アライグマがなつかないのはなぜ?凶暴な生物学的理由と野生化問題

テレビアニメや動物園での愛らしい姿を見て、アライグマをペットとして飼いたい、あるいは身近に寄ってきた野生個体と仲良くなりたいと考えたことはありませんか。しかし、現実は非常に厳しく、アライグマは人間との共生が極めて困難な動物です。ネット上でもアライグマ なつかない なぜという疑問が多く見受けられますが、そこには彼らが数百万年かけて作り上げてきた生存戦略が深く関わっています。

私のような害獣駆除の現場に身を置く者の視点からお伝えすると、アライグマの「可愛さ」はあくまで外見的な特徴に過ぎません。その本性は非常に独立心が強く、一度野生のスイッチが入れば、熟練の飼育員であっても手を焼くほどの凶暴性を見せます。

また、安易な接触は特定外来生物法という法律に抵触するだけでなく、アライグマ回虫症などの致死的な感染症リスクを伴うため、正しい知識を持つことが何より重要です。本記事では、彼らがなぜなつかないのか、そして野生化がもたらす深刻な被害の実態について、生物学的、社会的な側面から詳しく解説していきます。

この記事を読むことで理解できる内容は以下のとおりです。

  • アライグマが人間に服従しない進化生物学的な根本理由
  • 幼獣から成獣へ成長する過程で性格が激変するメカニズム
  • 特定外来生物法による厳格な規制と違反した場合の刑事罰
  • 屋根裏侵入や人獣共通感染症から身を守るための具体的対策
目次

アライグマがなつかないなぜを解き明かす生物学的理由

アライグマを理解するためには、まず彼らがどのような進化を遂げてきたかを知る必要があります。私たちが犬や猫と同じ感覚で接しようとすると、彼らの予測不能な反撃に驚かされることになるでしょう。ここでは、アライグマが「家畜」になれない科学的な裏付けを、行動学の視点から掘り下げます。

単独行動を好む生態と社会的な階層構造の欠如

アライグマが人間に従わない最大の理由は、彼らが基本的に「単独行動者(ソリタリー)」であるという点に集約されます。私たちが日常的に親しんでいるイヌやウマといった動物は、野生下でも群れを作り、その中に明確なリーダーが存在する階層社会を形成しています。こうした動物は「上位者の命令に従う」という心理的メカニズムを持っており、人間がリーダー(アルファ)の役割を代替することで、しつけや訓練、そして心の交流が可能になるのです。

しかし、アライグマの生態系にはそもそも「リーダー」という概念が存在しません。繁殖期を除けば、彼らにとっての他者は「自分の縄張りを脅かす敵」か「一時的な交配相手」のどちらかです。アライグマには、誰かの指示を仰いだり、他者の機嫌を伺ったりする脳の構造が備わっていないのです。

これを人間側の視点で見ると、どれほど献身的に食事を与え、愛情を持って接したとしても、アライグマにとっては「たまたま餌を置いていく便利な対象」でしかありません。彼らが人間を主人として慕い、服従することはないという事実は、彼らの生存戦略そのものなのです。

もしあなたがアライグマと心を通わせたいと考えているなら、その願いは彼らの数百万年の進化の歴史に抗うことと同義であると知っておくべきでしょう。彼らにとっての「なつく」という状態は、生物学的な設計図に含まれていないのです。したがって、アライグマ なつかない なぜという問いへの最も残酷で正確な答えは、「彼らには従属するというプログラムが欠落しているから」に他なりません。

家畜化症候群から見る遺伝的な警戒心の強さ

動物が野生から家畜へと変化する過程では、「家畜化症候群(Domestication Syndrome)」と呼ばれる共通の身体的・精神的変化が現れます。これは、人間への恐怖心が少ない個体を選別し続けることで、神経堤細胞(Neural Crest Cells)の発達が変化し、耳が垂れたり、顔が丸くなったり、脳が小型化して攻撃性が低下する現象を指します。イヌがオオカミに比べて従順なのは、数千年以上かけてこの遺伝的な選別が行われてきた結果です。

一方のアライグマは、その過程を一切経ていない完全な「野生動物」です。彼らの遺伝子には、過酷な自然環境で生き残るための強力なストレス応答と警戒心が深く刻み込まれています。数世代、あるいは数十世代程度の飼育下での交配では、数百万年かけて最適化された「野生の防衛本能」を書き換えることは不可能なのです。彼らの脳は常に周囲の刺激を「脅威」として捉えるようチューニングされており、リラックスして人間に身を委ねるという状態が持続しません。

また、アライグマの場合、この家畜化の選別基準となる「そもそも恐怖心が少ない個体」が極めて稀であることも、家畜化を阻んでいる要因です。実験的にキツネなどを家畜化させた例はありますが、アライグマに関してはそのスタートラインに立つことすらできていないのが現状です。

どれほど幼い頃から育てても、彼らの本能は常に「生き残るために隙を見せるな」と命じています。そのため、飼い主がある日突然攻撃されるといった事故が絶えないのです。彼らは「家畜になれなかった」のではなく、野生の王道を突き進んできた、誇り高くも危険な生存者なのです。

視覚の脆弱性を補う前肢の過敏な触覚と反撃性

アライグマの行動を観察していると、前肢を使って熱心に物を触る姿が印象的ですが、これは単なる「遊び」ではありません。アライグマは夜行性であり、実は視覚があまり発達していません。その代わり、彼らは前肢の驚異的な触覚に依存して世界を認識しています。大脳皮質の中で手の感覚を処理する領域が非常に広く、指先の神経密度は人間にも匹敵すると言われています。有名な「食べ物を洗う仕草」も、実際には水で指先を濡らして感覚を研ぎ澄ませ、獲物の種類や状態を確認している「探索行動」なのです。

この視覚の弱さと触覚への依存が、人間との接触において致命的なリスクを生みます。アライグマは視覚情報が乏しいため、不意に近づいてくる人間の手を「捕食者」や「攻撃者」と誤認しやすく、反射的に防衛本能が作動します。多くの動物は恐怖を感じるとまず逃走(フライト)を選びますが、アライグマは追い詰められると即座に反撃(ファイト)を選択する「ファイト・オア・フライト」の閾値が非常に低い動物です。

アライグマは驚くと逃げるよりも先に噛み付く、あるいは鋭い爪で切り裂くという行動に出やすい傾向があります。この反射速度は人間の反応速度を遥かに上回ります。

特に、アライグマが何かに夢中になっている時に背後から触れようとしたり、急な動作を見せたりすると、彼らは一瞬で戦闘モードに切り替わります。この「逃げずに戦う」生存戦略は、自然界で大型の天敵に対抗するために培われたものですが、狭い飼育環境や住宅街においては、取り返しのつかない咬傷事故の引き金となります。彼らにとって攻撃は最大の防御であり、その一撃は建材をも破壊する強力な顎と爪によって繰り出されるのです。

生後一年から二年の性成熟に伴う劇的な凶暴化

アライグマ なつかない なぜという疑問を持つ方の多くは、インターネット上で公開されている「可愛い子アライグマ」の動画を見ているはずです。確かに、生後数ヶ月までの幼獣期は、好奇心が恐怖心を上回っており、人間に対しても比較的従順であったり、甘えるような仕草を見せたりすることがあります。しかし、ここが最大の落とし穴です。

生後1年から2年が経過し、性成熟(アダルト化)を迎えると、アライグマの性格はホルモンバランスの変化によって劇的に一変します。それまで膝の上で寝ていたような個体が、突如として飼い主の手を血まみれにするほどの猛獣へと変貌するのです。これは繁殖のための強い縄張り意識や、子を守るための防衛本能が遺伝子レベルでスイッチオンされるためで、人間の訓練やしつけで抑え込めるものではありません。

プロの現場から見れば、成獣のアライグマは「制御不能な野生の塊」です。繁殖期になれば攻撃性はさらに増し、わずかな物音や匂いに対しても過剰に反応して暴れ回ります。多くの飼い主がこの段階で「これ以上は飼えない」と絶望し、かつてのブーム時にはこの凶暴化が原因で大量の遺棄が発生しました。

私たちが忘れてはならないのは、幼獣期の愛らしさは一生続くものではなく、あくまで厳しい自然界で生き残るための「一時的な状態」に過ぎないということです。成獣になった彼らの目は、もはや人間をパートナーとは見ていません。そこにあるのは、自己保存と種を繋ぐための強烈な野生の光だけです。

人間の子供のように器用な前肢による破壊行動

アライグマが他の害獣、例えばハクビシンやタヌキと決定的に異なるのは、その「破壊的な器用さ」です。彼らの前肢は、人間の子供の手のように5本の指を自在に動かすことができ、物を掴む、回す、引き剥がすといった複雑な動作を容易にこなします。この身体能力が、人間社会での管理をほぼ不可能にしています。

飼育環境においては、アライグマはケージのラッチ(掛け金)を自力で外したり、ドアノブを回して部屋を脱走したりします。さらに恐ろしいのは、彼らが「目的を持って物を壊す」点です。冷蔵庫の扉を開けて中の食べ物を全て食い荒らす、水道の蛇口をひねって部屋を水浸しにする、あるいは家の壁板や屋根の建材を力任せに剥ぎ取るといった行為を平然と行います。「閉じ込めて管理する」という物理的な対策が、アライグマの知能と腕力の前では無力化されることが多いのです。

また、この器用さは野生化においても大きな武器となります。農作物を守るためのネットを器用にこじ開けたり、ゴミ箱の蓋を開けて散らかしたりといった被害は、アライグマ特有のものです。もし、自分の庭や家屋の近くで「人間がやったような不自然な破壊痕」を見つけた場合は、アライグマの侵入を疑うべきでしょう。

彼らの手は、自然界では獲物を探り当てるための優れた道具ですが、人間社会においては、静かな生活を破壊するための凶器へと変わってしまうのです。正確な見分け方や対策については、専門の知識を持つ業者への相談が不可欠です。

高い知能と記憶力がもたらす執念深い威嚇行動

アライグマは非常に高い知能を持っており、その学習能力はイヌを凌駕し、サルに近いレベルにあると言われています。しかし、その知能は人間に貢献するために使われるのではなく、あくまで「自分がいかに有利に立ち回るか」のために使われます。特に問題なのが、彼らの執念深さと、一度受けたネガティブな刺激に対する記憶力です。

例えば、いたずらをしたアライグマを叱ったり、無理やり捕まえようとしたりすると、彼らはその経験を「排除すべき敵からの攻撃」として鮮明に記憶します。その後、彼らは反省するどころか、その人間を執拗に警戒し、隙あらば先制攻撃を仕掛けるようになります。

彼らの威嚇は、単なる鳴き声(シャーという威嚇音や金属的なうなり声)だけではありません。歯を剥き出しにし、体当たりを交えながら、執拗に噛み付きや引っ掻きを繰り返します。一度敵とみなされた人間が信頼を取り戻すことは、野生の本能に逆らうことになり、ほぼ不可能です。

この「執念深さ」は駆除の現場でも厄介な問題となります。一度罠に失敗したり、嫌な思いをしたりした個体は二度と同じ方法にはかかりません。むしろ、人間を出し抜くような行動を学習していきます。知能が高いゆえに、相手が自分にとって脅威かどうかを瞬時に判断し、有利な状況で牙を剥く。その精神的な圧迫感は、家庭で対処できるレベルを遥かに超えたものです。彼らと「対等な関係」を築くことは幻想であり、そこにあるのは、どちらが支配し、どちらが排除されるかという、野生の厳格な二択だけなのです。

アライグマがなつかないなぜから考える野生化と被害

アライグマが「なつかない」という事実は、単に家庭内でのトラブルに留まりません。その気質と繁殖力が、日本全国で深刻な社会問題、すなわち「野生化問題」を引き起こしています。かつて私たちが犯した過ちが、現在の生態系や私たちの生活をどのように脅かしているのか、その全貌を明らかにします。

アニメを機に発生したペットブームと飼育放棄

日本におけるアライグマ問題の原点は、1970年代に放送された一編のテレビアニメにあります。その作品の中で描かれた「人間と心を通わせる愛らしいアライグマ」の姿は、当時の日本人に強烈なインパクトを与えました。この影響で、本来日本に生息していなかった北米産のアライグマが、年間数千頭という規模でペット用として大量に輸入されることになったのです。

しかし、購入した飼い主たちが直面したのは、これまでに解説してきた通りの「なつかない」「凶暴」「破壊的」という野生の真実でした。可愛かった幼獣が成長するにつれ、手に負えない猛獣へと変貌し、家財を破壊され、自身も傷ついた飼い主たちは、次々と飼育を放棄しました。さらに悲劇的だったのは、アニメの結末でアライグマを自然に帰すシーンが「野に放つことは動物にとっての幸せである」という誤った倫理観を植え付けてしまったことです。

この「美化された遺棄」によって、日本各地の山林や農村にアライグマが解き放たれました。現在、私たちはその時の代償を払い続けています。ペットショップで売られていた個体が野生化し、本来の生態系にはいなかった「最強の侵略者」として定着してしまったのです。

この歴史的経緯は、人間が動物の生態を無視してエゴを押し付けた結果生じた、現代における人災の一つと言えるでしょう。現在では考えられないことですが、当時はこうした背景が野生化問題を加速させる最大の要因となったのです。

天敵が不在の日本で増殖した驚異的な繁殖力

日本の自然環境に放たれたアライグマにとって、日本はまさに「楽園」でした。彼らの故郷である北米では、オオカミやピューマ、コヨーテといった強力な天敵が存在し、アライグマの個体数は自然に抑制されていました。しかし、日本には彼らを捕食する上位の哺乳類が存在しません。この「生態学的な空白地帯」において、アライグマは食物連鎖の頂点に近いポジションを、苦もなく手に入れてしまったのです。

アライグマの繁殖力は凄まじく、生後1年から繁殖が可能となります。一度の出産で3頭から6頭、多い時にはそれ以上の子を産み、生存率も極めて高いのが特徴です。さらに、彼らは「ジェネラリスト」と呼ばれる雑食性の極みであり、果実、穀物、昆虫、魚、両生類、爬虫類、さらには小鳥や哺乳類まで、手に入るあらゆるものを餌にします。日本の豊かな四季が育む多種多様な動植物が、そのままアライグマの増殖を支えるエネルギー源となってしまいました。

現在では、日本全国47都道府県のほぼ全てでアライグマの生息が確認されています。在来種であるタヌキやキツネと餌場を争い、その気性の荒さと知能で彼らを圧倒し、生息域を広げ続けています。この増殖スピードに、自治体による捕獲が追いついていないのが実情です。もし、アライグマ駆除の正しい知識を持たずに「1頭くらいなら」と見過ごせば、数年後にはその場所はアライグマの巨大なコロニーと化しているかもしれません。彼らの勢力拡大は、今この瞬間も止まることなく続いているのです。

特定外来生物法による厳格な飼育禁止と刑事罰

かつてのブームから一転し、現在アライグマは日本国内で最も厳しく管理・排除されるべき「特定外来生物」に指定されています。これは2005年に施行された「特定外来生物法」に基づくもので、日本の生態系や農林水産業、人命に重大な被害を及ぼす恐れがある生物をリストアップし、その取り扱いを厳格に制限するものです。アライグマ なつかない なぜという興味から「一度飼ってみたい」と思うことはあっても、それを実行に移すことは現在、重大な犯罪行為となります。

この法律により、アライグマの飼育、栽培、保管、運搬、譲渡、輸入、そして野外への放出は原則として全面的に禁止されています。たとえ「弱っている個体を保護した」という善意であっても、無許可で持ち帰れば法に抵触します。違反した場合の罰則は極めて重く、個人のエゴが許される余地はありません。

個人の場合、最大で3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金が科せられます。法人の場合は、最大で1億円の罰金が科せられる極めて重い刑事罰の対象です。

さらに、捕獲したアライグマを「かわいそうだから別の山に逃がす」という行為も、生きたままの運搬や放出にあたり、厳罰の対象となります。一度「特定外来生物」に指定された以上、彼らは日本から排除されるべき存在であり、共生は法的に否定されているのです。この厳格な法規制の背景には、それほどまでに甚大な被害が現実として起きているという国家レベルの危機感があることを理解してください。正確な情報は環境省の公式サイト等で常にアップデートされていますので、そちらも併せてご確認ください。

鳥獣保護管理法に基づく適切な駆除の手続き

アライグマが自宅の庭を荒らしたり、屋根裏に侵入して騒音を出したりしている場合、一刻も早く捕まえたいと思うのは当然の心理です。しかし、ここでも日本の法律が大きく関わってきます。アライグマは外来種ではありますが、同時に「鳥獣保護管理法」という法律の保護対象にも含まれています。つまり、たとえ自分の所有地であっても、許可なく勝手に罠を仕掛けたり、殺傷したりすることは法律で固く禁じられているのです。

駆除を行うためには、まず各自治体に「有害鳥獣捕獲」の申請を行い、許可を得る必要があります。さらに、狩猟免許を持たない一般の人が罠を仕掛けるには、自治体が実施する講習会を受けたり、特別な貸し出しルールに従ったりしなければなりません。また、捕獲後の「殺処分」についても、動物愛護の観点から「できる限り苦痛を与えない方法」で行うよう定められており、精神的にも技術的にも一般の方には非常にハードルが高い作業となります。

さらに厄介なのは、前述の「外来生物法」により、生きたまま運ぶことが禁止されている点です。つまり「捕まえたアライグマを車に乗せて遠くの山へ捨てに行く」という解決策は、二重の法律違反になります。法的な手続きや衛生的な処理、そして確実な防除を含め、最終的な判断は専門家にご相談ください。不適切な駆除は、かえってアライグマを警戒させ、事態を悪化させるだけでなく、あなた自身が法的なトラブルに巻き込まれるリスクを孕んでいます。専門業者はこれらの法律を熟知し、適切な手順で処理を行うため、最も安全かつ確実な選択肢となります。

年間四億円を超える農業被害と在来生態系の破壊

アライグマが「害獣」と呼ばれる最も大きな要因の一つが、甚大な農業被害です。農林水産省の調査によれば、日本全国におけるアライグマによる農作物被害額は、毎年約4億円から5億円という高水準で推移しています。彼らは極めてグルメで、スイカ、トウモロコシ、メロン、イチゴといった糖度の高い果物や野菜を好んで狙います。

特筆すべきは、その器用な前肢を使ってトウモロコシの皮をきれいに剥いたり、スイカに小さな穴を開けて中身だけを掻き出したりといった、知能の高さを感じさせる食害痕です。せっかく丹精込めて育てた作物を一晩で壊滅させるその被害は、農家の方々の営農意欲を根底から奪っています。

さらに深刻なのが、目に見えにくい「生態系へのダメージ」です。アライグマは水辺の生物を好んで捕食しますが、これが日本の希少な在来種を絶滅の危機に追い込んでいます。例えば、動きの遅いサンショウウオやニホンザリガニはアライグマにとって絶好の獲物です。また、木登りが得意なため、樹上の巣にいる野鳥の卵や雛を襲い、フクロウやムササビのねぐら(樹洞)を力ずくで奪い取ります。アライグマの侵入によって、その地域の生物多様性が一気に失われるケースも少なくありません。

(出典:農林水産省『全国の野生鳥獣による農作物の被害状況』)

彼らは単なる「泥棒」ではなく、日本の自然環境を根底から作り変えてしまう「侵略的生物」なのです。一度定着したアライグマを生態系から完全に排除することは、現代の技術をもってしても至難の業です。私たちが守るべきは、目の前の「可愛い1頭」ではなく、アライグマによって消し去られようとしている、日本古来の繊細で豊かな自然であることを、今一度再認識する必要があります。

家屋への侵入とため糞がもたらす住環境の危機

アライグマの被害は農村部だけでなく、今や東京都心や政令指定都市といった大都会の住宅街でも日常的に発生しています。彼らは非常に適応力が高く、断熱材が詰まった暖かく安全な「民家の屋根裏」を、最高の繁殖・越冬場所として利用します。夜中に天井裏から「ドタドタ」という、ネズミとは明らかに異なる重い足音が聞こえてきたら、それは体重4kg〜10kgもあるアライグマが住み着いているサインかもしれません。

最も深刻な実害は、彼らの「ため糞(溜めフン)」という習性です。アライグマは、屋根裏の特定の一箇所を決めて、そこで継続的に排泄を行います。放置すれば、そこに数十kgにも及ぶ糞尿の山が築かれます。尿は天井板を腐食させ、強烈なアンモニア臭が居住スペースまで漂い、最終的には重みに耐えかねた天井板が糞尿とともに崩落するという、最悪の事態を招きます。さらに、その糞尿にはダニやノミが大量発生し、アレルギーや皮膚疾患の原因となるだけでなく、建物の資産価値を大きく損なわせます。

被害項目具体的なリスクと症状
建物構造の破壊天井の腐食、断熱材の剥ぎ取り、配線の噛み切り(火災リスク)。
健康被害騒音による睡眠障害、悪臭によるストレス、ダニ・ノミの発生。
経済的損失天井の張り替え、消毒、清掃費用(数十万〜数百万円)。

「たかが動物が住んでいるだけ」と侮ることは禁物です。アライグマは一度住み着くと強い執着を見せ、追い出そうとしてもすぐに戻ってきます。早期に対策を講じなければ、修理費用は雪だるま式に膨れ上がります。異変を感じたら、すぐに専門家に屋根裏の調査を依頼することを強くお勧めします。

致死的なアライグマ回虫症と感染症の巨大な脅威

アライグマ なつかない なぜという疑問を解消する上で、絶対に避けて通れないのが「感染症」の話です。アライグマは「歩く病原体の塊」と言っても過言ではなく、彼らと接触すること、あるいは彼らが住み着いた環境に身を置くことは、命に関わる重大なリスクを伴います。特に恐ろしいのが、アライグマの小腸に寄生する「アライグマ回虫(Baylisascaris procyonis)」です。

アライグマの糞には、天文学的な数の回虫卵が含まれています。これが人間の口に入ると、体内で孵化した幼虫が血流に乗って全身を移動し、特に脳や目などの中枢神経に侵入します。これを「幼虫移行症」と呼びます。アライグマ回虫の幼虫は、人間の体内で2mm近くまで巨大化し、脳組織を物理的に破壊しながら暴れ回ります。発症すると、致死的な髄膜脳炎を引き起こし、生存できたとしても重い神経障害や失明といった後遺症が残るケースがほとんどです。現代の医学でも、脳に入り込んだ幼虫を駆除し、破壊された組織を再生させることは極めて困難です。

この他にも、発症すれば致死率ほぼ100%の狂犬病(北米ではアライグマが主要な媒介者です)、重い腎不全を招くレプトスピラ症、激しい下痢を引き起こすサルモネラ菌、さらには重症熱性血小板減少症候群(SFTS)を媒介するマダニなど、枚挙に暇がありません。

彼らの愛らしい見た目の裏側には、こうした目に見えない恐怖が常に潜んでいます。正確なリスク情報は公的機関の公式サイト等も併せてご確認ください。安易に餌付けをしたり、野生個体に近づいたりすることは、自分や家族の命を危険にさらす無謀な行為であることを、肝に銘じておかなければなりません。

独自の進化を遂げるアライグマがなつかないのはなぜ?

最後に、少し意外な最新の研究結果をご紹介しましょう。北米の都市部に生息するアライグマは、過酷な自然界ではなく「人間のゴミ」を主食とする環境に適応するため、独自の進化を遂げつつあるという報告があります。具体的には、鼻先(吻)が短くなり、人間への寛容性が高い個体が都市部で繁栄しているというのです。これは、かつてオオカミがイヌへと進化していった「自己家畜化」の初期段階に似ていると指摘する学者もいます。

しかし、勘違いしないでください。この「進化」は、あくまで数百年、数千年という単位で進むものであり、現代を生きる私たちにとってアライグマが「なつくペット」になることを意味するわけではありません。むしろ、この適応力こそがアライグマの恐ろしさです。

彼らは人間をパートナーとして選んだのではなく、人間が出すゴミや住宅という「資源」を効率よく利用するために、自身の性質を最適化させているに過ぎません。アライグマ なつかない なぜという問いの最終的な結論は、彼らが「人間を必要とせず、むしろ人間を出し抜くことで繁栄する、高度な知性を持った独立した生存者であるから」なのです。

アライグマとの共生は、同じ屋根の下で暮らすことではありません。彼らと人間の間には、決して越えてはならない境界線が存在します。彼らを野生動物として尊重し、適切な距離を保つことこそが、結果として人間もアライグマも不幸にならない唯一の道です。

もし、その境界線をアライグマ側が越えてきた(家屋に侵入した、農作物を荒らした)のであれば、それはもはや個人の手に負える問題ではありません。安全のために、決して自力で解決しようとせず、速やかに経験豊富な駆除業者へ相談することをお勧めします。専門家による適切な防除こそが、あなたと、そして日本の自然を守るための正解なのです。

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この記事を書いた人

名前(愛称): クジョー博士
本名(設定): 九条 まどか(くじょう まどか)

年齢: 永遠の39歳(※本人談)
職業: 害虫・害獣・害鳥対策の専門家/駆除研究所所長
肩書き:「退治の伝道師」

出身地:日本のどこかの山あい(虫と共に育つ)

経歴:昆虫学・動物生態学を学び、野外調査に20年以上従事
世界中の害虫・害獣の被害と対策法を研究
現在は「虫退治、はじめました。」の管理人として情報発信中

性格:知識豊富で冷静沈着
でもちょっと天然ボケな一面もあり、読者のコメントにめっちゃ喜ぶ
虫にも情がわくタイプだけど、必要な時はビシッと退治

口ぐせ:「彼らにも彼らの事情があるけど、こっちの生活も大事よね」
「退治は愛、でも徹底」

趣味:虫めがね集め

風呂上がりの虫チェック(職業病)

愛用グッズ:特注のマルチ退治ベルト(スプレー、忌避剤、ペンライト内蔵)

ペットのヤモリ「ヤモ太」

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