鳩を飼うことを検討するとき、まず気になるのは鳩を飼うのは違法かという法的な線引き、そして飼育できる鳩の種類の違いです。
あわせて、初日にそろえるべき鳩の飼育に必要なものや、近所トラブルや衛生面を避けるための鳩の飼育上の注意点も見落とせません。
本記事では、初心者が迷いやすいポイントを法制度と実践の両面から整理し、はじめの一歩をスムーズにするための情報をまとめます。
この記事を読むことで理解できる内容は以下のとおりです。
- 法律上の可否と許可の考え方
- 飼育向きの主な鳩の種類と違い
- 飼育環境と必要な道具の基準
- 入手経路と費用の目安
鳩を飼う前に知るべき基本
鳩を飼う理由
鳩を飼うのは違法か
飼育できる鳩の種類
鳥獣保護法と申請の基礎
感染症リスクと衛生管理
鳩を飼う理由

鳩は帰巣本能が強く、適切な手順で慣らすと放鳥後に鳩舎へ戻る行動が見られます。
この特性はレース鳩のスポーツとして世界的に発展し、血統や育成、訓練の工夫を楽しめるのが魅力です。
室内飼育の観賞目的でも、人に慣れやすい個体を選べばコミュニケーションを取りやすい点が評価されています。
一方で、鳴き声や羽毛、糞による衛生管理は必ず伴います。
目的がレース参加か観賞かで、必要な設備と運用の負担が変わるため、事前に飼育目的を明確にしておくことが、その後の設備計画や費用見積もりの指針になります。
鳩を飼うのは違法か

野生の鳩(キジバトや都市部のドバトなど)を捕獲して飼育することは、鳥獣保護管理法で原則禁止とされています。
環境省等の解説では、無許可での捕獲・飼養は、1年以下の懲役または100万円以下の罰金の対象とされています。
負傷個体の保護や卵の孵化も同法の規制対象に含まれると案内されています。
飼育を検討する場合は、合法的に流通するレース鳩や愛玩・観賞用の鳩を、ペットショップやブリーダー、レース団体経由で入手するのが基本です。
特別な事情で野生個体を扱う必要がある場合は、自治体や環境省の許可が必要とされていますが、期限や条件が付くことが一般的で、長期飼育には向きません。
このため、通常は許可申請ではなく、流通個体の迎え入れを前提に考えます。
飼育できる鳩の種類

国内で一般に飼育されるのは、レース鳩(伝書鳩)や、観賞用に改良された各種の鳩です。
ドバトの祖先に由来する改良品種が中心で、体格がよく帰巣・飛翔能力に優れる個体がレース鳩として扱われます。
観賞用では羽色や体型の多様性が楽しめます。
一方で、キジバトやカラスバト、アオバトなどの在来種は野生鳥であり、原則として飼育対象ではありません。
駅前などで見かけるドバトも、野外個体をそのまま飼うことはできません。
流通個体の中でも、初心者は健康状態の安定した若鳥や、人慣れした成鳥を選ぶと立ち上げが容易になります。
よくある誤解の整理(要点)
誤解しがちな点 | 正しい理解 |
---|---|
野外で懐いた鳩を保護して飼える | 許可なく野生個体を飼養することはできないとされています |
卵を拾って孵せば問題ない | 卵の採取・孵化も規制対象とされています |
鳩はどれも同じ飼い方でよい | レース鳩と観賞用では設備・運用が大きく異なる |
鳥獣保護法と申請の基礎

鳥獣保護管理法の枠組みでは、野生鳥獣の捕獲・飼養は原則禁止で、研究・保護等の特例を除き、個人のペット目的は想定されていないと説明されています。
やむを得ず申請する場合も、許可の可否や期限、飼養施設の基準、報告義務などが課されると案内されています。
実務的には、合法ルート(ショップ、ブリーダー、レース団体)からの譲受が前提です。
レース参加を視野に入れるなら、関連団体への加入や脚環管理、鳩舎の設計基準、訓練のルール整備など、コミュニティの運用に合わせると運営が円滑になります。
感染症リスクと衛生管理

自治体や保健所の資料では、鳩の糞を介したオウム病、サルモネラ症、クリプトコッカス症などの人獣共通感染症リスクが指摘されています。
比率や発生状況は地域や調査によって差がありますが、オウム病クラミジア保有率は一定の幅で報告があるとされています。
サルモネラや真菌症も、乾燥した糞の粉じん吸入が経路になり得ると案内されています。
衛生管理の基本は、毎日の糞清掃と換気、マスク・手袋の着用、飲水と容器のこまめな交換、室内の粉じん対策です。
特に小児や高齢者、免疫が低下している方が同居する家庭では、清掃の頻度を上げ、乾燥する前の除去を心がけることが推奨されています。
以上の点を踏まえると、衛生手順を日課化できる体制づくりが飼育継続の鍵となります。
鳩 飼うための実践ガイド
鳩の飼育に必要なもの
鳩の飼い方
鳩の飼育上の注意点
入手先と価格相場の目安
鳩舎やケージの作り方
鳩の飼育に必要なもの

レース鳩の屋外飼育と、室内中心の観賞飼育では、必要装備と求められる性能が異なります。
共通する前提は、日々の清掃と給餌が滞りなく行えること、そして鳩にとって安全でストレスの少ない環境を整えることです。
初期段階で過不足なく道具をそろえておくと、後からの買い足しや設置変更による負担を抑えられます。
共通して必須なのは、飲水器、餌箱、止まり木、巣皿、糞かき、チリトリ、新聞紙などの敷材、消毒・清掃用品です。
さらに、塩土や焼砂などの鉱物資源、キャリーケース、体調記録用のメモや体重計を加えると、日常管理の精度が高まります。
消耗品はまとめて管理し、交換周期(例:敷材は毎日、消毒は週1〜2回)を決めて運用すると衛生状態を維持しやすくなります。
飲水器は毎日洗いやすい構造で、転倒しにくい重心設計のものが扱いやすく、容量は成鳥2羽で1〜2Lが目安です。
開口部が広すぎると糞や餌が混入しやすいため、首を差し入れて飲める程度の開口設計を選ぶと水質の悪化を抑えられます。
毎日の洗浄を前提に、部品点数が少なく分解しやすい製品が適しています。
餌箱は食べ残しと汚れを分離しやすい形状が望ましく、返し縁や穴開き底で殻や粉を落とせるタイプはメンテナンスが安定します。
容量は一回給餌量と羽数から逆算し、過大容量による滞留を避けます。複数羽での競合を減らすため、給餌口は羽数+1程度の区画を確保すると採食行動が均等化しやすくなります。
止まり木は足指が約2/3かかる太さが基準で、直径20〜25mmの丸木、または角の面取りをした角材が使いやすい選択肢です。
材質は無垢木や竹が一般的で、滑りにくく、清掃しやすい表面仕上げが望まれます。配置は糞が下段に落ちるよう高低差をつけ、餌箱や飲水器の直上は避けて衛生面のトラブルを減らします。
巣皿は通気孔のある陶器や樹脂製が扱いやすく、内径約20〜22cmを目安に選ぶと抱卵時の体勢が安定します。
敷材はわらや紙パルプマットなどを少量ずつ補充し、湿気やダニの温床にならないよう定期交換します。繁殖を予定しない場合でも、休息場所としての巣皿は安心感の付与に役立ちます。
室内飼育では、ケージの底面積と高さがポイントです。
翼を伸ばして方向転換できる幅、止まり木間の十分な間隔、日光と風が入る設置場所を確保します。
単独飼育の最小目安は幅60×奥行60×高さ60cm前後、2羽では少なくとも幅90cm以上を見込み、止まり木の水平距離は30cm以上空けると接触による小競り合いを減らせます。
トレイは引き出し式で、新聞紙やペットシーツを一枚敷くと糞処理の所要時間を短縮できます。
レース鳩や複数羽の飼育は、鳩舎(ロフト)を用意し、換気・採光・防獣・帰巣トラップなどの構造を整えます。
屋外設置では、金網は目合い約12〜13mmの溶接金網を基準に、猫やテンの侵入・イタズラを防ぐための二重扉と頑丈な鍵を備えます。
床材は清掃性の高い耐水合板や金網床に糞受けトレイを組み合わせると、毎日の清掃動線が明確になります。
帰巣トラップは外からのみ入れる構造とし、訓練や回収の効率化に寄与します。
日々の衛生管理は、人の健康保護とも密接に関わります。
オウム病などの人獣共通感染症は、乾燥した糞の粉じん吸入が一因になると案内されており、清掃時のマスクや手袋の使用、十分な換気、湿らせてからの拭き取りが推奨されています。(出典:厚生労働省 オウム病に関するQ&A )
こうした基本対策を日課として組み込むことが、飼育者と周囲の安全確保につながります。
最後に、必要装備を選ぶ際は、清掃のしやすさ、交換部品の入手性、設置後の動線を優先すると運用負荷が抑えられます。
次の表は、用途別の寸法・仕様の目安です。これらを起点に、羽数、設置スペース、飼育目的に合わせて最適化していくと、無理のない環境づくりが進みます。
項目 | 推奨仕様の目安 | 選定のポイント |
---|---|---|
飲水器 | 容量1〜2L(2羽)・分解洗浄可 | 開口部は異物混入を抑える形状 |
餌箱 | 区画数は羽数+1・殻分離構造 | 滞留しない容量と清掃性 |
止まり木 | 直径20〜25mm・滑りにくい材 | 餌水の直上を避け段差配置 |
巣皿 | 内径20〜22cm・通気孔あり | 定期的に敷材交換 |
ケージ | 1羽60×60×60cm以上 | 引き出しトレイで清掃短縮 |
鳩舎 | 二重扉・目合い12〜13mm | 防獣性と換気・採光の両立 |
以上を踏まえ、装備は「安全性」「清掃性」「入手性」の三点で評価し、日常の手入れに無理が生じない組み合わせを選ぶと、健康管理と快適性を長期にわたり維持しやすくなります。
鳩の飼い方

餌は配合した穀類(トウモロコシ、豆類、小粒種子など)を主体に、鉱物飼料(塩土・焼砂)で消化とミネラルを補います。
与える回数は環境や運動量で調整しますが、室内飼育なら1日1回、レース志向や運動量が多い場合は朝夕2回が運用しやすいバランスです。飲水は常時新鮮に保ちます。
日課は、給餌、飲水交換、糞清掃、換気、体調観察です。羽づや、糞の状態、食欲、呼吸音などの変化を記録すると早期の体調管理に役立ちます。
水浴びは週1〜2回を目安に、浅い容器に常温水を張り、寒冷期は時間帯と室温に配慮します。お湯は皮脂を落としすぎるため避けられています。
レース鳩は帰巣本能を定着させるため、鳩舎を基点に段階的な放鳥・回収の手順をとります。観賞中心でも、室内放鳥は誤飲・感電・脱走のリスクが高いため、ケージ内での運動と短時間の管理付き放鳥を基本にします。
要するに、毎日のルーティンを崩さず維持できる設計こそが良好なコンディションに直結します。
鳩の飼育上の注意点

まず、野生個体の捕獲・飼養は行わないことが大前提です。次に、近隣配慮として鳴き声・羽毛・粉じん・臭気を抑える工夫が欠かせません。
換気と採光、こまめな清掃、消臭と乾燥の管理、外敵(猫・テン・猛禽など)を防ぐ構造の採用がポイントです。
衛生面では、糞が乾燥して粉じん化する前に片付け、清掃時に手袋とマスクを用意します。飲水器と餌箱は毎日洗い、ケージや鳩舎は段差や隙間を減らして汚れをたまりにくくします。
保健所や自治体の案内では、人の健康に関わる感染症は「粉じん吸入や接触を避ける」「清掃と換気を徹底する」ことが予防策として示されています。
放し飼いは、脱走・感電・誤飲・近隣飛来による苦情のリスクを高めます。災害時や通院時に備え、キャリーやケージに入る習慣を日頃からつけておく運用が、いざという時の安全確保につながります。
入手先と価格相場の目安

合法的な入手先は、ペットショップ、専門ブリーダー、レース団体の広告や会員ネットワークなどです。
通販は生体の扱い・法令・輸送リスクの観点から店頭引き渡しが一般的で、事前に見学して健康状態や飼養環境を確認します。
価格は用途と血統で開きがあります。観賞用の一般個体は数千円〜数万円、血統の明確なレース鳩は数万円〜数十万円が目安です。
希少な実績血統はさらに高額になることがあります。初期費用は生体代に加え、ケージ・備品・餌・医療費の予備費まで含めて見積もると、トラブル時も慌てません。
初期コストの整理(概算)
項目 | 参考レンジ | 備考 |
---|---|---|
生体(観賞用) | 数千円〜数万円 | 健康保証や性別判定の有無で変動 |
生体(レース鳩) | 数万円〜数十万円 | 血統・実績で幅 |
ケージ/小鳩舎 | 1万〜数万円 | 自作・既製で差 |
備品一式 | 数千円〜1万円台 | 飲水器・餌箱・巣皿・糞かき等 |
餌・塩土・敷材 | 月数千円〜 | 羽数・配合で変動 |
鳩舎やケージの作り方

鳩舎(ロフト)の要は、通風・採光・防獣・清掃性です。
南〜南東向きで日が差し、風が抜ける場所に設け、金網窓で通気を確保します。床はフンカキが引っかからない素材・仕上げにし、段差やビスの出っ張りを抑えます。
外敵の侵入を避けるため、地面からの高さを確保し、出入口には外からだけ入れるトラップを設置します。
室内ケージでは、止まり木の太さと配置、巣皿の固定、飲水器の位置、敷材の交換性が運用の肝です。
止まり木は指が2/3かかる太さで滑りにくい材、巣皿は安定した固定、飲水器は汚れが入らない高さに。ベランダ設置の小型鳩舎では、雨仕舞いの勾配と、降雪地のビニールカバーなど季節対策を加えます。
以上の点を押さえると、健康維持と清掃の省力化が両立し、長期運用がしやすくなります。
鳩を飼う前に知る基本と飼い方ガイド:まとめ
この記事のまとめです。
- 鳩は野生個体の捕獲飼養が原則できないことを理解する
- 目的を観賞かレースかで明確化し設備と運用を決める
- 日々の清掃と衛生管理を継続できる生活動線を設計する
- 近隣配慮の観点から換気と消臭と騒音対策を考える
- 合法な入手経路と健康な個体の確認プロセスを用意する
- 初期費用と毎月のランニングコストを見積もる
- 感染症リスクは保健所や自治体資料に沿って管理する
- 脱走・感電・誤飲を防ぐ室内外の安全対策を整える
- ケージや鳩舎の清掃性と防獣性を設計段階で確保する
- 水浴びや飲水の管理と季節に応じた温度配慮を計画する
- レース志向なら団体加入や脚環管理の準備を進める
- 緊急時に備えキャリーやケージ収容を日常化する
- 食餌は配合穀類と鉱物飼料でバランスを整える
- 家族構成と同居者の健康状態に合わせ運用を見直す
- 鳩を飼う決断は日課を継続できるかで最終確認する
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