もぐらは縁起悪いというのは本当か？吉凶と被害と対策を徹底解説

もぐらが縁起悪いと感じる背景には、もぐらは何の象徴かという文化的な解釈や、日本でのもぐらの吉凶の位置づけ、さらには海外で語られるもぐらの象徴的意味が混ざり合っています。

地域の迷信や風習でのもぐらの扱われ方も影響し、庭で土が盛り上がる出来事が暮らしの不安につながりがちです。

実際には、もぐらが庭にいる影響と生活への関係は一様ではなく、もぐらは駆除すべきかという問いには、農業や庭づくりにおけるもぐらの役割や、害獣としての被害とその対策方法、そしてもぐらが与える自然界への意外な恩恵を踏まえた判断が欠かせません。

本記事では、信仰や縁起の話と、生態や法制度、実用的な対策の双方から、落ち着いて考える材料を整理します。

この記事を読むことで理解できる内容は以下のとおりです。

もぐらが縁起悪いとされる理由とは

もぐらは何の象徴？文化的な解釈

もぐらは地中で暮らす生態的な特徴から、古来より「見えない領域を探る存在」として象徴的に解釈されてきました。暗闇の中を嗅覚や触覚を頼りに進む姿は、人間にとって「直感」「洞察」「忍耐」の象徴とされることが少なくありません。心理学的にも、視覚に頼らずに進む姿は「無意識の探求」を表す比喩として言及されることがあります。

一方、農耕社会ではもぐらの掘削行動が人間の暮らしに直接影響を与えてきました。地中を掘り進める習性が畑や水田の構造を損ない、水が漏れる原因となった地域では、不吉の兆候と結び付けられることもあります。こうした背景は「縁起悪い」とされる文化的解釈を生み出す要因となりました。

ただし、象徴の意味合いは一様ではありません。地域や時代によって「大地を耕す力の象徴」として肯定的に捉えられることもあれば、「農作物を荒らす害獣」として否定的に受け止められることもあります。したがって、縁起の受け止め方を理解するには、その社会の信仰や農業形態といった生活環境を背景として考えることが欠かせません。

日本でのもぐらの吉凶の位置づけ

日本において、もぐらの評価は地域ごとに大きく異なってきました。豊かな土壌の証として歓迎される地域もあれば、田畑に被害を与える存在として忌避される地域も存在します。特に稲作文化が根付いた地域では、水田の畔や水路に穴を開けて水が漏れる被害が直接収穫量の減少につながるため、もぐらが「縁起悪い」とされる傾向が強まりました。

一方で、古くからの民間伝承には、もぐらを「土地の神の使い」として敬う要素も見られます。農業における「大地の豊穣」の象徴として扱われることもあり、吉凶の判断は必ずしも一方向ではありません。つまり、もぐらに対する評価は出来事の善悪そのものではなく、地域社会の生業や価値観に基づき形成されてきたといえるのです。

また、現代の農業研究では、もぐらの掘ったトンネルが土壌中の空気や水の循環を促進する一面も報告されています。

こうした科学的知見は、もぐらを単なる害獣として片付けるのではなく、土壌環境に果たす役割を再評価する視点を提供しています。

海外で語られるもぐらの象徴的意味

海外に目を向けると、もぐらは異なる文化的背景から多様な象徴を担ってきました。ヨーロッパの民間伝承においては、地中深くで活動する性質から「秘密を守る番人」や「勤勉さ」「粘り強さ」の象徴とされることが多く見られます。特に農耕地帯では、土を掘り返す姿が「土地を耕す力」と重ねられることもあり、むしろ吉兆として扱われる例もあります。

東アジアの思想では、もぐらは「陰」の性質を帯びる存在として言及されることがあり、静寂や内向性、または目に見えない力を象徴する動物とみなされます。この見方は、陽と陰のバランスを重んじる思想体系の中で、もぐらが「欠かせない存在」として解釈される理由のひとつです。

さらに近年では、もぐらの行動が生態系に与える影響に注目が集まっています。掘削活動は昆虫や微生物の生息環境を多様化させる働きを持ち、自然界の循環を支える要因の一つとして評価されるようになっています。つまり、文化圏ごとの自然観や農耕形態の違いが、その象徴的意味合いを大きく左右してきたのです。

迷信や風習でのもぐらの扱われ方

もぐらにまつわる迷信や風習は、地域社会の生活経験から生まれた知恵として長く伝えられてきました。たとえば、畑にモコモコとしたもぐら道（トンネル跡）が現れると「作付けを切り替える時期が来た」という合図と解釈する農村もあります。これは、土中の環境変化や害虫の増加をもぐらの出現から察知しようとする、経験則に基づいた生活の知恵といえます。

また、農地や法面（のりめん）の崩落を防ぐために、古くから特定の植物を植えたり、もぐらが嫌うとされる匂い（ヒトデカズラやハッカ油など）を利用する習慣も残っています。科学的根拠が十分に確立されているわけではありませんが、共同体の中で「繰り返し有効とされた事例」が積み重なり、風習として定着したものです。

このような民俗的慣習は、科学的な再現性が乏しい一方で、地域の農耕文化や人々の生活に密接に結びついています。したがって、実務として取り入れる際には「迷信だから切り捨てる」のではなく、地域の経験を尊重しながらも、現場の土壌条件・地形・作物の生育状況を客観的に観察し、科学的知見と組み合わせることが望ましいでしょう。

もぐらが庭にいる影響と生活への関係

家庭の庭や菜園において、もぐらの存在を最初に知るきっかけは「もぐら塚」と呼ばれる盛り土や、餌を探して浅く掘られたトンネル跡です。見た目のインパクトが大きいため「植物が根ごと食べられてしまうのでは」と不安になる方も少なくありませんが、実際にはもぐらは草木の根を直接食べることはありません。主にミミズやコガネムシの幼虫、ネキリムシといった土中の小動物を捕食しています。

ただし、掘削によって根域の土壌構造が乱れることで、植物がぐらついたり、水はけが変化して乾燥・倒伏を引き起こすリスクがあります。特に根菜類や浅根性の草花では顕著に影響が出やすいとされます。一方で、害虫を捕食する役割を果たしていることから「完全な害獣」と断定するのは適切ではありません。むしろ、局所的には生態系のバランスを維持する一助となっています。

被害の程度は、作物の種類、根の張り方、用土の粒度（砂質か粘土質か）、潅水頻度、さらに近隣のもぐら生息密度など、複合的な要因によって左右されます。そのため、庭でもぐらを見つけた際には、まず植物の生育状況や土壌の変化を数週間から数か月単位で観察することが推奨されます。無闇に全域を駆除するよりも、被害が顕著な場所に的を絞って対応したほうが、庭全体の環境を健全に保ちやすいのです。

なお、日本国内では農林水産省が農作物被害の軽減に関する研究を行っており、もぐら被害もその一部として位置付けられています（出典：農林水産省「野生鳥獣による農作物被害の現状」https://www.maff.go.jp/j/seisan/tyozyu/higai/h_jisseki.html）。

こうした公的データを参考にすることで、地域ごとの被害実態を正しく把握し、庭や畑での対策に活かすことが可能です。

もぐらは縁起悪いというのは本当かを検証する

もぐらは駆除すべき？環境視点で考える

もぐらをめぐる対処は「害獣として排除するか」「環境の一部として共存するか」という二つの視点の間で議論されてきました。そもそもモグラ類は日本に広く分布する野生動物であり、鳥獣保護管理法の対象でもあるため、各自治体では無許可での捕獲や殺傷が禁じられています。違反した場合は罰則の対象となるため、個人が安易に駆除を行うことは避けなければなりません。

また、もぐらは強いテリトリー性をもつ動物で、1頭あたり数百平方メートル前後を縄張りとして占有します。このため、無差別に個体を排除すると空いた縄張りに別の個体が流入し、結果的に被害が減らないどころか拡散してしまうこともあります。農地や庭の管理においては「駆除」よりも「定着を防ぐ環境づくり」が合理的です。

具体的な方策としては、以下のような取り組みが挙げられます。

• 環境調整：地面の水分を過剰に滞留させない、過剰な有機物の投入を避けるなど、もぐらが好む土壌環境を減らす。
• 局所的な防御：畝や根域を金網や防獣ネットで覆う、あるいは物理的に進入を防ぐ。
• 被害部位の保全：発生したもぐら塚を平らに戻し、苗や株の根を保護する。

環境全体を敵視するのではなく、局所的な対策と環境調整を組み合わせることで、無用な衝突を避けつつ庭や畑を守ることが可能です。

農業や庭づくりにおけるもぐらの役割

もぐらは肉食性の哺乳類で、主にミミズ、コガネムシの幼虫、ネキリムシなどを捕食します。浅いトンネルは獲物を探すために一時的に掘られることが多く、再利用されにくい性質を持っています。こうした掘削活動は一見「被害」と捉えられがちですが、実際には土壌の通気性を改善し、微生物の移動や有機物の分解を促す作用もあります。その結果、条件次第では土壌環境の更新に寄与する場合があります。

一方で、植物の根の周囲が乱れると、活着直後の苗や浅根性植物には負担がかかりやすくなります。根鉢が崩れやすい状態や乾燥しやすい環境では特に倒伏や枯死のリスクが高まります。そのため園芸や農業では、もぐらの存在を単なる「害」と決めつけず、次のような管理工夫で被害を最小限に抑えることが推奨されます。

• 用土設計：根鉢を固めすぎず、表層には適度な空隙を残す。
• 植え付け後の管理：鎮圧やマルチングを行い、株元を安定させる。
• 風対策：支柱や防風ネットを活用し、地上部の揺れを抑えることで根の負担を軽減する。

農業においては、もぐらが害虫の密度を抑制する役割を果たす一方で、局所的に作物の根域を乱すリスクがあるため、その「二面性」を理解した上で対応することが重要です。庭や畑でのもぐら対策は、敵対ではなく「調整」として捉えることで、自然環境との共生を図りながら健全な生育環境を維持することにつながります。

害獣としての被害とその対策方法

被害は大きく、景観の乱れ、根域の攪乱、畔や法面の脆弱化、トンネルを利用するネズミ類の二次被害に分けられます。対策は、場所と目的に合わせて段階的に選ぶと無駄がありません。

対策の比較表

カテゴリ	主な方法	効果の目安	留意点
忌避臭	木酢液の散布、炭やコーヒーカスの配置、軽く炙った稲わらの敷設	一時的な侵入抑制に有効	雨で薄れるため定期補充が必要。作物や土壌への影響を小面積で試してから広げる
振動・音	音波振動装置の設置、簡易風車の振動伝達	点在箇所の回避を促す	規則的な刺激は慣れが生じやすい。通行の邪魔にならない位置に設置
物理遮断	畝や花壇周囲にメッシュや防根シートを埋設、温室の周囲を深さ40cm前後で囲う	施設周りの侵入防止に適す	広い畑ではコスト大。隙間や継ぎ目の処理が鍵
観察と管理	トンネルを踏み潰す、50cm間隔で棒を刺し通行の有無を確認、乾湿のムラを減らす	定着抑制と被害部位の特定に有効	即効性は低いが、面での管理に向く。継続性が成果に直結

現場では、まず既存のトンネルをこまめに潰して通行の成功体験を断ち、畝や根域の周囲に限定した忌避や遮断を重ねる流れが扱いやすいです。ネズミ類の食害が疑われる場合は、トンネルの奥行きや食痕の特徴を確認し、対象を取り違えないようにしましょう。捕獲器具の使用に関しては、地域の許可要件の確認が前提となります。

もぐらが与える自然界への意外な恩恵

もぐらは地中生活に特化した哺乳類であり、その営みは私たちの目には見えにくいものの、土壌生態系の維持に大きな役割を果たしています。彼らは「害獣」として語られることもありますが、実際には多面的な働きを通じて自然界に恩恵をもたらしています。

まず食性の面では、モグラは主にミミズや甲虫類・蛾の幼虫などを捕食します。特にコガネムシやネキリムシといった農業害虫の幼虫を摂食する点は、農地や庭の健全性維持に貢献します。一般に1匹のもぐらは1日に体重の約50〜100％に相当する餌を必要とするとされ、捕食圧は決して小さなものではありません。結果として、土中に潜む害虫の個体数を一定水準に抑制する作用が期待できます。

さらに、もぐらのトンネル掘削は単なる通路形成にとどまらず、土壌環境の更新を促進します。トンネルを通じて外部から微生物や菌類が分散し、土中の多様性が高まります。これは土壌微生物群集の安定性や、植物根圏における共生関係の形成にもつながります。また、掘削行動による通気性の改善や有機物の分解促進は、長期的には土壌肥沃度の維持に寄与します。

モグラはまた、縄張り意識が強く、一定範囲に一個体しか定着しにくい性質を持ちます。これにより、生息密度が急激に増加して環境が不安定化することを防ぐ効果もあります。結果的に、過剰な捕食や掘削によるバランスの崩壊を防ぎ、安定した地下生態系の維持に役立っていると考えられます。

畑や庭といった人為的な環境では、人間による管理と野生動物の営みが交錯します。もぐらの活動は確かに苗の根を揺るがすなど局所的なリスクを伴いますが、その存在を一律に否定せず、「守りたい範囲」を明確に区切って管理する視点を持つことで、かえって手間やコストを削減できます。さらに、周辺の生態系に不要なダメージを与えることも避けられるため、自然との調和を図りつつ持続的な農業・園芸を実践するうえで有益な選択肢となるのです。

もぐらは縁起悪いというのは本当か？吉凶と被害と対策を徹底解説：まとめ

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