とされています。
屋内では、素手で触らず、紙コップや塵取りで回収し、凍結スプレーのような殺虫成分を含まない製品の併用が扱いやすいとされています。
体液が床や壁に付いた場合は、換気しながら拭き取り、必要に応じて中性洗剤で再拭きします。
症状が出やすい家族がいる場合は、作業者を限定し、使い捨て手袋と眼鏡の着用を検討します。
うっかり踏んでしまったら
靴底の汚れは屋外でブラシ洗いし、皮膚に付着したときは流水でしっかり洗い流します。違和感や発赤が続く場合は受診を検討します。
ヤスデをゴミ袋に入れるとどうなる?

ほうきで掃き集めて厚手のゴミ袋にまとめ、しっかり縛って日向に一定時間置くと処理しやすくなる、という運用が自治体のチラシで案内されることがあります。
密閉空間と日光で温度が上がり、動きが止まりやすくなるためです。
袋の外に臭気が漏れないよう二重袋にする、回収日は当日または翌朝早めに出す、という手順が併記されることもあります。
焼却や熱湯の使用は臭気や刺激の拡散が懸念されるため推奨されていません。
ヤスデは1匹いればもう1匹いるって本当?

「つがいで必ず近くにいる」という類の話は、ヤスデには当てはまりません。
1匹の出現は、周囲が暗く湿った落ち葉や腐植に富み、潜み場所が多い環境であるサインと捉えるほうが現実的です。
実際には、種類や季節によっては集団で移動したり、雨のあとに一時的に地表へ避難したりするため、短期間に複数を見ることは珍しくありません。
これらのことから、個体の有無より環境条件を見直すほうが再発抑止につながります。
家への侵入を防ぐ環境整備

侵入対策は「湿気を減らす」「隙間をふさぐ」「登れない帯を作る」の三本柱で考えます。
対策領域 | 具体策 | 期待できる効果 |
---|---|---|
湿気管理 | 落ち葉除去・砕石敷き・側溝清掃・鉢の置き場見直し | 好適環境の低下で発生を抑える |
物理封鎖 | サッシや扉下の隙間テープ・通気口の細目ネット | 侵入ルートの遮断 |
昇降阻止 | 養生テープや金属板の帯を塀・階段に貼付 | 壁面の登坂抑制 |
予防帯 | 不快害虫用粒剤を建物外周に帯状散布 | 近接帯域での侵入抑止 |
薬剤の利用は、雨天や家族の動線、ペットの行動を考慮して計画します。
乾いた日に外周へ帯状散布し、そのラインを踏み越えない運用にすると、再散布までの効果が続きやすくなります。
ヤスデが丸くなる理由と対処法を解説|ムカデとの違いも紹介:まとめ
この記事のまとめです。
- 丸くなるのは腹面を守るための素早い防御反応
- 刺激は光や振動や接触で起こりやすく強刺激は避ける
- 体液は刺激臭があり皮膚や目への刺激が懸念される
- 付着時は流水で洗い違和感が残るなら受診を検討
- ムカデは丸くならず咬むため見分けて対応を変える
- 動きや脚配置と体型の違いで識別精度を高められる
- 放置は臭気や侵入増加を招くため早期介入が得策
- 屋外は湿気源の除去と滑面帯の設置で上りを抑える
- 屋内は素手で触らず回収し換気と拭き取りを徹底
- ゴミ袋に集め密閉し日向に置く処理法が案内される
- 焼却や熱湯は臭気拡散の懸念があり推奨されない
- 一匹の出現は環境適性のサインで群れとは限らない
- 予防は湿気管理隙間封鎖昇降阻止の三本柱で考える
- 粒剤の予防帯は外周に帯状で使い説明表示に従う
- ヤスデが丸くなる理解が安全な対処と再発抑止の鍵