シロアリによる被害は、住まいの安全や日常生活に大きな影響を及ぼす深刻な問題です。
とくに賃貸物件にお住まいの方にとっては、シロアリ駆除を大家がしてくれないとき、どう対処すべきか悩むことも多いのではないでしょうか。
このような状況に直面したとき、まず確認すべき賃貸契約書の内容が重要になります。契約に記載された修繕範囲や特約事項を正しく理解することで、自分の負担範囲が明確になります。
また、シロアリ被害の原因が構造的問題か自然発生かを見極めることも大切です。これによって、誰が責任を負うべきかが変わってきます。
さらに、実際に対応を進めるには、管理会社・不動産会社への相談方法にも注意が必要です。事実を冷静に伝える姿勢が、解決への第一歩となります。そして、修繕義務は誰にあるのかを知ることが、今後のやり取りで主張を通すうえで欠かせません。
もしも管理側の対応が得られず、自費対応を検討せざるを得ない場合には、無駄な出費を防ぐための注意点も押さえておきましょう。この記事では、そうした各ポイントについて丁寧に解説していきます。
困ったときの判断材料として、ぜひ最後までお読みください。
この記事を読むことで理解できる内容は以下のとおりです。
- シロアリ被害時の賃貸契約書の確認ポイントがわかる
- 責任の所在を判断するための原因の見極め方がわかる
- 管理会社や不動産会社への効果的な相談方法がわかる
- 自費対応時の注意点や証拠の残し方がわかる
シロアリ駆除を大家がしてくれない時の対処法
まず確認すべき賃貸契約書の内容
原因が構造的問題か自然発生かを見極める
管理会社・不動産会社への相談方法
修繕義務は誰にあるのかを知る
自費対応する場合の注意点とは
まず確認すべき賃貸契約書の内容

シロアリ被害が発生したとき、最初にすべきことの一つが「賃貸契約書の確認」です。これは、修繕費や駆除費用の負担が誰にあるのかを判断するための重要な手がかりになります。
一般的に、賃貸物件における修繕責任は「貸主(大家)」と「借主(入居者)」のどちらにあるか、契約書に明記されています。特に確認すべき箇所は「特約事項」や「設備維持に関する条項」です。中には、建物の構造や共用部分の修繕については貸主が負担し、借主の過失による損傷は借主が対応するというように、明確に分かれているケースがあります。
また、「害虫駆除」に関しても明示されていることがあるため、駆除対象が入居者の責任範囲なのか、建物全体の問題として扱われるのかを見極める必要があります。特に注意したいのが、築年数が古い物件などでは、契約書に「現状有姿での貸し出し」などと記載されている場合です。この文言があると、多少の老朽化や害虫の存在も了承済みとされ、入居者の対応が求められる可能性があります。
このように、まず契約書を丁寧に読み解くことで、自身に求められる対応がどこまでかを冷静に整理できます。仮に契約内容が不明確な場合は、契約時にやり取りをした不動産会社や管理会社に確認を取ることが大切です。
原因が構造的問題か自然発生かを見極める

シロアリ被害が誰の責任であるかを判断するには、被害の原因を特定する必要があります。中でも「構造的な問題」による被害なのか、「自然発生的な被害」なのかを見極めることが重要です。
構造的問題とは、例えば床下の通気性が悪かったり、木材の防腐処理が不十分だったりといった、建物そのものの設計や施工に起因するものです。この場合、建物の所有者である大家が管理責任を負うのが一般的です。なぜなら、建物の基本構造に問題がある場合、それは入居者にはどうすることもできないからです。
一方で、自然発生とは、例えば換気不足や清掃不良によって湿気がこもりやすい環境が作られ、そこにシロアリが発生するというようなケースです。このような原因が借主の生活習慣に関係していると判断されると、入居者が一部費用を負担することもあり得ます。
このような見極めを行うためには、まず現地の状況を専門のシロアリ駆除業者に調査してもらうことが重要です。調査結果により、被害の範囲や原因が明らかになり、費用負担の根拠となる証拠にもなります。なお、調査時には写真や報告書を残しておくと、後の交渉にも役立ちます。
管理会社・不動産会社への相談方法

シロアリ被害が発覚したとき、まず冷静に管理会社や不動産会社へ連絡を取りましょう。このとき、感情的にならず、事実を整理して伝えることがポイントです。
連絡の際には、まず「どこに」「どのような被害があるか」を明確に伝えることが大切です。例えば、「キッチン下の収納部分に木くずがたまっており、木材に穴が空いている」など、具体的な状態を説明しましょう。可能であれば、スマートフォンなどで撮影した写真を添付することで、状況の理解がスムーズになります。
次に、すでに確認した賃貸契約書の内容や、業者による調査結果があれば、その情報もあわせて提供すると良いでしょう。これにより、相手方も事実確認がしやすくなり、対応を迅速に進めてもらえる可能性が高まります。
ただし、相手が消極的な姿勢を見せた場合は、「修繕義務の所在」や「法律上の責任」について冷静に話を進めることが求められます。例えば、「建物の構造に原因があるとすれば、所有者である大家さんの責任ではないでしょうか」といった、法的観点からの問いかけが効果的です。
このように、事実と根拠を整理した上で、丁寧にかつ論理的に相談を進めることで、円滑な対応が期待できます。
修繕義務は誰にあるのかを知る

賃貸物件における修繕義務がどちらにあるのかを知ることは、費用負担の正当性を主張するうえで不可欠です。これは、民法や判例など法律上のルールに基づいて判断されます。
民法第606条には、「貸主は、賃貸物の使用および収益に必要な修繕をする義務がある」と明記されています。つまり、基本的には建物の経年劣化や構造的欠陥による修繕は、大家側の責任となるのが一般的です。一方で、借主の過失や注意義務違反によって発生した損傷については、借主に修繕義務が課されることになります。
ただし、契約書に特約がある場合は、その内容が優先されます。例えば、「借主が通常の損耗も含めて原状回復する」といった文言があると、入居者側が広範囲に対応を求められることもあります。そのため、前述の通り、契約書の確認が大前提となります。
加えて、判例では「構造的な欠陥に起因するシロアリ被害は、貸主が対応すべき」とされたケースも存在しており、状況によって対応は異なります。可能であれば、消費生活センターや法律相談窓口などを活用し、法的なアドバイスを得るのも有効です。
自費対応する場合の注意点とは

管理会社や大家からの対応が得られず、やむを得ず自費でシロアリ駆除を行う場合には、いくつかの注意点があります。無駄な出費を防ぐためにも、事前にしっかりと計画を立てる必要があります。
まず、対応前に「事前通知」をしておくことが大切です。つまり、大家や管理会社に「○日までに対応がなければ、自費で駆除を行う」と書面やメールで通知し、後に費用請求する可能性がある旨を伝えておきましょう。これが後のトラブル回避につながります。
次に、シロアリ駆除業者は信頼できる専門会社を選ぶことが必要です。安価な業者を選んでしまうと、効果が不十分だったり、逆に建物にダメージを与えるような処理を行うリスクもあります。必ず見積もりを数社から取り、施工内容を確認した上で契約しましょう。
また、駆除後の「証拠」も重要です。業者の報告書や写真を保管し、支払い領収書なども整理しておくと、後に大家へ費用負担を求める際の根拠となります。
このように、自費対応は最終手段ですが、手順と記録をしっかり行うことで、後から正当な主張がしやすくなります。慎重に準備を進めることが大切です。
シロアリ駆除を大家がしてくれない時の相談先
住宅紛争審査会に相談できるケース
消費生活センターでの対応事例
弁護士への相談タイミングと費用
保険や補助金が使える可能性を確認
トラブルにならない証拠の残し方
住宅紛争審査会に相談できるケース

住宅に関するトラブルの中でも、建物の欠陥や管理者との責任の所在が不明確な問題については、「住宅紛争審査会(住まいのADR)」に相談できるケースがあります。これは、専門的な知識を持つ第三者機関が中立的な立場で紛争解決を支援してくれる制度です。
この審査会に持ち込めるのは、例えば建物の構造不良によるシロアリ被害や、貸主・管理会社が必要な修繕に応じないといった問題です。特に、建築的な瑕疵が疑われる場合や、住宅の性能に関わる重大な不具合がある場合には、審査会で専門家の意見を得ながら解決を目指すことができます。
また、審査会では弁護士や建築士などが参加し、必要に応じて技術的な調査も行われます。そのため、当事者間での話し合いでは埒が明かないような事案にも、具体的な道筋が見える可能性があります。
ただし、相談できるのは主に「新築住宅」や「リフォーム工事」に関するトラブルが中心で、賃貸物件に関するトラブルが対象外となる場合もあります。そのため、事前に住宅紛争審査会や各自治体の建築指導課などに対象の可否を確認することが重要です。
消費生活センターでの対応事例

シロアリ被害など住宅に関するトラブルについて、「消費生活センター」に相談することで解決の糸口が見つかるケースもあります。ここでは、専門の相談員が対応し、問題解決に向けたアドバイスや業者との交渉支援などを行ってくれます。
実際の対応事例として、管理会社が害虫被害を軽視して対応を先延ばしにしていたところ、入居者が消費生活センターに相談したことで状況が一変し、管理会社が駆除業者を手配して対応に乗り出したというケースがあります。センターからの連絡により、管理会社が「外部の目が入った」として態度を変えることも少なくありません。
また、入居者がシロアリ駆除を自費で行った後、その費用の一部を大家に請求したいと相談した事例では、センターの助言に基づき証拠資料を整理して再交渉した結果、一部費用が返金された例もあります。
このように、消費生活センターは無料で利用でき、法的手段に進む前の初期対応として非常に有効です。相談内容は記録され、必要に応じて弁護士などの専門機関を紹介してくれることもあります。
弁護士への相談タイミングと費用

トラブルが深刻化し、話し合いでの解決が困難な状況に陥った場合は、弁護士への相談を検討するべき段階です。とくに、シロアリ被害による金銭的損失が大きい場合や、大家や管理会社との交渉が平行線をたどっているようなケースでは、法的なアドバイスが不可欠になります。
相談のタイミングとしては、「相手方が責任を明確に否定している」「修繕の要望が何度も無視されている」「すでに自己負担で対応してしまい、その費用回収を求めたい」といった局面が考えられます。こうした場面では、契約書や写真、業者の報告書といった証拠資料を持参し、事実関係を整理したうえで弁護士に説明することが大切です。
弁護士費用については、初回の法律相談は30分5,000円~10,000円ほどが相場です。ただし、自治体の法律相談窓口などでは無料相談を実施している場合もありますので、まずは地域の公的機関を通じて相談してみると良いでしょう。
訴訟や調停に発展する場合は別途費用が発生しますが、内容証明郵便の作成や交渉代行といった初期段階のサポートだけでも、相手の対応が変わることがあります。感情的な対立を避けるためにも、早めの相談が有効です。
保険や補助金が使える可能性を確認

シロアリ被害に対して、自費ですべてを負担する前に、「保険」や「補助金」の対象となるかを確認しておくことをおすすめします。意外にも、加入している保険の中に対象となる特約が含まれている場合があります。
まずチェックしたいのが、火災保険や住宅総合保険の内容です。一般的にシロアリ被害は保険適用外とされていますが、条件付きで「突発的な事故」と判断された場合に対象になることもあります。また、保険会社によっては「害虫駆除費用補償特約」が付帯されているケースもありますので、保険証券を確認したり、直接問い合わせてみることが重要です。
さらに、自治体によっては木造住宅の防蟻対策や害虫駆除に対する補助金制度を設けている場合もあります。特に、空き家対策や地域の安全性向上を目的とした事業の一環で補助が出ることもあるため、居住している市区町村のホームページや担当窓口に問い合わせてみましょう。
このように、事前に情報を集めておくことで、思わぬ出費を防ぐ手段が見つかることがあります。何も調べずにすべてを自己負担するのではなく、使える制度を確認する姿勢が大切です。
トラブルにならない証拠の残し方

シロアリ被害に関するトラブルを防ぐためには、何よりも「証拠の確保」が重要です。証拠がしっかり残っていれば、相手方と交渉する際にも優位に立つことができ、裁判や調停などの場でも自身の主張を裏付ける材料となります。
まず行うべきは、被害の状況を写真や動画で記録することです。床下や壁など被害が広がっている箇所を明確に写し、日付も分かるようにしておくと後からの信頼性が高まります。次に、業者に依頼して調査を行った場合は、報告書や見積書も必ず保管しておきましょう。これには、シロアリの種類や被害範囲、原因の推定などが記載されており、責任の所在を明確にする材料になります。
また、大家や管理会社とのやり取りも、口頭ではなく「メール」や「書面」で行うことが重要です。感情的な会話は記録に残らないため、後に「言った」「言わない」の水掛け論になりかねません。やむを得ず電話でやり取りした場合も、通話後に「先ほどの電話の内容についてまとめました」と文書で送るなど、履歴を残す工夫が求められます。
このように、冷静かつ丁寧に証拠を残していくことが、トラブルを未然に防ぐ最大のポイントです。被害の発覚と同時に、証拠保全の意識を持って行動することが、後々の安心につながります。
シロアリ駆除を大家してくれないときの対応まとめ
この記事のまとめです。
- 賃貸契約書の修繕・害虫条項を確認する
- 特約事項に現状有姿貸しの文言があるか確認する
- 構造的欠陥か生活習慣による自然発生かを見極める
- 専門業者による現地調査で被害原因を特定する
- 調査報告書や写真を証拠として残しておく
- 被害の内容を具体的かつ冷静に管理会社へ報告する
- 契約書や調査結果をもとに論理的に交渉を行う
- 修繕義務は基本的に貸主にあることを把握する
- 特約によって借主の修繕負担が拡大する場合もある
- 対応が得られない場合は自費で駆除し通知を残す
- 信頼できる業者を選び施工内容を事前に確認する
- 駆除後の領収書や報告書も請求根拠として保管する
- 消費生活センターで助言や交渉支援を受けることができる
- 状況により住宅紛争審査会や弁護士への相談を検討する
- 保険や自治体の補助制度が使えるか事前に調べる
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