私たちの身近にある蜂の巣は、一見すると紙のような不思議な見た目をしていますが、実際にはどのような素材でできているのでしょうか。
蜂の巣の主成分は「唾液と木材」であり、スズメバチやアシナガバチは、これらを混ぜ合わせて巣を形成しています。
紙のような質感の理由とは?と気になる方も多いかもしれませんが、そこには自然ならではの巧妙な工夫が隠されています。
また、蜂の種類によって異なる巣の素材が使われていることも特徴です。例えば、ミツバチは蜜蝋という分泌物を使い、スズメバチとは全く異なる構造の巣を作ります。
このように、ミツバチの巣とスズメバチの巣の違いを知ることで、それぞれの生態や特徴がより理解しやすくなります。
さらに、蜂の巣は天然素材でできている驚きの構造を持っており、機械や設計図がなくても正確に形作られる点は、まさに自然の建築技術とも言えるでしょう。本記事では、こうした蜂の巣の成り立ちや素材の秘密について、詳しくご紹介していきます。
この記事を読むことで理解できる内容は以下のとおりです。
- 蜂の巣が唾液と木材などの自然素材で作られていること
- 紙のような質感になる理由とその工程
- 蜂の種類ごとに異なる巣の素材と特徴
- ミツバチとスズメバチの巣の構造や性質の違い
蜂の巣 何からできてる?素材の正体とは
蜂の巣の主成分は「唾液と木材」
紙のような質感の理由とは?
種類によって異なる巣の素材
ミツバチの巣とスズメバチの巣の違い
天然素材でできている驚きの構造
蜂の巣の主成分は「唾液と木材」

蜂の巣の主な構成要素は、蜂の唾液と木材です。特にスズメバチやアシナガバチが作る巣は、この2つの素材からできています。働き蜂たちは枯れ木や木の皮などの植物繊維をかじり取り、自分の唾液と混ぜてペースト状にします。これが蜂の巣の“素材”になるのです。
こうして作られたペーストは、乾燥すると軽くて丈夫な紙のような質感になります。蜂たちはこの素材を何層にも重ねて巣を形成していきます。つまり、蜂の巣は自然由来の原料だけで作られた建造物と言えるでしょう。
ただし、すべての蜂がこのように唾液と木材を使って巣を作るわけではありません。ミツバチのように、植物の樹脂や自分の分泌物から作る「蜜蝋(みつろう)」を使用する種も存在します。このように、蜂の巣の成分は種によって異なりますが、唾液と木材の組み合わせは非常に一般的であり、自然素材だけで作られる点が特徴です。
紙のような質感の理由とは?

蜂の巣が紙のように見えるのは、使用されている素材と加工方法によるものです。スズメバチやアシナガバチは、木の繊維をかじり取って細かくした後、それを唾液と混ぜて粘土のような素材に変えます。そして、それを何層にも塗り重ねて巣の形を作っていくのです。
この工程は、和紙の製造方法と非常によく似ています。木材から繊維を取り出し、水分を加えて柔らかくし、それを薄く伸ばして乾燥させる。蜂たちはまさにそれと同じような方法で巣を作っているのです。乾いたあとの巣の表面は、見た目も手触りも紙に近くなるのは当然とも言えます。
しかし、この紙のような構造には注意点もあります。雨風にはそれほど強くなく、湿気に弱いという性質があります。特に人工物の多い都市部では、雨どいや換気口などの風雨が当たりにくい場所を選んで巣作りをする傾向があるのも、この性質と無関係ではありません。
種類によって異なる巣の素材

蜂の種類によって、巣に使われる素材は大きく異なります。蜂という一括りの中にもさまざまな生態が存在し、使用する材料もそれに応じて最適化されているのです。
例えば、スズメバチやアシナガバチは、木の繊維と唾液を使って紙状の巣を作ります。一方で、ミツバチは「蜜蝋(みつろう)」と呼ばれる自分の体から分泌する物質を用いて巣を形成します。これは花の蜜を食べたあとに変化した蝋分で、六角形の部屋をきれいに並べたような構造が特徴です。
また、ツチバチやドロバチのような単独行動をとる蜂は、土や泥を素材に使います。これらは壁や地面などに小さな巣穴を掘り、その中に卵を産みつけるタイプです。つまり、蜂の種類によって「紙」「蝋」「泥」と素材がまったく異なるのです。
このような素材の違いは、蜂の行動パターンや生息環境とも深く関係しています。そのため、巣を見ることである程度どんな蜂かを推測することも可能です。
ミツバチの巣とスズメバチの巣の違い

ミツバチとスズメバチの巣は、見た目だけでなく構造や素材、役割に至るまで大きな違いがあります。まず最大の違いは、使われている素材です。ミツバチの巣は蜜蝋で作られており、滑らかで艶のある六角形の小部屋が整然と並んでいます。
一方、スズメバチの巣は木材と唾液を混ぜたペーストで作られており、外観は灰色がかった紙のような質感です。丸くて層状の構造をしており、特に初夏から秋にかけて大きく成長します。
このとき注意したいのは、スズメバチの巣は攻撃性が非常に高いということです。巣の近くを通るだけで襲われる可能性があり、見つけた場合はむやみに近づかず、専門業者に対応を依頼するのが安全です。
対照的に、ミツバチは比較的おとなしい性格で、巣の近くを通っただけで攻撃することは少ないです。巣の中には女王蜂・働き蜂・幼虫がいて、厳密な階層社会の中で役割が分担されています。ミツバチは花の蜜や花粉を集めることで自然の受粉にも貢献しており、エコシステムの中でも重要な存在です。
天然素材でできている驚きの構造

蜂の巣は、すべて自然の素材から作られていますが、その構造には驚くほどの精密さと機能性が備わっています。人工的な機械や設計図もない中で、蜂たちは本能だけを頼りに、緻密な巣を作り上げていくのです。
特にミツバチの巣に見られる「六角形のハニカム構造」は、限られたスペースを最大限に活用するための最も効率的な形だと言われています。この構造により、少ない材料で丈夫な壁を作ることができ、巣全体の強度も高まります。
一方、スズメバチの巣は層状になっており、それぞれの層に幼虫を育てる部屋が並びます。この重ねられた構造は、保温性や湿度調整にも優れており、まるで自然の中の断熱材のような役割を果たしています。
ただし、こうした天然素材は風雨や湿気にはやや弱いというデメリットもあります。そのため、蜂たちは雨のかからない軒下や木の穴などを好んで巣作りを行います。
このように、蜂の巣は単なる昆虫の住処ではなく、進化の過程で洗練されてきた“自然建築”とも呼べるほどの完成度を誇っているのです。
蜂の巣 何からできてる?作られ方も解説
働き蜂が巣作りに使う材料
唾液で繊維を固めて巣を形成
巣作りに適した場所の条件とは
巣の成長にかかる時間と過程
蜂の巣の耐久性とその理由
巣材の再利用はあるのか?
働き蜂が巣作りに使う材料

巣作りにおいて、働き蜂は身近にある自然素材を巧みに活用しています。スズメバチやアシナガバチなどの社会性を持つ蜂は、木の皮や枯れ木の表面をかじり取って繊維状にし、それを唾液と混ぜて練り上げたものを材料として使います。
この素材は粘土のように柔らかく、乾燥すると紙のように軽くて丈夫になります。つまり、木材繊維が「構造の骨組み」を、唾液が「接着剤や硬化剤」のような役割を担っているのです。また、種類によっては植物の茎や葉、泥などを利用するケースもあります。
ちなみにミツバチは、このような素材を使わず「蜜蝋(みつろう)」を自ら分泌して巣を作ります。蜜蝋は、花の蜜を変化させた天然のワックスのようなもので、特に耐久性や柔軟性に優れているのが特徴です。このように、働き蜂が使う素材は蜂の種類によって異なるものの、いずれも自然から得られるもので構成されています。
唾液で繊維を固めて巣を形成

スズメバチやアシナガバチのような蜂たちは、巣を作るときに唾液を非常に重要な接着材として活用します。彼らはまず、木の皮や枯れ木から細かい繊維を取り出し、それを自分の唾液と混ぜて練り合わせます。こうしてできたペースト状の素材が、巣作りの原材料となるのです。
この混合物は、塗りつけた直後は柔らかく、簡単に形を変えることができます。しかし、空気に触れると乾燥して固まり、軽くて頑丈な紙のような状態になります。蜂はこれを少しずつ塗り重ねることで、何層にもわたる巣の構造を築き上げていきます。
巣の断面を見ると、まるで層になった紙細工のように見えることがありますが、これは唾液と繊維を交互に積み重ねた結果です。まさに自然の中の「建築技術」と言えるでしょう。ただし、この素材は水分には弱いため、蜂たちは雨の当たらない場所を慎重に選んで巣を作ります。
巣作りに適した場所の条件とは

蜂が巣作りを行う場所には、いくつかの共通した条件があります。まず第一に重要なのは「雨風を避けられること」です。蜂の巣は紙状や蝋状の素材でできているため、水に濡れると劣化しやすく、崩れやすくなってしまいます。
次に挙げられるのが「天敵や人間からの距離」です。蜂たちは外敵から身を守るため、人通りの少ない静かな場所を選ぶ傾向があります。そのため、屋根の軒下、木の幹の内部、倉庫の隅などが巣作りに適した場所とされます。
さらに、巣の素材となる木材や植物が周囲にあること、そして餌となる花の蜜や昆虫が得られる環境も重要です。特にスズメバチは他の虫を餌とするため、樹木が多く虫が集まる場所を好みます。
一方で、都市部でも蜂の巣が見つかるのは、これらの条件を満たす人工構造物が存在するためです。たとえば、エアコンの室外機や換気扇の中などは、外敵から守られやすく、雨も当たりにくいため、蜂にとって理想的な環境となることがあります。
巣の成長にかかる時間と過程

蜂の巣は一夜にしてできあがるものではなく、ある程度の時間をかけて徐々に大きくなっていきます。巣作りは春の初め、女王蜂が越冬から目覚めたタイミングでスタートします。最初の段階では、女王蜂が一人で巣の基礎を作り、そこに卵を産みつけます。
卵が孵化し、幼虫から成虫になった働き蜂たちが生まれると、本格的な巣作りが始まります。働き蜂は交代で素材を集め、唾液と混ぜた材料を使って巣を拡張していきます。最初は数センチ程度だった巣が、1〜2ヶ月も経つと手のひらより大きくなり、秋頃には直径30cm以上の巣になることもあります。
ただし、蜂の種類や環境によってこのペースには差があります。スズメバチのように活動範囲が広く、大型の巣を作る種では、3ヶ月以上かけて巣を完成させることも珍しくありません。逆に、単独で生活する蜂は小規模な巣を短期間で作ってしまうこともあります。
蜂の巣の耐久性とその理由

蜂の巣は一見すると繊細な印象を受けますが、実は非常に高い耐久性を持っています。特にスズメバチやアシナガバチの巣は、紙のように見えるにもかかわらず、乾燥すると非常に硬くなり、ちょっとした衝撃では壊れません。
この耐久性の理由は、材料の配合と構造にあります。蜂たちは木材繊維を唾液で練り固め、薄く塗り重ねながら巣を形成していきます。この「層構造」が強度を高めており、外からの振動や衝撃に対する耐性を生み出しているのです。
また、ミツバチの巣は蜜蝋でできており、柔らかさと粘りを持ち合わせています。このため、強くはないものの、ある程度の変形にも耐えることができます。ただし、いずれの巣も雨や湿気には弱いため、水の侵入には非常に敏感です。
つまり、乾燥した状態であれば驚くほど丈夫であり、数ヶ月間にわたり機能を維持し続けることができます。そのため、人家の軒先などに放置された巣が、シーズンオフになっても形を保って残っていることがあります。
巣材の再利用はあるのか?

蜂の巣が自然素材でできている以上、再利用できそうに思うかもしれませんが、実際には多くの蜂が巣材を再利用することはほとんどありません。特にスズメバチやアシナガバチの場合、毎年新しい巣を作る習性があり、古い巣には戻ってこないことが一般的です。
これは、古い巣が劣化したり、寄生虫や病原菌が残っているリスクがあるためです。また、蜂の寿命や女王蜂の交代も影響しており、前年と同じ場所に巣を作ることはあっても、巣そのものを使い回すことはありません。
一方で、ミツバチは同じ巣を長期間維持する傾向があります。内部を清掃し、必要に応じて新しい蜜蝋を足して補修することもあるため、「維持・拡張型」の巣づくりと言えるでしょう。ただし、完全に壊れた巣や放棄された巣は使いません。
このように、蜂の巣材の再利用は種によって異なりますが、基本的には「一代限り」であることが多いです。そのため、古い巣を見つけたとしても、次の年には使われない可能性が高いと言えます。
蜂の巣 何からできてるかを総まとめ
この記事のまとめです。
- スズメバチやアシナガバチの巣は唾液と木材繊維から作られる
- 蜂は枯れ木や木の皮をかじって素材を集める
- 唾液と繊維を混ぜたペーストが巣の主原料となる
- 乾燥すると紙のような質感になる構造を持つ
- 和紙づくりに似た加工方法で巣を形成する
- 巣は層構造になっており耐久性がある
- 素材は種類によって紙・蝋・泥などに分かれる
- ミツバチの巣は蜜蝋で作られ六角形の構造を持つ
- ツチバチやドロバチは泥や土を使って巣を作る
- 巣の場所は雨風を避けられ静かな場所が好まれる
- 巣の成長は春から秋にかけて段階的に進む
- 働き蜂が素材集めと巣の拡張を担当する
- 蜂の巣は乾燥状態で非常に強度が高い
- スズメバチの巣は毎年新しく作られる
- ミツバチの巣は清掃と補修を繰り返し長期間維持される
コメント