ヒグマのパンチ力が2トン級とされる根拠と安全行動の全知識

最近のニュースや特集では、ヒグマが100メートルを7.2秒で走る、走行速度は時速50キロに達する、さらに握力は150キロクラス、パンチ力は2トン相当、日本最強の猛獣といった刺激的な言葉が踊ります。

その一方で、熊スプレーの有効性や、拳銃が効かない現実、ヒグマは火を恐れない可能性など、安全対策に関する情報も飛び交っています。

そうした中で、「ヒグマと人間どっちが強いのか」「ヒグマとトラどっちが強いのか」「ヒグマとライオンでは最強動物ランキング的にどちらが上なのか」といった疑問を持つ方も多いはずです。

単なる最強議論で終わらせるのではなく、物理的なパンチ力の仕組みと人間が取るべき現実的な対策をお伝えしていきます。

この記事では、パンチ力2トンという数字がどこまで妥当なのか、時速50キロで走るヒグマの運動能力とどう結びついているのか、そして熊スプレーや銃器といった防御手段が実際にどの程度ヒグマ対策として役に立つのかを、できる限りわかりやすく整理していきます。

難しい数式よりも、「現場で本当に役に立つかどうか」を重視していますので、アウトドア派の方はもちろん、ニュースを見て不安になっている方も、肩の力を抜いて読み進めていただければと思います。

読み終わる頃には、「ヒグマのパンチ力2トン」というセンセーショナルなフレーズに振り回されるのではなく、自分の頭でリスクを判断し、冷静に備えられるようになるはずです。

この記事を読むことで理解できる内容は以下のとおりです。

  • ヒグマのパンチ力2トンという数字の根拠と限界
  • ヒグマの時速50キロの脚力と骨格が生む破壊力の正体
  • 人間やトラ・ライオンとの強さ比較から見える現実的なリスク
  • 熊スプレーや装備を含むヒグマ遭遇時の具体的な生存戦略
目次

ヒグマのパンチ力は本当に2トンか

まずは、ヒグマのパンチ力2トンというインパクトのある数字がどこから出てきたのか、どの程度現実的なのかを、走力や骨格、握力などの要素と合わせて整理していきます。ここを押さえると、ニュースやSNSで見かける「最強」情報を冷静に見抜けるようになります。噂話と科学的な推定の境界線を意識しながら読み進めてもらえると、数字の意味合いがよりクリアになるはずです。

パンチ力2トンと時速50キロの関係

ヒグマのパンチ力2トンという話は、多くの場合「時速50キロで走る巨体が前足を振り抜いたら」というイメージとセットで語られます。

実際、ヒグマは平地でおよそ時速40〜50キロに達する短距離ダッシュ能力を持ち、人間の全力疾走ではまず逃げ切れません。

これは、体重数百キロの塊にトラック並みの加速力が備わっている、ということでもあります。

物理的に見ると、運動エネルギーは質量と速度の二乗に比例します。

体重300〜400キロ級のヒグマが、肩の大きな筋肉と前足の質量を乗せてスワイプ(薙ぎ払う打撃)を行うと、その瞬間的な運動エネルギーは、人間のパンチとは比較にならない規模になります。

たとえば、有効質量50キロ分が毎秒10〜15メートルの速度で衝突し、それが一瞬(0.05〜0.1秒程度)で止められたと仮定すると、平均的な衝撃力は数万ニュートン、重さに換算して数トン相当になり得ます。

ここで重要なのは、2トンというのは「常に出せる固定値」ではなく、「条件がそろった瞬間最大級のインパクトをイメージした数字」だということです。

ヒグマがのっそり歩いている状態で軽く前足を振っただけで、毎回2トンの力が出ているわけではありません。

あくまで、突進の勢いと体重がきれいに乗り、さらに衝突時間が短くなったときに達しうるオーダーだと考えるのが現実的です。

また、衝撃力は「どれだけ短い距離で止まるか」にも大きく左右されます。分厚い毛皮や筋肉に包まれた体を殴るのと、骨に近い部分を殴るのとでは、同じ力でも伝わるダメージが変わります。

ヒグマのパンチ力2トンという表現は、こうした条件をひとまとめにした「危険度のイメージ」であることを忘れないようにしましょう。

ここで紹介している数値は、実験や観察事例をもとにした物理モデルからのおおまかな推定値です。

個体差や状況によって実際の数値は大きく変動しますので、「必ず2トン出る」「絶対にこれ以下」といった捉え方は危険です。

100メートル7.2秒とヒグマ最強説

一部の報道では、ヒグマが100メートルを約7.2秒で走る可能性があるとも紹介されます。

これは人類最速クラスの短距離選手に迫るタイムで、「日本最強のヒグマ」といったキャッチコピーの根拠の一つになっています。

この数字自体は直接100メートル走を計測したものではなく、観察された最高速度(時速50キロ前後)を100メートルに換算した「理論値」に近いものです。

環境省が知床世界遺産センターで公開している解説でも、ヒグマは「オリンピックの短距離陸上競技選手よりも、はるかに早く走ることができます」と説明されています(出典:環境省 知床世界遺産センター「ヒグマを正しく知ろう」)。

この一文だけでも、私たち人間が走って逃げるという選択肢が、どれほど非現実的かがよく分かるはずです。

もし仮に、ヒグマが直線の100メートルを本当に7秒台で走り切れるとしたら、これは「人間が全力で逃げても数秒で追いつかれる」ことを意味します。

しかも、ヒグマはスタートダッシュも非常に鋭く、短い距離でトップスピードに到達します。

森の中で出会い頭に遭遇した場合、人間が背を向けて走り出しても、姿勢を崩した状態のまま背中に追いつかれてしまうでしょう。

人間の100メートルタイムと比較すると、ヒグマのスプリント性能の怖さがよりイメージしやすくなります。

対象100mタイムの目安備考
一般的な成人男性14〜18秒部活経験なし・趣味レベル
高校陸上選手11〜13秒競技経験あり
世界トップスプリンター9〜10秒五輪決勝クラス
ヒグマ(推定)約7〜8秒時速50キロ前後を換算

この表はあくまで目安ですが、「人間が走って逃げる」という発想がいかに危ういかは見て取れると思います。

大切なのは、ヒグマ最強説を面白半分で語るのではなく、「そもそも追いかけられる状況を作らない」「背中を見せて走らない」という行動原則に落とし込むことです。

ヒグマのパンチの威力と骨格の秘密

パンチ力を語るうえで欠かせないのが、ヒグマ特有の肩の「コブ」と分厚い前肢の骨格です。

肩甲骨の上に盛り上がるハンプには、大量の筋肉が詰まっており、前足を振り上げたり地面を掘り起こしたりする際のエンジンとして働きます。

この肩の隆起は、ツキノワグマや他の多くのクマ類には見られない、ヒグマならではの特徴でもあります。

ヒグマの生活を観察していると、この肩の筋肉は日常的にフル稼働しています。

硬い地面を掘って根を食べたり、雪をかき分けて餌を探したり、倒木を動かしたりといった動作は、すべて前肢にかかる負荷が非常に大きい作業です。

言い換えれば、ヒグマは日々の生活の中で「高負荷トレーニング」を繰り返しており、その結果として肩から前足にかけての筋肉と骨格が驚異的に発達しているのです。

この肩の筋肉が、単に採食のための掘削だけでなく、前足によるスワイプ攻撃にもそのまま転用されていると考えると、パンチ威力のイメージがつかみやすくなります。

短く太い上腕骨と、ねじれに強い前腕の骨格構造は、打撃時にかかる巨大な力を受け止めるための「梁」のような役割を果たしています。

もし人間が同じような負荷を肩関節にかければ、関節や腱を痛めてしまうレベルの動作でも、ヒグマは平然とこなしてしまいます。

爪が生む「局所破壊」の圧力

さらに厄介なのが、鍬のように湾曲した長い爪です。ヒグマの爪は、ネコ科のように収納されるタイプではなく、常に外に出ています。

そのため先端はやや丸まり気味ですが、そのぶん太く頑丈で、打撃時には衝撃が小さな接触面積に集中します。

これはちょうど、鈍いハンマーに尖ったピックを取り付けたような状態とイメージしてもらうと近い感覚です。

同じ力でも、当たる面積が小さければ小さいほど圧力は高くなります。

つまり、パンチが当たると同時に「叩きつけ+引き裂き」がセットで発生するのがヒグマの一撃です。

人間の拳のように「殴るだけ」では終わらず、衣服や筋肉ごと引き裂かれる危険があるため、防具や厚手の服で防ぎ切ることはほぼ不可能と言えます。

実際の獣害例でも、ヒグマに襲われた際に外傷が「打撲」だけで済むケースはほとんどありません。

多くの場合、肩口や背中、頭部に深い裂傷が残り、骨折や内臓損傷を伴います。

これは、パンチのエネルギーがそのまま爪先の狭い範囲に集中し、皮膚や筋肉を開きながら深部にまで到達するためです。

ヒグマの前足は、重機のショベルと油圧カッターを合わせたような性質を持っています。

「叩きつける力」と「引き裂く力」が同時に働くため、受ける側の身体にとっては一瞬で多層的なダメージが蓄積してしまうのです。

握力150キロとパンチ力2トン比較

「ヒグマの握力は150キロ以上」という表現もよく見かけます。

この数字だけでも人間からすれば怪物級ですが、実際にヒグマの握力や掴む力を測定したデータは限定的で、あくまで推定値や間接的な実験結果から導かれた目安です。

例えば、固定されたバーや装置を前足で引っ張らせたときの荷重や、クマがどれだけの重量物を持ち上げられるかといった観察結果から推定が行われています。

ここで意識しておきたいのは、握力150キロ級の「掴む力」と、2トン相当と表現される「パンチの衝撃力」は性質が違うという点です。

握力は、ある程度時間をかけて物体を挟み込む「持続的な力」の指標であり、パンチ力は一瞬で加わる「瞬間的な衝撃」の指標です。

人間でいえば、懸垂バーを握り続ける力と、サンドバッグを殴る力の違いのようなものだと考えてください。

ヒグマの前肢は、岩や倒木を動かすような持続的なパワーと、獲物を叩きつける瞬間的なパンチ力の両方に優れています。

握力150キロ級の指で掴まれたうえに、2トン級と形容される衝撃が乗る、とイメージしてもらうと、その危険性が伝わりやすいかもしれません。

特に、人間が背中や腰を掴まれてしまうと、自力で振りほどくことはほぼ不可能で、そのまま地面に叩きつけられたり、別の方向へ投げ飛ばされたりするリスクが高まります。

また、握力の強さは「逃がさない力」にも直結します。

一度クマに前足で押さえ込まれると、衣服やバックパックごと固定されてしまい、体勢を立て直したり、スプレーやホイッスルに手を伸ばしたりする隙がほとんどありません。

だからこそ、「掴まれる前に距離を取る」「掴まれる状況を作らない」ことが、装備以上に重要だと考えています。

ヒグマの握力については、当サイトの「ヒグマの握力の実態を解説した記事」で、体重や骨格との関係も含めてより詳しく解説しています。

握力の数字がどう算出されているのか、どんな実験が行われているのかを知ることで、「150キロ」という値のイメージがより具体的になるはずです。

ヒグマのパンチ力とムース首折り伝説

北米の狩猟文化の中には、「グリズリーが一撃でムース(ヘラジカ)の首を跳ね飛ばした」というような、ちょっと信じがたい伝説も残っています。

ムースは体重数百キロ、頸椎も非常に頑丈な大型草食獣ですから、物理的に考えると、完全に首を飛ばすのは相当難しいはずです。

それでもこうした話が語り継がれてきたのは、現場のインパクトがそれほど強烈だったからだと考えています。

フィールドの事例や解剖の知見を総合すると、多くの場合は骨が粉砕・脱臼して「内部的に首が折れた状態」になり、皮や筋肉だけでかろうじて繋がっていたものが、誇張された表現として伝わっていると考えるのが妥当です。

つまり、外見上は首が大きく傾いてぶら下がっているように見えたため、「首が飛んだ」「一撃で首を落とした」と表現されたのでしょう。

とはいえ、ムース級の頸椎を一撃で致命的に損傷させるだけの打撃力があることは、逆に現実味のある話でもあります。

頸椎は脊髄の通り道でもあり、ここが砕かれると、四肢を動かす神経が一瞬で遮断されます。

人間や家畜がヒグマのパンチをまともに受けた場合、骨折や内臓損傷は避けられず、運よく命が助かっても重い後遺症が残るリスクが高いと考えてください。

また、「ムースの首折り伝説」は、ヒグマの攻撃が決して「じゃれつき」では済まないことを教えてくれます。

子グマと遊んでいるつもりで近づいた人が、軽く前足で払い除けられただけで大怪我を負った例もあり、ヒグマの「軽い一撃」と人間が感じるダメージの間には、埋めようのないギャップがあります。

ここで紹介した伝承や推定値は、あくまで「ヒグマの潜在能力」をイメージするための材料に過ぎません。

実際の被害状況や危険度は、個体の大きさや性格、季節、出会い方によって大きく変わります。

ヒグマのパンチ力から学ぶ生存術

ここからは、ヒグマのパンチ力と総合的な戦闘力を、人間・トラ・ライオンなど他の強力な動物と比較しながら、「遭遇したときにどう動けば生き残れるか」という実践的な視点に落とし込んでいきます。最強議論を、安全対策に変換していくパートです。「強さ」を知ることは、決してヒグマと戦うためではなく、いかに戦わずに済ませるかを考えるためだと考えてください。

ヒグマと人間どっちが強いかの現実

まず結論から言うと、素手の人間がヒグマに勝つシナリオは現実的には存在しません。

体重、骨格の太さ、筋肉量、爪と牙という武装、どれを取っても人間は桁違いに劣っています。

プロの格闘家であっても同じです。

格闘技のリングは「同じルールと条件で戦う場」ですが、野生のフィールドでは条件そのものがまったく違うからです。

人間のパンチ力は、ヘビー級ボクサーの全力のストレートで数千ニュートン前後とされますが、これはヒグマの前足による軽い一撃と同程度、あるいは劣るレベルにすぎません。

しかも、人間の拳は骨折しやすく、厚い毛皮と脂肪に覆われたヒグマの体に打撃を与えたところで、効いているかどうかさえ怪しいのが実情です。

逆に、ヒグマのパンチを人間が腕でガードしようとすると、その腕の骨が折れてもおかしくないほどの力がかかります。

さらに、ヒグマの頭部と首周りは、分厚い毛皮と脂肪、筋肉に覆われた「天然のヘルメット+頸椎ガード」のような構造になっています。

人間のパンチは、そもそも相手の脳を揺らして気絶させることを前提とした攻撃ですが、ヒグマの頭蓋骨と首の筋肉は、その種の衝撃に非常に強いので、同じ感覚で効くとは期待できません。

たとえ渾身の一撃を顎に入れたとしても、相手は逆上して反撃してくるだけでしょう。

人間の「武器」は頭脳と道具

人間に唯一勝ち目があるとすれば、それは距離と道具と情報を味方につけた場合です。

ヒグマの行動パターンを理解し、遭遇しにくい時間帯・ルートを選び、熊スプレーや適切な装備を整えておくことで、「戦わずにやり過ごす」確率を高めることができます。

具体的には、フンや足跡、掘り返し跡を見つけたら引き返す、視界の悪い藪や沢筋では声や熊鈴で存在を知らせる、食べ物の匂いをテント周りに残さないといった基本行動が、パンチ力2トンの世界に踏み込まないための第一歩です。

大切なのは、「気合や根性ではどうにもならない相手」であることを認めることです。

そのうえで、距離を取る行動選択と、いざというときの最終手段(スプレーや退避場所)を準備することが、もっとも合理的な自衛策になります。

戦うのではなく、出会わない・近づかない・刺激しない、この三つの原則を徹底していきましょう。

ヒグマとトラどっちが強い議論

ネット上では、「ヒグマとトラどっちが強いのか」という議論が盛り上がりがちです。

実際の生態系では、ロシア極東など一部の地域で、ヒグマとアムールトラが同じエリアに生息しており、両者の争いが記録されることもあります。

ハンターや研究者のレポートを読むと、トラが若いクマを仕留めた例もあれば、大型のヒグマがトラを追い払ったり、獲物を奪ったりした例もあり、一方的な優劣はつけにくいのが実情です。

トラはネコ科の中でも最大級の体格と、極めて発達した筋肉を持ち、高速で繰り出される前足の連打と鋭い牙が武器です。

忍び寄って一気に仕留めるという「暗殺者型」のハンターと言えます。

一方、ヒグマはトラよりも重い個体が多く、分厚い脂肪と毛皮、頑丈な骨格によって高い防御力を備えています。

「正面から押し潰すブルドーザー型」のファイターとイメージすると違いが分かりやすいかもしれません。

単純なパンチ力に関して言えば、トラもヒグマも「一発もらったら致命的」というレベルで拮抗していると考えるのが自然です。

ただし、体重と耐久力で優位に立つ大型のオスヒグマは、組み合いになった際にトラを上回るケースも報告されています。

逆に、若いクマや小柄な個体はトラのスピードと戦術の前に倒されることもあり、状況と個体差によって結果は大きく変わります。

いずれにせよ、どちらが「本当に最強か」を決めることよりも、大型肉食獣同士でさえ簡単には決着がつかないレベルの危険生物だという事実を理解し、人間がむやみに近づかないことの方が何倍も重要です。

ヒグマとトラが争うフィールドは、人間にとってはそもそも立ち入るべきではない「レベル外」の世界だと考えてください。

ヒグマとライオン最強動物ランキング

最強動物ランキングの話題になると、ヒグマやホッキョクグマ、ライオン、トラなどが必ずと言っていいほど名前を連ねます。

その中で、ヒグマとライオンを比較するときのポイントは、「防御力」と「打たれ強さ」です。

ライオンはサバンナのハンターとして進化しているため、俊敏さと攻撃力に優れていますが、防御面ではクマ類ほどの厚い脂肪や毛皮を持っていません。

一方、ヒグマは森林や山岳地帯で、掘る・押す・壊すといった行動を日常的にこなすため、前足のパワーと骨格の頑丈さが際立っています。

頭蓋骨も厚く、首周りの筋肉が発達しているため、ライオンの前足や咬みつきによる打撃にも耐えやすい構造になっています。

ライオンの攻撃が「急所を狙う鋭い一撃」であるのに対し、ヒグマは「多少のダメージを受けても前進し続ける鈍重な重機」のような性質を持っています。

私は一対一で真正面からぶつかる状況では、ヒグマのパンチ力と防御力の組み合わせがライオンを上回る可能性が高いと考えています。

もちろん、これはあくまで理論上の話であり、実際にそんな対決が自然界で頻繁に起きるわけではありません。サバンナの王と山の主をリングに上げる必要は、地球上のどこにもないのです。

ヒグマとライオンの詳細な比較については、「ヒグマとライオンの強さを科学比較した記事」で、体重・噛む力・攻撃パターンなどを表形式で整理しています。

より細かく知りたい方はそちらも参照してください。ランキング遊びを卒業して、「どうすれば安全距離を保てるか」という視点で読み進めてもらえると嬉しいです。

ヒグマに遭遇したら熊スプレーは有効か

ヒグマ対策としてよく話題に上るのが、熊スプレー(ベアスプレー)です。

パンチ力2トン級の相手に対して、本当にスプレーで対抗できるのかと不安になる方も多いでしょう。

結論から言うと、正しい距離と姿勢で使えれば、熊スプレーは非常に有効な「最後の切り札」になり得ます

ただし、万能のバリアではなく、「いざというときの最終防衛線」としての位置づけを忘れてはいけません。

熊スプレーは、唐辛子成分(カプサイシン)を霧状に噴射し、ヒグマの目や鼻、口の粘膜に激しい痛みと刺激を与えることで、突進を止めたり方向転換させたりすることを狙った道具です。

パンチ力そのものを弱めるのではなく、「攻撃動作を継続できない状態にする」のが目的です。

スプレーがうまく命中すれば、ヒグマは目を開けていられず、呼吸も苦しくなり、一時的に人間を追うどころではなくなります。

ただし、当然ながらリスクもあります。

風向きが悪ければ自分にかかって視界を失う可能性がありますし、噴射距離を誤れば十分な濃度の霧がヒグマに届きません。

噴射時間も限られているため、連続して長く使いすぎると、肝心な瞬間に中身が空になってしまうこともあり得ます。

熊スプレーは、正しいタイミングと距離で一撃を当てる必要がある「精密な安全装置」だと考えてください。

熊スプレーと銃器の現実的な比較

現場の実感としては、至近距離での瞬間的な対応力という点で、熊スプレーは小口径の拳銃よりも頼りになります。

拳銃は急に突進してくるヒグマの急所に正確に命中させる必要があるうえ、弾が貫通して流れ弾になれば、周囲の人や建物にとって大きなリスクになるからです。

そもそも日本では一般登山者が銃器を携行すること自体が法的に認められていません。

熊スプレーの要点は、すぐ取り出せる位置に携行すること、風上に立って使うこと、射程距離と噴射時間を事前に把握しておくことの三つです。

ザックの奥にしまい込んでいたのでは、いざというときにまず間に合いません。

ホルスターで胸や腰に装着し、立ったまま片手で抜いて噴射できる状態を作っておくことが、実戦での生存率を大きく左右します。

熊スプレーと銃器の具体的なメリット・デメリットについては、「ヒグマには拳銃が効かない現実から学ぶ撃退方法」でも詳しく解説しています。

法令や取り扱いには地域差がありますので、必ずお住まいの地域のルールと公式情報も確認してください。

熊スプレーや銃器の使用に関する情報は、法令や製品仕様の変更によって状況が変わる可能性があります。

ヒグマのパンチ力まとめと対策

最後に、ヒグマのパンチ力に関するポイントと、私たちが取るべき対策を整理しておきましょう。

パンチ力2トンという表現はややセンセーショナルではありますが、体重数百キロ、時速50キロで走り、握力150キロクラスともされるヒグマの実力を考えると、「一撃を受ければ致命的」という現実をうまく言い表したフレーズでもあります。

数字に多少の誇張や幅があったとしても、「人間の常識を超えた破壊力を持つ相手」であることは揺るぎません。

重要なのは、「ヒグマのパンチ力を正しく恐れること」と「その恐怖で行動が固まらないよう、事前に準備しておくこと」です。

遭遇を避けるためのルート選びや時間帯の工夫、食べ物や匂い物の管理、熊鈴や声出しによる存在アピール、そして熊スプレーなどの装備は、どれか一つではなく組み合わせてこそ効果を発揮します。

また、ヒグマと人間どっちが強いのか、トラやライオンより強いのかといった最強議論は、エンタメとしては面白い一方で、現場の安全には直接つながりません。

パンチ力を含むヒグマの総合的な戦闘力は、人間が正面から勝負できるレベルではない、と割り切るところから安全対策が始まります。

ヒグマの強さを知ることは、「勝てるかどうか」を測るためではなく、「どこまで距離を取るべきか」を判断するための材料に過ぎません。

伝えたい結論は、次の三つです。
1. ヒグマのパンチ力は条件しだいで2トンクラスになり得るが、これは瞬間最大級の衝撃をイメージした目安値であること
2. 素手の人間がヒグマに勝つことは現実的ではなく、遭遇回避と距離確保こそ最大の防御であること
3. 熊スプレーをはじめとする装備と行動ルールを組み合わせることで、リスクを現実的なレベルまで下げることは十分可能であること

本記事の内容は、現時点で得られている一般的な知見やフィールド経験をもとにまとめたものであり、すべての状況に当てはまるとは限りません。

正確な情報や最新の注意喚起は、必ず自治体や専門機関などの公式サイトをご確認ください。

また、ヒグマが頻繁に出没する地域での行動や装備の選定について不安がある場合は、山岳ガイドや地元の猟友会など、専門家にも遠慮なく相談することを強くおすすめします。

最終的な判断は、現場の状況をよく理解したうえで、専門家と相談しながら行い、ご自身と同行者の安全を最優先に考えてください。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

名前(愛称): クジョー博士
本名(設定): 九条 まどか(くじょう まどか)

年齢: 永遠の39歳(※本人談)
職業: 害虫・害獣・害鳥対策の専門家/駆除研究所所長
肩書き:「退治の伝道師」

出身地:日本のどこかの山あい(虫と共に育つ)

経歴:昆虫学・動物生態学を学び、野外調査に20年以上従事
世界中の害虫・害獣の被害と対策法を研究
現在は「虫退治、はじめました。」の管理人として情報発信中

性格:知識豊富で冷静沈着
でもちょっと天然ボケな一面もあり、読者のコメントにめっちゃ喜ぶ
虫にも情がわくタイプだけど、必要な時はビシッと退治

口ぐせ:「彼らにも彼らの事情があるけど、こっちの生活も大事よね」
「退治は愛、でも徹底」

趣味:虫めがね集め

風呂上がりの虫チェック(職業病)

愛用グッズ:特注のマルチ退治ベルト(スプレー、忌避剤、ペンライト内蔵)

ペットのヤモリ「ヤモ太」

目次