カメムシは熱湯で駆除できる?即死温度や臭い・設備の破損リスク

ベランダに干された白いTシャツの表面に留まる、茶色と緑色のカメムシ。日本の住宅街を背景に、洗濯物に付着したカメムシの様子を捉えた写真。

家の中やベランダ、洗濯物に突然現れるカメムシは、見失いたくない焦りと同時に、あの強烈な悪臭を放たれたらどうしようという強い不安をかき立てる存在です。

殺虫スプレーを使えば部屋や衣類に薬剤特有の臭いやベタつきが残り、小さな子供やペットがいる環境では化学物質の残留も気になるところです。

そこで薬剤を使わない身近な手段として、熱湯による駆除を真っ先に検討する方が少なくありません。

しかし、カメムシに熱湯をかけると即死するのか、それとも熱さで刺激されて余計に臭うのか、実際に試す前にはいくつもの疑問が浮かびます。

ペットボトルで作る自作トラップに熱湯を入れても安全なのか、お風呂やキッチンの排水口に現れた個体を熱湯で流してしまっても住宅設備に問題はないのかなど、不安は尽きません。

さらに、外に干していた洗濯物やお気に入りの服に付着した場合、熱湯をかけて良いのか、染み付いた分泌液の匂いはどのように洗い落とせばよいのか、判断に迷う場面は多岐にわたります。

この記事では、カメムシに対する熱湯の殺傷効果と致死温度、臭いを封じるメカニズムから、建材や配管に潜む深刻な物理的リスク、そして万が一悪臭が付着した際の確実な対処法まで、詳細な論拠とともに分かりやすく解説します。

熱湯による処理の限界と正しい代替策を体系的に理解することで、悪臭の被害を出さず、安全かつ冷静にカメムシトラブルを解決できるようになります。

  • カメムシが臭いを出さずに即死する具体的な温度条件と致死メカニズム
  • ペットボトルトラップや家庭の排水口に熱湯を使ってはいけない構造的理由
  • 洗濯物に付着したカメムシの臭い成分を繊維から完全に分解・除去する洗濯手順
  • 建材の白化や火傷事故を避けつつ薬剤を使わずに退治する安全な代替駆除技術
目次

カメムシを熱湯で即死させる効果と臭いの仕組み

カメムシに対して熱湯を使用する最大の動機は、あの不快な悪臭を一切出させることなく一瞬で活動を停止させられるかという点に集約されます。

薬剤を使わない物理的駆除として非常に手軽に見える熱湯ですが、その殺傷力と防臭効果は生化学的な温度条件に厳密に左右されます。

ここでは、カメムシの生体反応と温度の相関関係、悪臭の発生を断ち切る機序、そして卵への影響や他の非薬剤系駆除法との違いについて詳しく紐解いていきます。

カメムシが熱湯で即死する致死温度の目安

カメムシを苦悶させずに瞬時に絶命させるためには、供給するお湯の温度と熱容量が決定的な要因となります。

昆虫の外骨格は主にキチン質とタンパク質で構成されたクチクラ層で覆われており、体内には各種の代謝酵素や運動を司る筋組織タンパク質が緻密に張り巡らされています。

昆虫は自律的な体温調節機能を持たない変温動物であるため、急激な温度上昇という熱ショックに対して極めて脆弱な身体構造をしています。

高温の熱水がカメムシの体表に接触すると、細胞膜の流動性が一瞬で失われ、全身の神経系や筋肉を構成するタンパク質が不可逆的な熱凝固、すなわち熱変性を起こします。

さらに、腹部側面に存在する呼吸器官である気門から高温の水分が急速に浸入することで、体内深部の生体組織が瞬時に熱破壊され、全身の運動機能が完全に停止します。

この現象を引き起こすための温度帯と生体挙動の相関は、以下の通り整理されます。

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温度帯生体組織の変化と活動状態駆除における実務的評価
10℃〜35℃正常な生命活動を維持する至適温度領域。活発な歩行や飛翔が可能。接触刺激に対して即座に悪臭分泌を行うため駆除効果なし
40℃〜50℃生存可能上限温度帯。細胞機能障害が進行するが即効性は皆無。数分間の苦悶状態が続き、激しい悪臭を全量分泌する最悪の温度帯
50℃〜60℃神経組織の障害と熱ショックが発生。数十秒程度で運動停止へ移行。即時性に欠け、個体差により死の間際に悪臭を噴射する猶予を与える
60℃以上
(推奨:70℃〜沸騰水)
タンパク質の不可逆的熱凝固が発生し、神経伝達がミリ秒単位で即時遮断。悪臭を噴射する隙を一切与えず完全即死。最も確実な致死温度

害虫防除の観点からカメムシを一切苦悶させず即座に行動停止させるためには、最低でも60℃以上の温度が必要であり、確実性を担保するためには70℃から沸騰水近傍の熱湯を浴びせる必要があります。

なお、外気温や容器の温度によって注いだ瞬間に湯温は急激に低下するため、準備段階ではしっかりと沸騰させた湯を用いるのが基本原則です。

ただし、数値データはあくまで一般的な生物学的目安であり、熱湯の取り扱いによる火傷や物損事故を防止するためにも、無理な作業は避け慎重に行動してください。

臭いを出させずに熱湯で駆除できる理由

カメムシが天敵に襲われた際に放つあの強烈な悪臭は、決して受動的に漏れ出しているものではありません。

成虫の場合、後胸側板にある臭腺の開口部から、外敵の接触や振動といった刺激を感知した際に能動的に体外へ噴射されます。

この分泌行動は、感覚器から中枢神経系を通り、臭腺弁を開閉する微小な筋肉へと送られる神経シグナルによって精密に制御されています。

悪臭遮断のメカニズム
70℃以上の熱湯を浴びたカメムシは、神経伝達系および臭腺弁をコントロールする筋タンパク質がミリ秒単位で熱凝固を起こします。その結果、危険を察知して悪臭を噴射するという防衛プログラムが作動する前に生体機能が完全に断絶し、悪臭を一切出さずに絶命します。

物理的な圧殺や中途半端な刺激を与えた場合、カメムシは命の危機を感じて保有する分泌液を一気に放出し、周囲を汚染します。

しかし、十分な熱量を持った熱湯に全身が瞬時に包まれた場合は、防衛行動を起こすための神経回路そのものが焼き切れるため、匂い物質が体外に放出される余地がありません。

これが、熱湯処理が条件次第で無臭駆除として機能する生化学的な理由です。

中途半端な温度で悪臭が拡散するリスク

前述の通り十分な高温であれば無臭で処理できる反面、給湯器の設定温度である40℃〜50℃程度のぬるま湯や、注ぐ量が少なく全身を瞬時に浸潤できなかった場合は、極めて悲惨な結末を迎えることになります。

この温度帯のお湯は、カメムシにとって即死をもたらす要因ではなく、単なる耐え難い極度の外敵刺激として認識されてしまうためです。

熱さによってパニックを起こしたカメムシは、死に至るまでの数秒から数分の間に保有している分泌液を最大量体外へ噴射します。

さらに恐ろしいのは、熱水がもたらす物理化学的な拡散作用です。カメムシの分泌液に含まれる代表的な悪臭成分の特性は、以下の通りです。

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物理化学的項目物質特性および物性値駆除現場における影響
主成分トランス-2-ヘキセナール等の不飽和アルデヒド類粘膜に対する強い刺激性を持ち、青臭く油っぽい悪臭の発生源となる
溶解性親油性(脂溶性)、水に対して極めて難溶水で流そうとしても混ざらず、壁面や繊維に強固に残存する
熱的挙動熱エネルギーの付与により気化速度が飛躍的に加速高温の水蒸気に同伴して気化し、空気中へ爆発的に拡散する

水蒸気同伴拡散による二次災害
不飽和アルデヒド類は常温でも揮発しますが、中途半端な熱湯を注ぐと蒸気圧が一気に跳ね上がります。立ち上る湯気とともに悪臭成分が気化して部屋全体へ巻き上げられる水蒸気蒸留類似の現象が起こり、壁紙やカーテン、衣類に臭いが吸着して何日も取れなくなる深刻な事態を招きます。

中途半端な温度の湯をかけるくらいであれば、触らずに別の手段を選択する方が遥かに安全です。

温度の低下を防げないシチュエーションでの熱湯使用は、悪臭被害を自ら拡大させてしまうリスクを常に孕んでいます。

網戸やサッシにあるカメムシの卵への効果

初夏から初秋にかけての繁殖期になると、網戸のメッシュ面、窓サッシの溝、外壁、ベランダに干した洗濯物などに、14個前後の緑色や褐色の樽型をした卵塊が規則正しく産み付けられる光景を目にします。

成虫だけでなく、この卵塊を熱湯で処理できないかと考える方も多いはずです。

結論から申し上げますと、カメムシの卵に対して70℃以上の熱湯を接触させる処置は、生物学的な殺卵・孵化阻止(不活性化)において非常に高い効果を発揮します。

カメムシの卵殻は多層構造のキチン質と撥水性ワックス層で厳重に保護されており、市販の家庭用ピレスロイド系殺虫スプレーを吹きかけても薬剤が内部の胚まで浸透せず、そのまま孵化してしまうケースが珍しくありません。

しかし、熱エネルギーは卵殻を透過して伝導するため、内部の胚タンパク質を不可逆的に凝固させ、確実に死滅させることができます。

ただし、網戸に付着した卵塊に対して直接ケトル等から熱湯を注ぎかける行為は、決して推奨できません。

家庭用の網戸ネットはポリプロピレンやポリ塩化ビニルなどの樹脂繊維で編み込まれており、局所的に高温水を浴びると熱収縮を起こして波打ち状にたるんだり、網目が広がって隙間が生じたりします。

さらに、親カメムシが産卵時に分泌する膠着物質(セメント様物質)は強固な耐水性を持っているため、熱湯で内部を死滅させても卵の殻そのものは網戸に強固に残存し、見た目の不快感を解消できません。

卵塊への現実的な対処としては、網戸の裏側にティッシュペーパーをあてがいながら不要なプラスチックカードで優しく削ぎ落とすか、粘着力の強い布ガムテープで密着させて引き剥がす物理的除去が最も確実です。

回収した卵塊を耐熱容器の中で熱湯に浸して不活性化させるか、テープで厳重に密閉して可燃ゴミとして廃棄するのがスマートな手順です。

熱湯を使わない冷却スプレーや洗剤との比較

室内に侵入したカメムシを処理するにあたり、熱湯以外にも化学殺虫成分を含まない優れた駆除手段が存在します。

代表的な選択肢である「冷却(凍結)スプレー」「界面活性剤(台所用中性洗剤)」「粘着テープ(ガムテープ)」と熱湯処理の特徴を比較すると、それぞれの得意分野と弱点が明確になります。

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駆除手段即効性と致死性悪臭の阻止力安全性と実用性
熱湯浸漬極めて高い(即死)
※60〜70℃以上時
高い(即死時のみ)
※温度不足時は激しく拡散
建材汚損や配管変形、作業時の火傷リスクが極めて高い
冷却スプレー極めて高い(即時麻痺)
※マイナス40℃〜85℃
極めて高い
(神経を瞬間凍結)
薬剤不使用で壁や床を汚さない。室内垂直面で最も安全
界面活性剤
(洗剤液)
中程度(1〜2分で窒息)
※気門閉塞による
高い
(液体トラップ内に臭気を密閉)
安価で資材準備が容易。床面付着時は拭き取りが必要
粘着テープ
(ガムテープ)
物理的密閉による捕獲
※即死ではない
高い
(背後から密着させ二つ折りに密閉)
建材を傷めず手軽。刺激を与えると密閉前に放臭する恐れあり

壁や天井、カーテンといった室内空間の垂直面においては、熱湯を安全に注ぐこと自体が物理的に不可能です。

このような場所では、冷却スプレーを用いて一瞬で神経を凍結麻痺させるか、ガムテープの接着面を背後から静かに押し当てて二つ折りに密閉する方法が第一選択となります。

熱湯が真価を発揮するのは、ベランダのコンクリート床や屋外の耐熱バケツの中など、万が一熱水が飛散しても周囲を汚損・破損しない環境が完全に確保されている場合に限られます。

状況に応じた最適な手法の選択が、無用なトラブルを防ぐ最大の鍵となります。

カメムシへの熱湯使用で注意すべきリスクと対処法

熱湯はコストがかからず殺傷力も申し分ない反面、使用する場所や容器を誤ると、住居設備に致命的な損害を与えたり、作業者自身が深刻な熱傷を負ったりする重大な危険性を伴います。

インターネット上で見かける簡便な駆除アイデアを鵜呑みにして沸騰水を注ぎ込むと、後悔してもしきれないトラブルに発展しかねません。

ここからは、熱湯駆除に伴う構造破壊リスクや衣類への影響、そして万が一悪臭が付着してしまった際の科学的レスキュー手順を詳しく解説します。

ペットボトルに熱湯を入れる危険性と自作罠

カメムシには、外敵から触れられたり危険を察知したりすると、脚を自ら縮めて重力方向へと垂直落下する「落下擬死(タナトーシス)」という習性があります。

この習性を逆手に取り、飲料用のペットボトル上部を切り取って逆さに差し込んだ漏斗状の自作捕獲器(通称:カメムシホイホイ)は、個体に直接手を触れずに捕獲できる優れたツールとして知られています。

しかし、このペットボトル捕獲器に熱湯を直接注ぎ込む行為は極めて危険であり、構造工学的な見地からも絶対に避けるべき愚行です。

一般的な飲料用ペットボトルに使用されているポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂は、熱に対する耐性が非常に低く作られています。

PET樹脂の耐熱限界と変形リスク
常温飲料用ペットボトルの耐熱温度はおよそ50℃〜60℃に過ぎず、耐熱仕様の温飲用ボトルであっても上限は約85℃程度です。ここに100℃近い沸騰水を注ぐと、樹脂が急激に熱収縮・軟化を起こします。底面が丸く変形して自立安定性を失い転倒するだけでなく、逆さにした漏斗パーツが外れて熱湯が周囲に飛び散り、作業者の手足に大火傷を負わせる致命的なハザードを生み出します。

安全性を確保した自作トラップの運用法
捕獲したカメムシを熱湯で処理したい場合は、ペットボトル内に直接湯を注ぐのではなく、あらかじめ用意した陶器製のマグカップや金属製バケツなどの耐熱容器へカメムシを滑落させ、その上で十分な熱湯を注ぐ手順を踏んでください。

さらに安全でスマートな代替案として、ペットボトルの底にあらかじめ台所用中性洗剤の原液を2〜3cmほど注いでおく方法を推奨します。

落下したカメムシは界面活性剤の作用によって体表のワックス層を瞬時に濡らされ、側面の気門を塞がれて1〜2分以内に確実に窒息死します。

これなら熱湯を準備する手間も火傷のリスクも一切なく、極めて安全に処理を完結できます。

排水口やお風呂で熱湯を流してはいけない理由

浴室の洗い場、キッチンのシンク、洗面台といった水回りにカメムシが出現した際、咄嗟にケトルで沸かした熱湯をそのまま排水口へ向けて一気に流し込もうとする方が後を絶ちません。

しかし、この行為は住宅の配管インフラを破壊する極めて危険な行為です。

一般家庭の床下や壁体内部に張り巡らされている排水管には、硬質ポリ塩化ビニル管(通称:塩ビ管、VP管やVU管)が標準的に採用されています。

この塩化ビニル樹脂(PVC)の連続使用耐熱温度は設計上およそ60℃(許容限界でも65℃程度)と定められています。

配管軟化と漏水事故のメカニズム
沸騰水を排水口へ直接流し込むと、塩ビ管は瞬時にガラス転移点を超えてゴムのように軟化します。自重や床下の勾配保持金具にかかる荷重によってパイプが下垂・変形し、水が逆勾配となってヘドロや汚泥が詰まりやすくなります。

さらに深刻なのが、配管の継手部分に塗布されている専用の溶剤形接着剤です。高温水に晒されることで接着剤が急速に熱分解・軟化し、継手部の強度が著しく低下します。隙間から床下空間へ汚水が漏れ出す床下浸水事故や、階下への漏水被害、下水ガスや強烈な悪臭が室内に充満する大事故へと直結します。

排水口周辺でカメムシを発見した際は、絶対に熱湯を流し込んではいけません。

60℃未満のぬるま湯で薄めた食器用洗剤液を静かに注ぎ込むか、シャワーの水圧でトラップの封水部分に落として密閉し、流下させて処理するのが設備保全の鉄則です。

万が一設備トラブルの兆候が見られる場合は、自己判断せず水道設備等の専門家にご相談ください。

床や壁の変色など室内の建材を傷めるリスク

室内を歩行中のカメムシに向けて床の上で直接熱湯をかけたり、壁に張り付いている個体にお湯を浴びせたりする行為も、住居の美観と資産価値を著しく損なうため厳禁です。

木質系フローリングの表面には、耐久性や防汚性を高めるためにウレタンクリア塗装やワックス層が施されています。

ここに熱湯が触れると、塗膜や樹脂ワックスが急激に熱水反応を起こして白く濁ったように変色(白化)し、通常の清掃や拭き取りでは二度と元の透明感を取り戻せなくなります。

また、フローリング基材である複層合板の接着剤層に高温水が浸透すると、板の反り、浮き、突き上げが発生し、床鳴りや構造劣化の引き金となります。

ビニールクロスが貼られた壁面も同様です。

壁紙を石膏ボードに固定している接着剤(澱粉系接着剤など)は熱と水分に極めて弱く、熱湯がかかることで接着力を失い、壁紙の剥がれ、たるみ、内部のカビ発生を招きます。

また、逃げ回る虫に焦って高温水を注ぐ行為は、跳ね返った熱水が自分の足元や手にかかる危険性も極めて高く、室内での熱湯散布は文字通り百害あって一利なしと言わざるを得ません。

洗濯物に熱湯を直接かけてはいけない理由

白を基調としたシーツや明るい色のシャツ、暖かな日差しを浴びた外干しの洗濯物は、カメムシが飛来して最も好んで静止する場所の一つです。

洗濯物を取り込もうとした瞬間に緑色の悪魔を見つけ、思わず熱湯をヤカンから浴びせたくなる衝動に駆られるかもしれませんが、衣類への熱湯直接散布は二重三重の悲劇をもたらします。

衣類への熱湯散布による三大弊害

  1. 繊維の不可逆的な変形と縮み:ポリエステルやナイロンなどの合成繊維は熱水によってシワが熱固定され、ウールやシルクなどの天然タンパク質繊維は激しい縮絨を起こしてゴワゴワに硬化します。
  2. 衣類上でのパニック放臭:布地の上で熱湯をかけられたカメムシは、繊維を掴んだまま即座に激しい苦悶状態に陥り、衣類の繊維の奥深くへ向けて分泌液を最大量噴射します。
  3. 臭気成分の強固な焼き付き:高温の熱が加わることで、分泌物に含まれる脂質やタンパク質、アルデヒド成分が繊維表面の皮脂汚れや染料と化学的に熱重合を起こし、繊維組織の内部へ強固に固着してしまいます。

衣類の上にいるカメムシを見つけた場合は、決して叩いたり熱湯をかけたりせず、紙片やプラスチック板をそっと下に差し込んで乗せるか、衣類を優しく揺らして洗面器や地面へと滑落させてから別個に対処するのが最も賢明な初期初動です。

服についた臭いを落とす正しい洗い方の手順

万が一、衣類にカメムシの分泌液が付着して強烈な匂いが染み付いてしまった場合、慌てて普段通りの洗濯機に放り込んで標準コースで水洗いしても、悪臭はほとんど落ちません。

前述の通り、悪臭の主成分であるトランス-2-ヘキセナールは水に溶けない脂溶性(親油性)であり、単なる冷水や微温湯のすすぎでは繊維から剥離しないためです。

繊維を傷めることなく、化学的アプローチによって悪臭分子を根底から分解・除去するための4段階プロトコルを以下に提示します。

カメムシ悪臭完全除去の4ステップ
第1段階:油性成分の乳化・局所もみ洗い
臭気の付着箇所を特定し、そこに台所用中性洗剤(油汚れ用・界面活性剤高濃度のもの)の原液を直接塗布します。親油性の臭気成分を界面活性剤のミセル内部に包み込ませるため、指先で優しく入念にもみ洗いを行います。

第2段階:ぬるま湯と酸素系漂白剤による酸化分解
40℃〜50℃のぬるま湯に、規定量の「粉末型酸素系漂白剤(過炭酸ナトリウム)」をしっかり溶かします。不飽和アルデヒドは酸化分解に弱いため、この溶液に衣類を30分〜1時間程度浸漬(つけ置き)します。※過度な熱湯(60℃以上)を使うと漂白剤が急激に分解してガス化し、効果が激減するため温度は必ず50℃以下を維持してください。

第3段階:洗濯機による通常洗浄と複数回すすぎ
つけ置き液ごと洗濯機に投入するか軽く絞って移し、通常の洗濯洗剤を加えて標準コースで洗濯します。遊離した臭気ミセルの再付着を完全に防ぐため、すすぎ工程は必ず2回以上設定してください。

第4段階:熱エネルギーを利用した残留臭の完全揮発
洗濯終了後、アルデヒド類の揮発性(蒸気圧)の高さと熱に弱い性質を利用し、仕上げに熱を加えます。衣類乾燥機にかけるか、スチームアイロンの蒸気を当てる、あるいはヘアドライヤーの温風を当てて完全に乾燥させます。熱風とともに微量に残った臭気分子が空気中へ放散され、無臭状態へ復帰します。

洗濯機の中でカメムシを一緒に洗ってしまった場合の対処法

洗濯物の中にカメムシが潜り込んでいることに気付かず、そのまま洗濯機を回してしまった場合、回転ドラム全体や他の衣類すべてに油性分泌液が拡散する最悪の二次汚染が発生します。

この大惨事から復旧するためには、まず洗濯機の運転停止後直ちにドラム内と糸くずフィルターを点検し、破砕された死骸の破片をティッシュ等で完全に除去・清掃してください。

その後、洗濯槽に50℃前後の温水を高水位まで給水し、市販の洗濯槽クリーナーまたは過炭酸ナトリウム(酸素系漂白剤)を多めに投入して「槽洗浄コース」を標準運転します。

槽裏面に付着した油性臭気皮膜を徹底的に酸化剥離しなければ、以後の洗濯物に臭いが移り続ける原因となります。

被害を受けた衣類については、前述の4ステップつけ置き洗浄を個別に施してください。

衣類の取り扱い表示を必ず確認
漂白剤の使用やアイロン・乾燥機の熱風処理を行う前には、必ず衣類の内側に縫い付けられている洗濯絵表示を確認してください。デリケートな高級天然素材や水洗い不可の衣類については、無理に自家処理を行わず、カメムシの臭いが付着した旨を伝えた上で信頼できるクリーニング専門店へ相談されることをおすすめします。

カメムシに熱湯を使う際の重要ポイントまとめ

熱湯を用いたカメムシ駆除は、適正な温度(最低60℃以上、推奨70℃〜沸騰水)を維持し、全身を一瞬で浸漬できる限られた条件下においてのみ、防衛臭を完全に封じ込めた即死効果を発揮する強力な物理的手段です。

しかし、少しでも温度が不足すれば強烈な悪臭を水蒸気とともに部屋中へ爆発拡散させる諸刃の剣へと変貌します。

加えて、PET樹脂ボトルの急激な変形による熱湯飛散や火傷事故、室内フローリングの白化、そして何より住宅の床下配管(塩ビ管)の変形・漏水事故といった、取り返しのつかない物的損害を引き起こすリスクと常に隣り合わせです。

屋外のコンクリート上など安全が確保された場所以外では、熱湯の使用は極めて限定的であるべきです。

室内の壁や天井では冷却スプレーやガムテープによる静かな物理捕獲を徹底し、自作トラップを用いる際は熱湯ではなく安全な中性洗剤液で窒息させるアプローチを選択することが、現代の害虫防除において最も合理的でリスクのない選択肢となります。

正しい科学的知識を持って冷静に対処し、不快なカメムシの季節を快適かつ安全に乗り切ってください。

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この記事を書いた人

九条 まどか(クジョー博士)
害虫・害獣対策の専門家/研究所所長


昆虫学・動物生態学の研究と現場調査歴20年以上!ネットの誤った撃退法や悪質業者からあなたを守るため、公的機関の正しい根拠に基づいた「安全な退治ノウハウ」をお届けします。



「退治は愛、でも徹底的に!」



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