北海道遠征やツーリング、登山の計画を立てる時に、熊スプレーをどうやってフェリーで運べばいいのか、頭を悩ませている方はとても多いです。
熊スプレーをフェリーに持ち込みたい、車に積んだままフェリーに乗船してよいのか、そもそも熊スプレーは危険物として扱われているのかなど、疑問が次から次へと出てくると思います。
インターネット上で調べても情報が断片的で、「このフェリー会社はどうなのか」「自分のケースは当てはまるのか」と、かえって混乱してしまったという声も少なくありません。
特に、北海道行きのフェリー利用者や北海道ツーリングを計画しているライダーの方からは、熊スプレーを郵送して北海道で受け取るべきか、現地でレンタルすべきか、クマスプレーを飛行機やフェリーで運べるのかといった相談をよく受けます。
インターネット上でも熊スプレーフェリー持ち込みや熊スプレーフェリー車載可否といったキーワードが飛び交い、何が本当なのか分かりにくい状況です。
加えて、X(旧Twitter)や動画サイトなどでは、体験談ベースで語られた情報が拡散し、法的なルールと個人の「なんとかなった話」がごちゃ混ぜに伝わっているのが現状です。
この記事では、熊スプレーとフェリー輸送に関する法律的な位置づけから、フェリー各社の運用実態、そして現実的な代替手段であるレンタルや現地調達、郵送の使い分けまで整理していきます。
読み終えるころには、「フェリーではどうするのが一番安全で現実的か」がはっきり見えるようになるはずです。
単なる「ダメ・OK」の一覧ではなく、なぜそうなるのかという背景まで理解していただくことで、今後ルールが変わったときにも自分で判断できる力を身につけてもらうことを目指しています。
もちろん、ここで扱う情報はあくまで一般的な目安であり、細かいルールはフェリー会社や時期によって変わることがあります。
ですので、最終的には必ず各フェリー会社や運送事業者の公式情報を確認し、迷った時には専門家や窓口に相談しながら安全第一で計画を立てていきましょう。
この記事を読むことで理解できる内容は以下のとおりです。
- 熊スプレーがフェリーで危険物扱いになる理由
- フェリー各社の熊スプレー持ち込み規制の全体像
- 北海道での熊スプレーレンタル・現地調達の具体的な手順
- 郵送・廃棄を含めた現実的な熊スプレー運用プラン
熊スプレーとフェリー輸送規制の背景と問題点
まずは、なぜ熊スプレーがフェリーでこれほど厳しく制限されるのか、その根っこにある法律と安全性の考え方を整理していきます。なんとなく「危険物だからダメ」と片付けてしまうと、一見グレーに見えるケースで判断を誤りやすくなるので、ここでしっかり土台を固めておきましょう。法律・約款・現場運用の3つのレイヤーがどう絡み合っているのかを理解すると、「なぜ自分の熊スプレーはNGなのか」が具体的に見えてきます。
北海道航路で熊スプレー規制が必要な理由

北海道航路のフェリーは、ツーリングライダーや登山者が多く利用するため、熊スプレーを持って行きたいというニーズは年々高まっています。
一方で、フェリーというのは陸上の駐車場とは違い、逃げ場のない「浮かぶ閉鎖空間」です。
そこで起きる火災やガス漏れ、化学物質の拡散は、少しのトラブルでも一気に大事故に直結します。
フェリー会社や行政は、この「逃げ場がない」という前提に立って、陸上よりも一段厳しい安全基準を設定しています。
フェリーが抱える環境的な制約
船内の構造をイメージしてみてください。
車両甲板は金属で囲まれた広い箱のような空間で、換気はされているものの、完全な屋外とは違います。
夏場には、エンジンや日射の影響も加わり、車内温度は想像以上に高くなります。
その中に高圧ガス缶である熊スプレーを何十本も積んだ車両が並ぶ状況を考えると、少しのトラブルが連鎖して大きな事故につながるリスクは簡単に想像できます。
客室側でも事情は似ています。
空調で快適な温度が保たれているように見えても、実態としては「同じ空気を循環させている閉鎖空間」です。
そこで熊スプレーが誤噴射された場合、ミスト化したカプサイシンは、空調の流れに乗って一気に拡散し、離れた場所の乗客・乗員にも影響を及ぼします。
フェリー会社が「客室内への高濃度刺激物の持ち込み」に慎重になるのは当然といえるでしょう。
利用者の増加とリスクの増幅
最近は、SNSや動画をきっかけに北海道ツーリングや長距離フェリー旅の人気が高まっています。
それ自体はとても良いことですが、利用者が増えるということは、熊スプレーのような危険物の持ち込みリスクも比例して増えるということです。
ごく少数の乗客だけが熊スプレーを持っている状況と、半分近くのライダーが熊スプレーを積んでいる状況とでは、フェリー側が想定しなければならない最悪シナリオのスケールがまったく違ってきます。
行政・フェリー会社としては、「一人ひとりの良識に期待する」だけでは安全を守れません。
そのため、「熊スプレーは一律禁止」といったシンプルで分かりやすいルールにまとめることで、事故の芽をできるだけ早い段階で摘み取ろうとしています。
これは、個々の利用者にとっては不便に感じられることもありますが、全体としての安全を優先した結果でもあります。
なお、北海道のクマそのもののリスクや行動特性については、ヒグマのパンチ力と安全行動をまとめた解説も合わせて読んでおくと、現地の危険度を立体的にイメージしやすくなります。
ヒグマのパンチ力が2トン級とされる根拠と安全行動の全知識では、熊スプレーの位置づけも含めて整理しています。
危険物船舶運送規則と熊スプレーの位置づけ

船での危険物輸送は、船舶安全法とそれに基づく危険物船舶運送および貯蔵規則といった法律・規則のネットワークで厳格に管理されています。
熊スプレーは、この枠組みの中で「高圧ガス容器」「可燃性物質」「有害性物質」といった複数のカテゴリにまたがる存在として扱われます。
ここを理解することで、「なぜ自分の使いたい熊スプレーが危険物扱いになるのか」を理屈として説明できるようになります。
日本では、国土交通省が国際海上危険物規程(IMDGコード)などの国際基準を踏まえつつ、船舶安全法に基づく危険物船舶運送及び貯蔵規則(いわゆる危規則)を整備し、容器の強度や表示、積載方法などを詳細に定めています。(出典:国土交通省海事局「危険物の海上運送等に係る安全対策」)
この枠組みの中で、エアゾール缶やスプレー缶は「エアゾールとして危険物に該当する」と明示されており、熊スプレーも原則としてこの扱いから逃れることはできません。
高圧ガス容器としての熊スプレー
まず、高圧ガス容器としての側面です。
熊スプレーの缶は、普通の整髪料スプレーなどより高めの圧力がかかっていることが多く、温度上昇や衝撃で缶が破裂するリスクがあります。
仮に缶の品質基準を満たしていたとしても、想定以上の高温や長時間の振動、荷崩れによる強い衝撃などが重なれば、破裂リスクはゼロにはなりません。
車両甲板のように高温になりやすく、かつ人の目が届かない場所では、このリスクへの対処が非常に難しいのです。
危規則や関連する告示では、「高圧ガス容器は適切な検査・表示・保管が行われていること」を前提に輸送を認める仕組みが整えられています。
しかし、一般の登山者やツーリングライダーが持ち込む熊スプレーは、その一本一本について詳細な検査や申告を行うことは現実的ではなく、結果として「旅客フェリーには積載させない」という運用が選択されやすくなります。
可燃性・有害性物質としての熊スプレー
次に、可燃性物質としての側面です。噴射剤や内容物が可燃性であれば、漏れ出したガスに火花が加わるだけで車両火災・船内火災に発展する可能性があります。
洋上火災は消火も避難も陸上とは比べ物にならない難易度になるため、フェリー側は「火種になり得るもの」を極力持ち込ませないという姿勢を徹底します。
エンジンルームや給油設備付近でガスが滞留した場合の影響は計り知れず、たった一本のスプレー缶が引き金になる可能性もゼロとは言えません。
さらに、カプサイシンなどの刺激物質は、有害性物質としても問題になります。
船の空調や換気システムは、ある程度閉じた空間の空気を循環させる構造になっていることが多く、一度広い範囲に拡散してしまうと、短時間で多数の乗客・乗員に影響が及びます。
そのため、規則上も運用上も、熊スプレーは「危険物の塊」とみなされやすいのです。
ここで触れた法律・規則の分類は、あくまで一般的な整理です。実際の運用や細かな分類は、国土交通省や各地方運輸局、フェリー会社ごとに告知されている最新のルールを必ず確認してください。
正確な情報は各社や行政機関の公式サイトをご確認いただき、最終的な判断は専門家や窓口担当者にご相談ください。
フェリー各社の約款での熊スプレー禁止状況

では、実際のフェリー会社は熊スプレーをどう扱っているでしょうか。
多くの北海道航路のフェリー会社は、運送約款や「持ち込み禁止品リスト」の中で、ガスボンベ・燃料携行缶・火薬類・毒物などを具体的に禁止しています。
熊スプレーは名前こそ明記されていないことが多いものの、これらのカテゴリにすっぽり含まれてしまいます。
約款は「その会社のルールブック」
フェリー会社の約款は、単なる注意書きではなく、その会社が利用者と結ぶ「契約」の一部です。
そこに「高圧ガス容器や可燃性ガスは持ち込み禁止」と書かれている場合、それに違反して熊スプレーを持ち込めば、契約違反として乗船拒否や荷物の没収などの対応を受ける可能性があります。
たとえ熊スプレーという言葉が出てこなくても、危険物の定義に合致しているかどうかが判断軸になります。
たとえば、「ガスボンベ等の高圧ガス容器は持ち込みできません」「車両に積んだ状態でも高圧ガス・燃料携行缶は不可です」といった記述がある場合、熊スプレー缶はほぼ確実にこの中に含まれます。
「手荷物として持ち込まなければ大丈夫」「車に積んでおけば問題ない」と考えるのは、非常に危険な誤解です。
「船長の判断でOKになる」ことはあるか
一部の案内では「危険物の中でも一定量以下なら船長の許可で携行できる」旨が書かれていることがありますが、これは主に医療用酸素ボンベや、健康維持に必要な特別な機器などを想定した例外です。
レジャー目的の熊スプレーがこの枠に入ることは、現実的にはほとんどありません。
なぜなら、熊スプレーは船内で必要とされる道具ではなく、メリットよりもリスクの方が圧倒的に大きいからです。
仮に「船長の判断」に委ねられるとしても、その判断は安全最優先でなされます。
熊スプレー1本を許可することで、他の乗客からの問い合わせや、運航会社内部での説明責任が生まれます。
そうした全体のコストを考えれば、「一律禁止」にしてしまったほうが合理的だと判断されるのは自然な流れです。
フェリー会社の約款や案内文に熊スプレーという単語が出てこないからといって、OKとは限りません。
高圧ガス容器・可燃性ガス・毒物といった禁止カテゴリーにどう当てはまるかという視点で、規約を読み解くことが重要です。
熊スプレーによる船内化学リスクと安全性の懸念

熊スプレーは、ヒグマやツキノワグマの鼻先に向けて短時間噴射することを前提に設計されています。
屋外でクマに向かって使うぶんには、風向きに気を付ければ人への影響をある程度コントロールできますが、船内では事情がまったく違います。
ここでは、熊スプレーが「化学兵器的な側面」を持ってしまう理由を整理しておきましょう。
閉鎖空間でのカプサイシンの挙動
熊スプレーの主成分であるカプサイシンは、非常に強い神経刺激作用を持ちます。
噴射された瞬間は霧状の微細な粒子となり、空気の流れに乗って周囲に広がります。
屋外なら数十秒〜数分で拡散し、濃度も下がっていきますが、船内の客室や通路のような閉鎖空間では、壁・天井に反射しながら長時間漂うことがあります。
その結果、直接噴射を浴びていない人でも、「目が開けられない」「咳が止まらない」「喉が焼けるように痛い」といった症状に襲われる可能性があります。
小さな子どもや高齢者、呼吸器系に持病のある人にとっては、単なる不快感では済まない事態に発展することも考えられます。
操船への影響とパニックの連鎖
さらに問題なのは、カプサイシンミストが空調ダクトを通じて操舵室に入り込んだ場合です。
操舵室で視界が奪われる、咳き込みが止まらないといった状況になれば、フェリーの安全運航そのものが危うくなります。
ほんの数分間でも、海上での操船に支障が出ることは看過できないリスクです。
また、船内で化学物質によるトラブルが発生すると、乗客の間に「何か爆発したのではないか」「毒ガスが撒かれたのではないか」といった不安が一気に広がります。
パニック状態の人が増えれば、避難誘導も難しくなり、二次災害を引き起こす可能性もあります。
熊スプレーは、クマ相手には頼りになる道具ですが、船内では「大量の人を同時に行動不能にする危険物」となってしまうのです。
このような視点から見ると、フェリー会社が熊スプレーに対して過敏なくらい厳しいスタンスを取るのは、決して大げさではなく、合理的なリスク管理といえます。
熊スプレー持ち込み禁止と法的ペナルティ

「見つかったら没収されるだけ」と軽く考えて、こっそり熊スプレーを持ち込もうとする人も残念ながらゼロではありません。
しかし、危険物の無申告持ち込みは、場合によっては罰金や懲役の対象になる、れっきとした違法行為になる可能性があります。
ここでは、そのリスクをもう少し具体的にイメージしておきましょう。
無申告・虚偽申告というリスク
船舶安全法や関連規則では、危険物を船に積む際には、適切な申告や明細書の提出が義務付けられており、これに違反すると罰金が科される場合があります。
たとえば、「危険物は積んでいない」と書きながら、実際には熊スプレーを車内に積んでフェリーに乗船した場合、無申告または虚偽申告とみなされる可能性があります。
また、乗船前のチェックでスタッフから「危険物は積んでいませんか?」と聞かれた際に、熊スプレーの存在を知りながら黙っているのも望ましくありません。
たとえ本人に悪意がなかったとしても、結果的に法令違反となり、状況によっては警察への通報や事情聴取につながることも考えられます。
フェリー会社側の責任と対応
さらに、フェリー会社側にも厳しい責任があり、危険物の管理や検査を怠ったまま航行していることが発覚すれば、高額な罰金や行政処分を受ける可能性があります。
そのため、現場スタッフは「ちょっとくらいなら」と見逃すことはできませんし、あやしい荷物にはかなり神経をとがらせています。
荷物検査や車両チェックで熊スプレーが見つかった場合、基本的には「没収」か「乗船前に持ち主側で処分」「熊スプレーを降ろしてから再度チェック」といった対応がとられます。
しかし、状況によってはその場で乗船を断られることもあり、旅程が大きく狂ってしまうリスクもあります。
熊スプレーを隠して持ち込むことは、「バレなければラッキー」ではなく、フェリー全体を危険にさらす行為です。
ここで紹介した罰則は一例に過ぎず、実際の適用は状況により異なります。最新の法令や各社の規約は必ず公式情報で確認し、最終的な判断は法律や海事に詳しい専門家にご相談ください。
熊スプレーとフェリー規制への現実的な対策
ここまでで、「フェリーに熊スプレーを持ち込むのは、法律面でも安全面でもかなり無理筋」であることが見えてきたと思います。では、北海道やクマの多い地域に遠征したい人はどうすればいいのか。ここからは、レンタル・現地購入・郵送など、現実的な選択肢を整理しながら、具体的な動き方を一緒に考えていきましょう。大切なのは、「クマのリスク」と「海上輸送のリスク」を両立させる視点です。
熊スプレー規制に対応するレンタルサービスの普及

フェリーや飛行機で熊スプレーを運べないという問題に対して、近年もっとも現実的な解決策として広がっているのが、現地でのレンタルサービスです。
必要なときにだけ借りて、帰りは返却してしまうというスタイルなら、フェリーでの持ち運び問題そのものを回避できます。
これは、登山靴やテントなどを現地レンタルするスタイルが広まりつつある流れとも自然にマッチしています。
レンタルサービスが生まれた背景
以前は、「熊スプレーは自分で買って持ち歩くもの」という発想が主流でした。
しかし、飛行機・フェリーの危険物規制が徹底されるにつれて、「買ったはいいが遠征には持って行けない」「帰りのフェリーで没収されてしまった」といった声が増えました。
その結果、現地のアウトドアショップやレンタル業者が、「それなら最初から現地で貸し出そう」と考えたわけです。
レンタルサービス側にとっても、熊スプレーは単価の高い商材であり、適切に管理すれば複数回の貸し出しによってビジネスとして成り立ちます。
利用者にとっては、毎回購入するよりも経済的で、帰りの輸送も気にしなくて済むというメリットがあります。
こうして、需要と供給のバランスがうまく噛み合い、レンタルサービスが一気に広がっていきました。
レンタル品の品質と安全性
レンタルサービスを提供する側は、熊スプレーの品質管理にもかなり気を配っています。
使用期限を過ぎた製品はレンタル対象から外す、一定期間ごとに重量を測定して内容量を確認する、外観チェックでサビや変形がないかを確認するといったプロセスが組み込まれていることが多いです。
これにより、利用者が「ちゃんと噴射されるのか」「古くて効かないのではないか」といった不安を抱えずに済みます。
私自身の経験から言っても、自宅で数年放置していた熊スプレーを持って山に入るより、レンタル業者が管理している新しめのスプレーを借りるほうが、はるかに安心感があります。
フェリーへの持ち込み問題を回避しつつ、装備としての信頼性も高められるのが、レンタルの大きな魅力です。
熊スプレーをフェリーに積めない時代の標準解は、「移動手段には載せない、現地で借りる」という発想の転換です。
所有から利用へのシフトが、安全とコストの両面で理にかなっています。
北海道到着後のレンタル・現地調達の流れ

実際に北海道遠征をする場合を想定して、熊スプレーをどう確保するか、典型的な流れをイメージしてみましょう。
ここでは、レンタカー+フェリーや飛行機で現地入りするケースを例にします。
事前準備から返却までの動線をイメージしておくと、当日のストレスが大きく減ります。
出発前の準備ステップ
まず、旅程が決まった段階で、熊スプレーレンタルサービスを提供している業者やショップを調べ、日程と受け取り場所を予約します。
新千歳空港やフェリーターミナル周辺のショップ、あるいは宿泊予定のホテルに配送してもらう形が一般的です。
人気シーズン(お盆・秋の紅葉シーズンなど)は在庫が限られることもあるので、早めの予約が安心です。
予約時には、「使用予定エリア」「日程」「人数」などを伝えておくと、ショップ側からも適切な本数やモデルの提案を受けやすくなります。
また、初めて熊スプレーを使う人は、「使い方のレクチャーをお願いしたい」と一言添えておくと、受け取りの際に丁寧な説明を受けられることが多いです。
現地到着後〜山入りまで
現地到着後は、予約した場所で本人確認を済ませ、使用方法の説明を受けたうえで熊スプレーを受け取ります。
そのままレンタカーに積んで山へ向かう場合は、直射日光を避けた場所に保管し、車内温度が上がりすぎないようこまめな換気や日除けを心がけてください。
ケースやホルスター付きで受け取れるサービスも多く、ベルトに装着してすぐに使える状態にしておくと安心です。
知床や大雪山など、クマ出没リスクの高いエリアでは、ビジターセンターや登山口近くの施設で当日レンタルを行っていることもあります。
ただし、在庫が限られていたり、閉館時間が早かったりすることも多いので、「確実に持ちたい人は事前予約」を基本としたほうが安心です。
天候の急変などで予定が変わる可能性もあるので、予約時にキャンセルポリシーも確認しておきましょう。
ツキノワグマとの距離感や安全行動を整理しておきたい方は、同サイトのツキノワグマの倒し方と熊撃退スプレー実践生存戦略講座入門も合わせてチェックしておくと、現地での立ち振る舞いが具体的にイメージしやすくなります。
レンタルと現地購入のコスト比較とメリット・デメリット

「レンタルは便利そうだけど、何度も山に行くなら買ったほうが得なのでは?」という声もよく聞きます。
そこで、所有(現地購入)とレンタルをざっくり比較してみましょう。金額はあくまで一般的な目安ですが、判断の参考にはなるはずです。コストだけでなく、「精神的なラクさ」も重要な判断材料です。
| 項目 | 現地購入(所有) | レンタル |
|---|---|---|
| 初期費用の目安 | 1本あたり数千円〜1万円超 | 1回の遠征あたり数千円 |
| フェリー・飛行機輸送 | 原則不可、帰路で毎回問題に | 移動時は所持しないので問題なし |
| 保管・期限管理 | 自宅で温度管理と使用期限の管理が必要 | 業者側が一括管理 |
| 廃棄の手間 | ガス抜き・自治体ルールに従った処理が必要 | 返却するだけで完了 |
| 複数回の利用 | 同じ地域に毎年通う場合は有利なことも | 年1回程度ならコスパ良好 |
「所有」が向いている人・「レンタル」が向いている人
所有のメリットは、「いつでも自分の装備として使える」ことですが、フェリー・飛行機に載せられない以上、長距離遠征ではどうしても限界があります。
車で本州の山をメインに登る人であれば所有も選択肢になりますが、北海道や遠方への遠征が多い人は、レンタル主体に切り替えたほうが結果的にストレスが少なくなるケースが多いと感じています。
また、熊スプレーには使用期限があり、ガス圧や内容物の劣化を考えると、数年おきの買い替えが望ましいとされています。
実際にはほとんど使わないまま期限切れになり、廃棄に悩むパターンも多いので、「頻繁に山に入るプロ以外は、レンタルを基本にする」くらいの割り切りでも良いと思います。
逆に、クマの多いエリアに住んでいて通年で山に入る人や、調査・撮影などで熊スプレーを常備したい人は、所有+現地保管(自宅から遠征しない)というスタイルが現実的です。
熊スプレー返却・廃棄の手続きと注意点

レンタルを利用する場合でも、現地購入する場合でも、最後に必ず向き合わなければならないのが返却・廃棄の問題です。
フェリー乗り場に着いてから「これ、どうしよう?」と悩み始めると、時間的にも精神的にもかなり追い詰められます。ここでは、旅程に組み込みやすい返却・廃棄の考え方をまとめておきます。
レンタル品の返却をスムーズに行うコツ
レンタルの場合は、ショップに直接返却するか、宅配便・ゆうパックなどで指定の住所に送る形が一般的です。重要なのは、フェリーに乗る前までに手放しておくことです。
港の近くにコンビニや営業所がある場合は、乗船前に立ち寄って発送を済ませてしまいましょう。
フェリー乗り場の近くに郵便局があるケースも多いので、営業時間を事前に調べておくと安心です。
また、返却時には「誤噴射していないか」「落下などの衝撃を与えていないか」といった情報をショップに伝えると、次の利用者の安全にもつながります。
重量チェックや外観チェックはショップ側が行いますが、利用者側からの情報も重要な手がかりになります。
現地購入した熊スプレーの廃棄問題
現地購入した場合の廃棄は、もっと厄介です。
メーカー推奨の方法では、水を張ったバケツの中でガス抜きを行い、内容物が飛散しないよう工夫しながら缶に穴を開ける、といった手順が紹介されていますが、これは自宅や作業場のような環境を前提にした話です。
フェリーターミナルの駐車場で同じことをやるのは、現実的にも安全面でもおすすめできません。
そのため、現地購入を検討するなら、購入した店で使用後の引き取りサービスや廃棄サポートを行っているかどうかを事前に確認しておくことを強くおすすめします。
引き取りに対応していない場合は、レンタルに切り替えたほうがトラブルを避けやすいです。
また、自治体によっては危険物の持ち込みを受け付けるクリーンセンターや収集日が設けられている場合もあるため、長期滞在の場合はその活用も検討できます。
熊スプレーの廃棄方法や宅配便での取り扱いルールは、自治体や運送会社、製品ごとに異なる場合があります。
ここで紹介した手順は一般的な目安に過ぎませんので、正確な情報は各メーカーや自治体、運送会社の公式案内を必ずご確認ください。
最終的な判断に迷う場合は、地元の環境担当部署や専門業者に相談するのが安全です。
熊スプレーとフェリーを避けるための旅行者向け安全対策まとめ

最後に、熊スプレーとフェリーをめぐる悩みを、旅行者目線で整理し直してみましょう。
大前提として、フェリーに熊スプレーを持ち込むのは、法律面でも安全面でも原則として非常に難しい、ということをまず受け入れる必要があります。
「どうにか持ち込む方法」を探す発想から、「持ち込まずに済む計画を立てる」発想へ切り替えることが、賢い第一歩です。
具体的には、北海道遠征やクマの多い地域への旅を計画するときには、次のような流れを意識してみてください。
- 自宅の熊スプレーをフェリーに載せようとしない(自家用車に積んだまま乗船するのも含めて避ける)
- 現地のレンタルサービスやアウトドアショップを事前にリサーチし、早めに予約を入れる
- 受け取り場所(空港・フェリーターミナル・ホテルなど)と返却方法(店頭・宅配便)を旅程に組み込んでおく
- クマとの遭遇リスクを下げる行動(行動時間・ルート・音による警戒など)を徹底する
また、熊スプレーはあくまで「最後の切り札」であり、クマ対策のすべてではありません。
クマの生息域や行動パターン、遭遇時の行動マニュアルについては、同サイトの北海道にツキノワグマがいない理由を地質と進化から徹底解説なども参考にしながら、地域ごとの事情をしっかり押さえておくと良いでしょう。
熊スプレーを使わずに済むような行動計画を立てることが、最も安全で、クマにとっても人にとっても優しい生き方につながります。
最後に、もう一度だけ大事なことを強調しておきます。
熊スプレーとフェリー輸送に関するルールや運用は、社会情勢や事故の発生状況によって変わる可能性があります。
この記事の内容はあくまで一般的な目安としてとらえていただき、正確な情報は必ず各フェリー会社・行政機関・メーカーの公式サイトで確認し、最終的な判断は専門家や関係機関に相談したうえで行ってください。
クマも人間も、お互いの生活圏を尊重しながら、安全に共存していくためには、道具の使い方だけでなく、ルールとの付き合い方もとても重要です。
フェリーでの移動も、山での時間も、どちらも安心して楽しめるように、事前の準備と正しい知識で武装していきましょう。
